多発性骨髄腫に対する標準治療下で行うダラツムマブの治験
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治験名
多発性骨髄腫標準治療レジメン併用下のダラツムマブ皮下投与を評価する多施設共同第2相試験
治験概要:
多発性骨髄腫に対する治験です。
多発性骨髄腫の標準的に行われるレジメンに、ダラツムマブを投与したときの有効性を全奏効率または、Very good partial response(非常にいい部分寛解)以上の割合を指標として評価する第2相臨床試験です。
登録予定数は7人。
試験デザインは、非ランダム化。
フェーズは、フェーズ2(第2相臨床試験)。
被験薬:ダラツムマブ
対照薬:ボルテゾミブ レナリドミド デキサメタゾン メルファラン プレドニゾン
で、対照薬の組み合わせと用法・用量を変更した標準治療レジメンの治療にダラツムマブを併用したときの有効性を評価します。
疾患解説:多発性骨髄腫
国立がん研究センターのがん統計によると、2014年に多発性骨髄腫と診断された人は、男性3488人女性3075人、合計6563人です。高齢者に多い病気なので、高齢者が増えている日本では増加しています。かつては人口10万人当たり3人ほどでしたが、現在は10万人あたり5人以上と増加傾向にあります。 多発性骨髄腫は抗体を作る形質細胞ががん化する病気で、高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変などの症状が起きる病気です。赤血球、血小板、白血球など血液を構成する細胞のうちの白血球の1つであるB細胞から分化して作られる形質細胞ががん化することで起こります。 形質細胞ががん化してできた骨髄腫細胞は、骨髄内で異常に増殖するため、正常な造血機能が抑えられてしまいます。そのため、赤血球が不足すると貧血が起き、白血球が不足すると感染症、血小板の不足は出血するなどのさまざまな症状が起きます 新規薬剤の登場により、多発性骨髄腫は長期間にわたって病気をコントロールすることが可能になっています。

治験薬:ダラツムマブ
ダラツムマブは、骨髄腫細胞のほとんどに発現しているCD38という抗原を標的としたモノクローナル抗体です。
ダラツムマブが、CD38抗原と結合することで抗原抗体反応という反応が起こります。抗原抗体反応は、元もとヒトがもっている免疫機能で、抗原抗体反応が起こると免疫機能が活性化し、抗原という目印があるがん細胞を免疫細胞が攻撃することで抗腫瘍効果を発揮します。
治験薬:ボルテゾミブ
ボルテゾミブは、プロテアソームという酵素を阻害する第1世代のプロテアソーム阻害薬です。
がん細胞が増殖するために分裂するとき、さまざまなたんぱく質が関与しています。細胞分裂が終わると、そうしたたんぱく質が不要になるため、プロテアソームという酵素が分解しています。
ボルテゾミブは、このプロテアソームという酵素を阻害することで、がん細胞が分裂したときに発生する不要なたんぱく質を分解させず、がん細胞に蓄積させていきます。不要なたんぱく質が蓄積したがん細胞は、分裂することができなくなり、やがて細胞死が誘導されます。
プロテアソーム阻害薬は、第1世代のボルテゾミブ、第2世代のカルフィルゾミブ、第3世代のイキサゾミブの3剤があります。このうち、ボルテゾミブとカルフィルゾミブは注射剤ですが、イキサゾミブは経口薬です。
治験薬:レナリドミド
レナリドミドは、セレブロンというたんぱく質と結合して効果を示す免疫調整薬です。免疫調整薬は、サイトカイン産生調整作用や造血器腫瘍細胞の増殖抑制作用、血管新生阻害作用をもつ薬剤です。
レナリドミドとセレブロンが結合すると細胞内の遺伝子発現を変化させ、がん細胞の増殖を抑制します。また、免疫細胞に働きかけることで免疫を賦活させる作用もあります。
現在、多発性骨髄腫に対する免疫調整薬は、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミドの3剤あります。
治験薬:デキサメタゾン
デキサメタゾンは、ステロイド系抗炎症薬の1つです。原因に関係なく炎症反応や免疫反応を抑制するお薬です。
治験薬:メルファラン
メルファランは、アルキル化剤と呼ばれる細胞障害性の薬剤です。DNAに協力に結合することで細胞分裂を止め、細胞の増殖を抑えます。
治験薬:プレドニゾン
プレドニゾンは、合成副腎皮質ホルモン剤で、免疫抑制作用のある薬剤です。炎症性疾患やがん治療にも使われています。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 多発性骨髄腫標準治療レジメン併用下のダラツムマブ皮下投与を評価する多施設共同第2相試験 |
試験の概要 | MM被験者における標準的MMレジメン併用下のダラツムマブ皮下投与の臨床的ベネフィットを、全奏効率(ORR)又はVery good partial response(VGPR)以上の割合を指標として評価すること |
疾患名 | 多発性骨髄腫 |
試験薬剤名 | ダラツムマブ |
用法・用量 | ダラツムマブ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-VRd) ダラツムマブ1800 mg をサイクル1~4に皮下投与。疾患進行が認められるか、許容できない毒性が認められるか、又は10.2 項(治験治療の中止/治験の中止)にあげたその他の理由に該当する場合は、4 サイクルが完了する前に治験治療を中止する。 ダラツムマブ+ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾン(D-VMP) ダラツムマブ1800 mg をサイクル1 では週1 回、サイクル2~9 では3 週間ごと、それ以降は4 週間ごとに皮下投与。 ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-Rd) ダラツムマブ1800 mg をサイクル1及び2 では週1 回、サイクル3~6 では2 週間ごと、それ以降は4 週間ごとに皮下投与 |
対照薬剤名 | ボルテゾミブ レナリドミド デキサメタゾン メルファラン プレドニゾン |
用法・用量 | ダラツムマブ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-VRd) ボルテゾミブはCycle1から4まで1.3 mg/m2皮下投与する。 ダラツムマブ+ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾン+デキサメタゾン(D-VMP) ボルテゾミブはCycle1から9は1.3 mg/m2皮下投与する |
対照薬剤名 | ボルテゾミブ レナリドミド デキサメタゾン メルファラン プレドニゾン |
用法・用量 | ダラツムマブ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-VRd)レナリドミドはCycle1から4までDay1~14に25mg経口投与する。 ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-Rd)レナリドミドはCycle1から、疾患進行が認められるか、許容できない毒性が認められるか、治験終了までDay 1~21 に25mg経口投与する |
対照薬剤名 | ボルテゾミブ レナリドミド デキサメタゾン メルファラン プレドニゾン |
用法・用量 | ダラツムマブ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-VRd) デキサメタゾンはCycle1から4まで20mg経口又は静脈内投与する。ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(D-Rd)デキサメタゾンはCycle1から疾患進行が認められるか、許容できない毒性が認められるか、治験終了まで40mg経口又は静脈内投与する |
対照薬剤名 | ボルテゾミブ レナリドミド デキサメタゾン メルファラン プレドニゾン |
用法・用量 | ダラツムマブ+ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾン+デキサメタゾン(D-VMP)メルファランはCycle1から9までDay1~4に9mg/m2経口投与する |
対照薬剤名 | ボルテゾミブ レナリドミド デキサメタゾン メルファラン プレドニゾン |
用法・用量 | ダラツムマブ+ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾン+デキサメタゾン(D-VMP)プレドニゾンはCycle1から9までDay2、3、4に60mg/m2経口投与する |
試験のフェーズ | フェーズ2(第2相臨床試験) |
試験のデザイン | 非ランダム化 |
目標症例数 | 7 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | D-VMP及びD-Rdコホート:全奏効率(ORR) 最後の被験者登録から少なくとも6ヵ月後(約1.5年) |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | ダラツムマブの最高血清中濃度(Cmax) D-VRd:Day 4/Cycles 1、4、post treatment 30 Days and at week 8 D-VMP:Day 4/Cycles 1、2、 post treatment 30 Days and at week 8 D-VRd:Day 4/Cycles 1、2、 post treatment 30 Days and at week 8 |
副次的な評価方法 | |
副次的な評価項目 | ダラツムマブの最低血清中濃度(Cmin) D-VRd:Day1(投与前)/Cycles 1、3、4 D-VMP:Day1(投与前)/Cycles 1、2、3、6、9 D-VRd:Day1(投与前)/Cycles 1、3、6、9、12ダラツムマブの最低血清中濃度(Cmin) D-VRd:Day1(投与前)/Cycles 1、3、4 D-VMP:Day1(投与前)/Cycles 1、2、3、6、9 D-VRd:Day1(投与前)/Cycles 1、3、6、9、12 |
副次的な評価方法 | |
副次的な評価項目 | IRRの発現率 最後の被験者登録から少なくとも6ヵ月後(約1.5年) |
副次的な評価方法 | |
副次的な評価項目 | VGPR以上の奏効率(D-VMPコホート及びDRdコホート) 最後の被験者登録から少なくとも6ヵ月後(約1.5年) |
副次的な評価方法 | |
副次的な評価項目 | CR以上の奏効率 最後の被験者登録から少なくとも6ヵ月後(約1.5年)及び18ヵ月後(約2.5年) |
副次的な評価方法 | |
副次的な評価項目 | 奏効期間(DOR) 最後の被験者登録から少なくとも6ヵ月後(約1.5年)及び18ヵ月後(約2.5年) |
副次的な評価方法 | |
副次的な評価項目 | ダラツムマブ又はrHuPH20に対する抗薬物抗体の発現率 最終投与から最大8週間後(約1年) |
副次的な評価方法 | |
副次的な評価項目 | D-VMPコホート及びD-Rdコホートにおける微小残存病変(MRD)陰性率 最後の被験者登録から少なくとも6ヵ月後(約1.5年)及び18ヵ月後(約2.5年) |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2018年4月12日~2020年8月31日 |