成人T細胞白血病リンパ腫に対するベキサロテンの治験

治験名

成人T細胞白血病リンパ腫患者に対するベキサロテンの有効性、安全性および薬物動態を評価する、多施設共同、2用量並行群デザイン、無作為化、非盲検、第2相試験

治験概要:

血清抗HTLV-1抗体陽性の成人T細胞白血病リンパ腫に対する治験。急性転化の既往がないくすぶり型または予後不良因子がない慢性型、または急性型、リンパ腫型または予後不良因子がある慢性型、もしくは急性転化の既往があるが1レジメン以上の化学療法で寛解になった患者さんが対象です。
ベキサロテンを1日1回経口投与して安全性と薬物動態で評価する臨床試験です。
登録予定数は、38人。
フェーズは、2相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同、オープンラベル。
試験群:ベキサロテン1日1回経口投与
奏効率、奏功期間、奏効前期間、病勢コントロール率、無増悪生存期間、安全性などで評価します。

疾患解説:成人T細胞白血病リンパ腫

成人T細胞白血病リンパ腫は、悪性リンパ腫のうち非ホジキンリンパ腫に分類されるリンパ腫です。
HTLV-1というウイルスがT細胞に感染すると、感染したT細胞からがん化した細胞が無限に増殖することで発症します。
日本では、九州・沖縄地方を主とする西南地方の多く、HTLV-1キャリアは110万人程度といわれています。HTLV-1キャリアから成人T細胞白血病リンパ腫を発症する患者さんは、年間1000人に0.6~0.7人とされています。
主な症状は、リンパ節の腫れです。病変は、脾臓、肝臓、肺、消化管、中枢神経系と全身性で、半数以上で皮膚にも現れます。病型は、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型に分類され、病型で症状は異なります。

図1 造血幹細胞と血液の分化

図2 悪性リンパ腫の主な病型と臨床分類

病型臨床分類
悪性リンパ腫非ホジキンリンパ腫成熟B細胞腫瘍慢性リンパ性白血病/ 小リンパ球性リンパ腫
リンパ形質細胞性リンパ腫
脾辺緑帯リンパ腫
粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)
節性辺縁帯リンパ腫
濾胞性リンパ腫
マントル細胞リンパ腫低から中
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
バーキットリンパ腫/白血病
成熟T細胞/NK細胞腫瘍T細胞大型顆粒リンパ球性白血病
成人T細胞白血病・リンパ腫(くすぶり型、慢性型)
菌状息肉症/セザリー症候群
原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫低から中
末梢性T細胞リンパ腫,非特定型
腸症関連T細胞リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫
肝脾T細胞リンパ腫
成人T細胞白血病・リンパ腫(急性型、リンパ腫型)中から高
節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
急速進行性NK細胞白血病
ホジキンリンパ腫結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫
古典的ホジキンリンパ腫結節性硬化型
混合細胞型
リンパ球豊富型
リンパ球減少型

造血器腫瘍診療ガイドライン2018年版を参考に作成

治験薬:ベキサロテン

ベキサロテンは、レチノイドの一種で第3世代のレチノイドに分類される薬剤です。
レチノイドX受容体(RXRα、RXRβおよびRXRγ)に結合し、転写を活性化することにより、アポトーシス誘導および細胞周期停止作用を示し、腫瘍増殖を抑制します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 血清抗HTLV-1抗体が陽性であることが確認され成人T細胞白血病リンパ腫と診断された患者で、リンパ腫研究グループ分類により以下のいずれかに該当する患者
    -急性転化の既往のない、くすぶり型または予後不良因子*を有さない慢性型(インドレント成人T細胞白血病リンパ腫)
    -急性型、リンパ腫型または予後不良因子*がある慢性型(アグレッシブ成人T細胞白血病リンパ腫)、もしくは急性転化の既往があるインドレント成人T細胞白血病リンパ腫.ただし、1レジメン以上の化学療法により寛解が得られた患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0~2の患者
  • 主たる臓器機能が保持されている患者
    -十分な腎機能を保持している患者
    -十分な肝機能を保持している患者
    -十分な骨髄機能を保持している患者
  • 空腹時血清トリグリセリドが150mg/dL以下の患者、または脂質異常症治療薬により150mg/dL以下にコントロールされている患者.後者の場合は、脂質異常症治療薬による治療を治験薬投与開始前に2週間以上変更せずに継続し、安定していること
  • 妊娠可能な女性被験者では、治験薬投与開始前7日以内に実施した血清妊娠テストが陰性であり、かつ陰性の結果が得られる4週前から治験薬投与開始までの期間、有効な避妊法による避妊を行った患者.妊娠可能な女性被験者とは、閉経後の女性、並びに手術により不妊となった女性を除くすべての女性被験者と定義する
  • 妊娠可能な女性被験者では、治験薬投与中および治験薬投与終了後1か月間、妊娠可能な女性をパートナーに持つ男性被験者では、治験薬投与中および治験薬投与終了後3か月間は有効な避妊法で避妊を行うことに合意できる患者
  • 本治験への参加について文書による同意が得られた患者
  • 予後不良因子とは、以下のいずれかを1つでも満たす場合とする:
    BUN>施設基準値上限、LDH>施設基準値上限、血清アルブミン<施設基準値下限
  • 有効な避妊法とは、以下のいずれかとする:
    コンドーム、経口避妊薬、ペッサリー、子宮内避妊器具、ただし、経口避妊薬による避妊法の場合には、経口避妊薬以外の方法をあわせて使用すること
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 中枢神経病変を伴う成人T細胞白血病リンパ腫の患者
  • 活動性の重複がんがある患者
  • HTLV-1関連脊髄症またはHTLV-1関連ぶどう膜炎の患者
  • skin-directed therapyによる治療が可能であると治験責任医師または治験分担医師が判断した患者
  • 治験薬投与開始時から24週以上の生存が見込めない患者
  • スクリーニング時にmSWAT評価の対象となり得る病変がない患者
  • スクリーニング来院以前の化学療法により皮膚障害を発症しており、本薬の評価に影響を与えると治験責任医師または治験分担医師が判断した患者
  • 治験薬投与開始前12週以内に他の治験薬が投与されていた患者
  • 妊娠している患者、妊娠している可能性がある患者、妊娠を希望している患者、授乳中の患者、または適切な避妊法を受け入れられない患者
  • 治験薬の成分または関連製剤に対して過敏症の既往がある、またはその疑いのある患者
  • 膵炎の既往または膵炎のリスク因子がある患者
  • 重篤な合併症、または重症の感染症のある患者
  • 重篤なアレルギーまたは重篤な薬物過敏症の既往のある患者
  • 長時間の太陽光またはUV光を避けることを望まない、または避けることのできない患者
  • その他、治験責任医師または治験分担医師により治験への参加が適切でないと判断された患者
  • 本治験におけるskin-directed therapyとは、以下を指す.:
    紫外線療法、放射線療法、外用ステロイド療法

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)患者に対するベキサロテンの有効性、安全性及び薬物動態を評価する、多施設共同、2用量並行群デザイン、無作為化、非盲検、第II相試験
試験の概要 ATL患者に対するベキサロテンの有効性、安全性及び薬物動態を評価する多施設共同試験である
疾患名成人T細胞白血病リンパ腫
試験薬剤名 BSC-1(ベキサロテン)
用法・用量1日1回経口投与
対照薬剤名
用法・用量
試験のフェーズフェーズ2(第2相臨床試験)
試験のデザイン多施設共同、オープンラベル
目標症例数38
適格基準
  • 血清抗HTLV-1抗体が陽性であることが確認されATLと診断された患者で、リンパ腫研究グループ(LSG)分類により以下のいずれかに該当する患者
    -急性転化の既往のない、くすぶり型又は予後不良因子*を有さない慢性型(以下、インドレントATL)
    -急性型、リンパ腫型又は予後不良因子*を有する慢性型(以下、アグレッシブATL)、若しくは急性転化の既往を有するインドレントATL.ただし、1レジメン以上の化学療法(分子標的薬等を含む)により寛解が得られた患者
  • 治験参加同意取得日の年齢が20歳以上の患者
  • スクリーニング時の一般状態[Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)によるPerformance Status]が0~2の患者
  • 主たる臓器機能が保持されている患者
    -十分な腎機能(eGFR:60mL/min/1.73m^2以上)を保持している患者
    -十分な肝機能(AST、ALT及び総ビリルビンが基準値上限の2.5倍未満)を保持している患者
    -十分な骨髄機能(ヘモグロビン8g/dL以上、好中球数1,000 /μL以上、血小板数50,000 /μL以上)を保持している患者
  • 空腹時血清トリグリセリドが150mg/dL以下の患者、又は脂質異常症治療薬により150mg/dL以下にコントロールされている患者.後者の場合は、脂質異常症治療薬による治療を治験薬投与開始前に2週間以上変更せずに継続し、安定していること
  • 妊娠可能な女性被験者では、治験薬投与開始前7日以内に実施した血清妊娠テスト(β-hCG)が陰性であり、かつ陰性の結果が得られる4週前から治験薬投与開始までの期間、有効な避妊法#による避妊を行った患者.妊娠可能な女性被験者とは、閉経後の女性(閉経期の年齢で、12ヵ月以上月経がなく、その他に無月経の原因がない)、並びに手術により不妊となった女性(治験薬の初回投与4週間以上前に、卵管結紮術、子宮摘出、両側卵巣摘出を行った)を除くすべての女性被験者と定義する
  • 妊娠可能な女性被験者では、治験薬投与中及び治験薬投与終了後1ヵ月間、妊娠可能な女性をパートナーに持つ男性被験者では、治験薬投与中及び治験薬投与終了後3ヵ月間は有効な避妊法#で避妊を行うことに合意できる患者
  • 本治験への参加について文書による同意が得られた患者
  • *:予後不良因子とは、以下のいずれかを1つでも満たす場合とする:
    BUN>施設基準値上限、LDH>施設基準値上限、血清アルブミン<施設基準値下限
  • #:有効な避妊法とは、以下のいずれかとする:
    コンドーム、経口避妊薬、ペッサリー、子宮内避妊器具(IUD).
    ただし、経口避妊薬による避妊法の場合には、経口避妊薬以外の方法をあわせて使用すること
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 中枢神経病変を伴うATLの患者
  • スクリーニング時に活動性の重複癌を有する患者
  • HTLV-1関連脊髄症(HAM)又はHTLV-1関連ぶどう膜炎(HU)の患者
  • skin-directed therapy†による治療が可能であると治験責任医師又は治験分担医師が判断した患者
  • 治験薬投与開始時から24週以上の生存が見込めない患者
  • スクリーニング時にmSWAT評価の対象となり得る病変がない患者
  • スクリーニング来院以前の化学療法(分子標的薬等を含む)により皮膚障害を発症しており、本薬の評価に影響を与えると治験責任医師又は治験分担医師が判断した患者
  • 治験薬投与開始前12週以内に他の治験薬が投与されていた患者
  • 妊娠している患者、妊娠している可能性がある患者、妊娠を希望している患者、授乳中の患者、又は適切な避妊法を受け入れられない患者
  • 治験薬の成分又は関連製剤(レチノイド製剤)に対して過敏症の既往を有する、又はその疑いのある患者
  • 膵炎の既往又は膵炎のリスク因子を有する患者
  • 重篤な合併症、又は重症の感染症のある患者
  • 重篤なアレルギー又は重篤な薬物過敏症の既往のある患者
  • 長時間の太陽光又はUV光を避けることを望まない、又は避けることのできない患者
  • その他、治験責任医師又は治験分担医師により治験への参加が適切でないと判断された患者
  • †:本治験におけるskin-directed therapyとは、以下を指す:
    紫外線療法、放射線療法、外用ステロイド療法
主要な評価項目mSWATによる奏効率(総合最良効果)
主要な評価方法
副次的な評価項目[有効性]
・ATL治療効果判定規準(一部改変)による奏効率(総合最良効果)
・mSWATによる奏効期間
・mSWATによる奏効前期間
・mSWATによる病勢コントロール割合(DCR)
・mSWATによる無増悪期間(TTP)
・ATL治療効果判定規準(一部改変)による奏効期間
・ATL治療効果判定規準(一部改変)による奏効前期間
・ATL治療効果判定規準(一部改変)によるDCR
・ATL治療効果判定規準(一部改変)によるTTP
・インドレントATLにおける急性転化した被験者の割合
[安全性]
有害事象名、発現割合、重症度(グレード)、治験薬との関連性
探索的評価項目:
[有効性]
・mSWATスコアの治験薬投与前値に対する各評価時点での変化量
・mSWATによる無増悪生存期間(PFS)
・ATL治療効果判定規準(一部改変)によるPFS
・全生存期間(OS)
[薬物動態]
血漿中薬物動態プロファイル、薬物動態パラメータの評価
副次的な評価方法
予定試験期間

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより