マントル細胞リンパ腫に対するアカラブルチニブ併用療法の治験

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治験名

未治療のマントル細胞リンパ腫患者を対象としたベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法単独とBR療法アカラブルチニブとの併用を比較検討する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、第3相試験

治験概要:

非ホジキンリンパ腫の1種マントル細胞リンパ腫の治験。未治療の患者さんが対象です。 アカラブルチニブ+ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法とプラセボ+ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法を比較して無増悪生存期間で評価する第3相試験です。 登録予定数は546人。 試験デザインは、無作為化、並行群間比較試験、トリプル。 フェーズは、フェーズ3(第3相臨床試験)。 比較する対象は 治験群:アカラブルチニブ+ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法 対照群:プラセボ+ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法 で主要評価項目は、無増悪生存期間で評価します。

疾患解説:マントル細胞リンパ腫

悪性リンパ腫は、ヒトの免疫機能を担う白血球のうちのリンパ球ががん化する血液のがんです(図1)。国立がん研究センターのがん統計によると2014年に悪性リンパ腫に罹患した人は、約28500人です。1985年には10万人あたり5.5人だったのが、2019年には18.7人、2013年には20.2人となり年々増え続けています。女性より男性に多く、発症のピークは70歳代です。 悪性リンパ腫は、大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに大別されますが、細かくは80種類くらいの病型に分類されます(図2)。日本では非ホジキンリンパ腫が約9割を占めています。 非ホジキンリンパ腫では、無治療の場合の予後を予測する臨床分類として、悪性度によって、3つに分類されています。「低悪性度(インドレントリンパ腫)」はがん細胞の増殖速度が遅く年単位で病気が進行するもの、「中悪性度(アグレッシブリンパ腫)」は月単位で進行するもの、「高悪性度(高度アグレッシブリンパ腫)」は増殖速度が速く週単位で進行するものです。どの悪性度に分類されるかは、病型ごとにほぼ定められています。 マントル細胞リンパ腫は、悪性リンパ腫の中の非ホジキンリンパ腫の1種です。日本での発生頻度は、全悪性リンパ腫の3%程度で、発症年齢の中央値は60代半ばで男性に多いがんです。 リンパ節内のマントルという部分にあるB細胞ががん化した悪性腫瘍で、CD5とサイクリンD1という分子の細胞表面への発現や、染色体部異常よるサイクリンD1遺伝子が変化していることが特徴です。
図1 造血幹細胞と血液の分化

図2 悪性リンパ腫の主な病型と臨床分類

病型 臨床分類
悪性リンパ腫 非ホジキンリンパ腫 成熟B細胞腫瘍 慢性リンパ性白血病/ 小リンパ球性リンパ腫
リンパ形質細胞性リンパ腫
脾辺緑帯リンパ腫
粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)
節性辺縁帯リンパ腫
濾胞性リンパ腫
マントル細胞リンパ腫 低から中
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
バーキットリンパ腫/白血病
成熟T細胞/NK細胞腫瘍 T細胞大型顆粒リンパ球性白血病
成人T細胞白血病・リンパ腫(くすぶり型、慢性型)
菌状息肉症/セザリー症候群
原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫 低から中
末梢性T細胞リンパ腫,非特定型
腸症関連T細胞リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫
肝脾T細胞リンパ腫
成人T細胞白血病・リンパ腫(急性型、リンパ腫型) 中から高
節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
急速進行性NK細胞白血病
ホジキンリンパ腫 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫
古典的ホジキンリンパ腫 結節性硬化型
混合細胞型
リンパ球豊富型
リンパ球減少型

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

治験薬:アカラブルチニブ

アカラブルチニブは、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)を選択的に阻害する分子標的薬です。 BTKは、細胞の表面から細胞の核内遺伝子へ増殖シグナルを伝達することで、がん細胞の増殖と生存にかかわる酵素です。アカラブルチニブは、このBTKと結合することで阻害し、がん細胞の増殖シグナルを遮断して破壊します。

治験薬:ベンダムスチン

ベンダムスチンは、アルキル化薬と代謝拮抗薬の構造を併せ持つDNAに作用する抗がん薬です。 アルキル化薬は、がん細胞のDNAに結合しDNA複製を阻害することで、DNAを破壊します。代謝拮抗薬は、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害して、がん細胞の増殖を抑制します。 ベンダムスチンは、細胞内でDNA修復や細胞増殖停止、アポトーシスなどの細胞増殖サイクルの抑制を制御する機能を持つp53遺伝子の依存性にかかわらず、アポトーシスと細胞増殖サイクルの抑制を行うことで腫瘍細胞を破壊します。

治験薬:リツキシマブ

リツキシマブは、CD20抗原と選択的に結合する分子標的薬です。 CD20抗原は、B細胞性リンパ腫の細胞表面に多く発現しており、リツキシマブはこのCD20抗原と結合することでがん細胞を破壊します。 がん細胞の破壊は、マクロファージやNK細胞といった免疫細胞を呼び寄せ結合しているがん細胞を攻撃する抗体依存性細胞障害によるものと、マクロファージによる貪食細胞による捕食促進作用や溶解作用を行う補体を介して攻撃する補体依存性細胞障害活性によるものです

主な治験参加条件

対象となる人
  • マントル細胞リンパ腫と確定診断され、染色体転座t(11;14)(q13;q32)および/またはサイクリンD1過剰発現、並びに関連するその他の重要なマーカーが確認されている
  • これまでにマントル細胞リンパ腫に対する全身抗がん療法を受けていない患者
  • 全身状態(performance statu:PS)が2以下
  • 治験中及およびアカラブルチニブ最終投与後90日間、ベンダムスチン最終投与後6か月間、またはリツキシマブ最終投与後12か月間のうち最も長い期間にわたって非常に有効な避妊法を使用することへの同意
  • 年齢:65歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 重大な循環器疾患がある患者。例えば、コントロール不能または未治療で症候性の不整脈、うっ血性心不全、治験薬の初回投与前 6か月以内の心筋梗塞、ニューヨーク心臓協会機能分類3または4の心疾患のある患者、またはスクリーニング時点のQTcが480msec超の患者(例外:スクリーニング中に、コントロールされた無症候性の心房細動がみられた患者は、本治験に組み入れ可能)
  • 吸収不良症候群、消化管機能に重大な影響をおよぼす疾患、胃切除、吸収に影響をおよぼし得る広範にわたる小腸切除、症候性の炎症性腸疾患、一部または完全な腸閉塞、あるいは胃バイパス術などの胃制限手術または肥満手術の既往歴・現病歴がある患者
  • コントロール不良の全身性の真菌、細菌、ウイルス、その他の全身感染症がある、または治験薬初回投与前2週間以内に静注による感染症に対する治療を受けた患者
  • 別の治療薬の治験に参加中の患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 未治療のマントル細胞リンパ腫患者を対象としたベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法単独とBR療法とacalabrutinib(ACP-196)との併用を比較検討する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共 同、第III相試験
試験の概要 未治療のマントル細胞リンパ腫患者においてacalabrutinibとベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法を併用したときの有効性をプラセボ+BR療法併用時と比較検討する
疾患名 マントル細胞リンパ腫
試験薬剤名 Acalabrutinibとベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法併用
用法・用量 Acalabrutinibを1日2回経口投与、ベンダムスチンは1日目及び2日目、リツキシマブは1日目に投与する。28日を1サイクルとして繰り返す
試験薬剤名 プラセボとベンダムスチン+リツキシマブ(BR)療法併用
用法・用量 プラセボを1日2回経口投与、ベンダムスチンは1日目及び2日目、リツキシマブは1日目に投与する。28日を1サイクルとして繰り返す
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン 無作為化、並行群間比較試験、トリプル
目標症例数
適格基準
  • 病理学的にMCLと確定診断され、染色体転座t(11;14)(q13;q32)及び/又はサイクリンD1過剰発現、並びに関連するその他の重要なマーカー(例:CD5、CD19、CD20、PAX5)が確認されている
  • 治療を必要とするMCLであり、これまでにMCLに対する全身抗がん療法を受けていない患者
  • ECOGのperformance statusが2以下の患者
  • 治験中及びacalabrutinib最終投与後90日間、ベンダムスチン最終投与後6カ月間、又はリツキシマブ最終投与後12カ月間のうち最も長い期間にわたって非常に有効な避妊法を使用することに同意しなければならない
  • 年齢:65歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 重大な循環器疾患がある患者。例えば、コントロール不能又は未治療で症候性の不整脈、うっ血性心不全、治験薬の初回投与前6カ月以内の心筋梗塞、ニューヨーク心臓協会機能分類3又は4の心疾患のある患者、又はスクリーニング時点のQTcが480msec超(Fridericaの式で算出:QT/RR0.33)の患者。例外:スクリーニング中に、コントロールされた無症候性の心房細動がみられた患者は、本治験に組み入れることができる
  • 吸収不良症候群、消化管機能に重大な影響を及ぼす疾患、胃切除、吸収に影響を及ぼし得る広範にわたる小腸切除、症候性の炎症性腸疾患、一部又は完全な腸閉塞、あるいは胃バイパス術等の胃制限手術又は肥満手術の既往歴・現病歴がある患者
  • コントロール不良の全身性の真菌、細菌、ウイルス、その他の全身感染症(抗菌薬をはじめとする適切な治療をしても感染に関連する徴候・症状が継続していて改善がみられない場合と定義)がある、又は治験薬初回投与前2週間以内に静注による感染症に対する治療を受けた患者
  • 別の治療薬の治験に参加中の患者
主要な評価項目
主要な評価方法
副次的な評価項目
副次的な評価方法
予定試験期間 参加者募集中

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより