ステージ3~4期の進行卵巣がんに対するルカパリブ+ニボルマブの治験
治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム」ページでご確認ください。
治験名
プラチナ製剤を含む化学療法による一次治療が奏効した卵巣がん患者を対象に、ルカパリブおよびニボルマブの維持療法を検討する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第3相試験
治験概要:
ステージ3~4期の進行卵巣がんに対する治験。新たに卵巣がんと診断され、プラチナ製剤を含む化学療法による一次治療が奏効した患者さんが対象です。
ルカパリブ+ニボルマブ併用療法とプラセボを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、100人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、第3相、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照。
試験群:ルカパリブ+ニボルマブ併用療法
対照群:プラセボ
無増悪生存期間、奏効率、奏効期間、安全性、忍容性などで評価します。
疾患解説:卵巣がん
国立がん研究センターのがん統計によると2016年に卵巣がんに罹患した人は、約5000人弱です。40歳くらいから増加し始め、50代前半から60代前半をピークに、その後は高齢になるにつれ減少します。
卵巣にできる腫瘍には、良性腫瘍と悪性腫瘍、それに良性と悪性の中間型の境界悪性とがあり、悪性腫瘍が卵巣がんです。術前に行うMRIやCTなどの画像検査による所見や血液検査による腫瘍マーカー測定によって、良性~悪性を推定します。
卵巣がんは複数の発生要因が関与されているといわれていますが、そのうち約10%はBRCA1/2遺伝子の変異が関与していることがわかっています。同じ遺伝子変異があると乳がんの発症リスクも高くなり、BRCA1/2遺伝子変異が原因の場合、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)といいます。
治験薬:ニボルマブ
ニボルマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:ルカパリブ
ルカパリブは、損傷したDNAを修復するPARPと呼ばれる酵素を阻害する分子標的薬です。
正常な細胞でDNAに損傷が起こると、PARPが修復します。PARP阻害薬で修復を妨げても、PARP以外のBRCA1とBRCA2という遺伝子が、たんぱく質を生成し損傷したDNAを修復します。しかし、BRCA1/2遺伝子に変異があると、損傷したDNAの修復が行われないため細胞死を誘導します。
ルカパリブは、BRCA1/2遺伝子変異によってDNAが修復できずがん化した細胞に特異的に働き、PARPを阻害することでがん細胞のDNA損傷の修復をさせず細胞死を誘導します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | プラチナ製剤を含む化学療法による一次治療が奏効した卵巣癌患者を対象に、Rucaparib及びニボルマブの維持療法を検討する、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第3相試験 |
試験の概要 | 新たに卵巣癌と診断された患者のうち、プラチナ製剤を含む化学療法による一次治療が奏効した卵巣癌患者を対象に、4群のRucaparib及びニボルマブの維持療法を検討する、第3相、多施設共同、無作為化、二重盲検、二重プラセボ対照試験。治療効果については、腫瘍サンプルの相同組換えに基づき解析する |
疾患名 | 卵巣癌 |
試験薬剤名 | ニボルマブ |
用法・用量 | 非盲検安全性コホート Rucaparib600mgを1日2回経口投与、ニボルマブ1回480mgを4週間間隔で静脈内投与と併用する 二重盲検治療期 A群Rucaparib600mgを1日2回経口投与+ニボルマブ1回480mgを4週間間隔で静脈内投与 B群Rucaparib600mgを1日2回経口投与+ニボルマブプラセボ静脈内投与 C群Rucaparibプラセボ経口投与+ニボルマブ1回480mgを4週間間隔で静脈内投与 D群Rucaparibプラセボ経口投与+ニボルマブプラセボ静脈内投与を4週間間隔で静脈内投与。1サイクル28日で行い、被験者の安全確保を考慮し、減量基準を設けて治験を実施する |
試験薬剤名 | ルカパリブ |
用法・用量 | 非盲検安全性コホート Rucaparib600mgを1日2回経口投与、ニボルマブ1回480mgを4週間間隔で静脈内投与と併用する 二重盲検治療期 A群Rucaparib600mgを1日2回経口投与+ニボルマブ1回480mgを4週間間隔で静脈内投与 B群Rucaparib600mgを1日2回経口投与+ニボルマブプラセボ静脈内投与 C群Rucaparibプラセボ経口投与+ニボルマブ1回480mgを4週間間隔で静脈内投与 D群Rucaparibプラセボ経口投与+ニボルマブプラセボ静脈内投与を4週間間隔で静脈内投与。1サイクル28日で行い、被験者の安全確保を考慮し、減量基準を設けて治験を実施する |
対照薬剤名 | プラセボ |
用法・用量 | 二重盲検治療期 A群Rucaparib600mgを1日2回経口投与+ニボルマブ1回480mgを4週間間隔で静脈内投与 B群Rucaparib600mgを1日2回経口投与+ニボルマブプラセボ静脈内投与 C群Rucaparibプラセボ経口投与+ニボルマブ1回480mgを4週間間隔で静脈内投与 D群Rucaparibプラセボ経口投与+ニボルマブプラセボ静脈内投与を4週間間隔で静脈内投与。1サイクル28日で行い、被験者の安全確保を考慮し、減量基準を設けて治験を実施する |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 第3相、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照 |
目標症例数 | 100 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | 治験医師による無増悪生存期間の評価 |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | 分子的に定義したHRDサブグループにおけるPFSを、盲検化された独立中央委員会(BICR)の放射線画像評価によりRECISTに基づき評価する 延命効果を評価する ベースライン時に測定可能病変のあった患者の奏効率(ORR)及び奏効期間(DOR)を治験担当医師の判定により評価する 安全性および忍容性の指標として有害事象CTCAEv4(またはそれ以上)と評価された患者数 安全性および忍容性の指標として注目すべき有害事象の患者数 臨床検査値異常を引き起こした患者 |
予定試験期間 | 2018年11月22日~2023年12月30日 |