びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するポラツズマブ ベドチンの治験

治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム外部リンク」ページでご確認ください。

上記ページにアクセスし、条件欄から「研究の名称」を選択、このページの「試験概要詳細」の「試験の名称」をコピーして、キーワード欄に貼り付け、検索してください。

治験名

CHRONOS-4

未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象としたポラツズマブ ベドチンとリツキシマブ+CHP(R-CHP)併用療法の有効性および安全性をリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)併用療法と比較する第3相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験

治験概要:

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する治験。未治療のCD20陽性の患者さんが対象です。 標準治療であるR-CHOPとポラツズマブ ベドチン+R-CHOPを比較して、有効性と安全性を評価する臨床試験です。 登録予定数は、875人。 フェーズは、第3相臨床試験。 試験デザインは、ランダム化、多施設共同、二重盲検試験。 比較する対象は 試験群:ポラツズマブ ベドチン+R-CHOP 対照群:R-CHOP で主要評価項目は無増悪生存期間、副次的評価項目は完全奏功、無イベント生存期間、2年無増悪生存割合、全生存期間などで評価します。

疾患解説:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

悪性リンパ腫は、ヒトの免疫機能を担う白血球のうちのリンパ球ががん化する血液のがんです(図1)。国立がん研究センターのがん統計によると2014年に悪性リンパ腫に罹患した人は、約28500人です。1985年には10万人あたり5.5人だったのが、2019年には18.7人、2013年には20.2人となり年々増え続けています。女性より男性に多く、発症のピークは70歳代です。 悪性リンパ腫は、大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに大別されますが、細かくは80種類くらいの病型に分類されます(図2)。日本では非ホジキンリンパ腫が約9割を占めています。 非ホジキンリンパ腫では、無治療の場合の予後を予測する臨床分類として、悪性度によって、3つに分類されています。「低悪性度(インドレントリンパ腫)」はがん細胞の増殖速度が遅く年単位で病気が進行するもの、「中悪性度(アグレッシブリンパ腫)」は月単位で進行するもの、「高悪性度(高度アグレッシブリンパ腫)」は増殖速度が速く週単位で進行するものです。どの悪性度に分類されるかは、病型ごとにほぼ定められています。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、悪性リンパ腫の非ホジキンリンパ腫の1つで、悪性度は中悪性度に分類されます。日本人の非ホジキンリンパ腫の中で3割強を占める最も発生頻度の高い病型です。
図1 造血幹細胞と血液の分化

図2 悪性リンパ腫の主な病型と臨床分類

病型 臨床分類
悪性リンパ腫 非ホジキンリンパ腫 成熟B細胞腫瘍 慢性リンパ性白血病/ 小リンパ球性リンパ腫
リンパ形質細胞性リンパ腫
脾辺緑帯リンパ腫
粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)
節性辺縁帯リンパ腫
濾胞性リンパ腫
マントル細胞リンパ腫 低から中
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
バーキットリンパ腫/白血病
成熟T細胞/NK細胞腫瘍 T細胞大型顆粒リンパ球性白血病
成人T細胞白血病・リンパ腫(くすぶり型、慢性型)
菌状息肉症/セザリー症候群
原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫 低から中
末梢性T細胞リンパ腫,非特定型
腸症関連T細胞リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫
肝脾T細胞リンパ腫
成人T細胞白血病・リンパ腫(急性型、リンパ腫型) 中から高
節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
急速進行性NK細胞白血病
ホジキンリンパ腫 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫
古典的ホジキンリンパ腫 結節性硬化型
混合細胞型
リンパ球豊富型
リンパ球減少型

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

治験薬:ポラツズマブ ベドチン

ポラツズマブ ベドチンは、B細胞の表面に発現しているCD79bと選択的の結合する抗体薬物複合体です。 CD79bと結合することで、内在化とたんぱく質を分解切断し、モノメチルアウリスタチン(MMAE)がチューブリンに結合して阻害することで、細胞死を誘導します。

対照薬:ビンクリスチン硫酸塩

ビンクリスチン硫酸塩は、細胞分裂に重要な役割を果たす微小管に作用する微小管阻害薬です。 紡錘体を形成している微小管のチューブリンに結合することで、細胞周期を分裂中期で停止させると考えられています。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 未治療のCD20陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者
  • IPI スコアが2~5の患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0、1、または2である患者
  • 直交する2方向で計測可能な病変(CT またはMRI 画像上の最大径>1.5 cm の病変)を1つ以上ある患者
  • 年齢:18歳以上80歳以下
  • 性別:両方
対象とならない人
  • ヒト化モノクローナル抗体又はマウスモノクローナル抗体に対する高度のアレルギー反応またはアナフィラキシーの既往歴、マウス由来製剤に対する過敏症がある患者
  • CHOP療法の各薬剤のいずれかに禁忌の患者
  • グレード1以上の末梢性ニューロパチーを認める患者
  • 低悪性度リンパ腫の既往歴のある患者
  • グレード3Bの濾胞性リンパ腫の患者
  • 縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫の患者
  • バーキットリンパ腫の患者
  • 中枢神経リンパ腫、発性滲出性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 未治療のびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫患者を対象としたポラツズマブ ベドチンとリツキシマブ+CHP(R-CHP)併用療法の有効性及び安全性をリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)併用療法と比較する第III 相多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
試験の概要 未治療のCD20 陽性びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫患者を対象として、標準療法であるR-CHOP と比較したポラツズマブ ベドチン+R-CHP の有効性及び安全性を評価する
疾患名 びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫
試験薬剤名 ポラツズマブ ベドチン
用法・用量 1~6サイクルの各Day1にポラツズマブ ベドチン1.8mg/kgを静脈投与する
対照薬剤名 ビンクリスチン硫酸塩
用法・用量 1~6サイクルの各Day1にビンクリスチン1.4mg/m^2を静脈投与する
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン ランダム化、多施設共同、二重盲検試験
目標症例数 875
適格基準
  • 未治療のCD20陽性のDLBCL患者
  • IPI スコアが2~5の患者
  • ECOG Performance Status が0、1、又は2である患者
  • 直交する2方向で計測可能な病変(CT 又はMRI 画像上の最大径>1.5 cm の病変)を1つ以上有している患者
  • 年齢:18歳以上80歳以下
  • 性別:両方
除外基準
  • ヒト化モノクローナル抗体又はマウスモノクローナル抗体に対する高度のアレルギー反応又はアナフィラキシーの既往歴、マウス由来製剤に対する過敏症を有する患者
  • CHOP 療法の各薬剤のいずれかに禁忌の患者
  • Grade 1以上の末梢性ニューロパチーを認める患者
  • 低悪性度リンパ腫の既往歴のある患者
  • Grade 3Bの濾胞性リンパ腫の患者
  • 縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫の患者
  • バーキットリンパ腫の患者
  • CNS リンパ腫、発性滲出性DLBCL、及び原発性皮膚DLBCを有する患者
主要な評価項目 無増悪生存期間
主要な評価方法 Lugano 治療効果判定基準を用いた治験責任/分担医師評価
副次的な評価項目 完全奏効、無イベント生存期間、2年無増悪生存割合、全生存期間など
副次的な評価方法 独立中央審査機関での評価、治験責任/分担医師の判定など
予定試験期間 2017年11月1日~2023年5月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより