白金製剤抵抗性・不応性卵巣がんに対するアベルマブの治験

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治験名

白金製剤抵抗性/不応性卵巣がん患者を対象としたアベルマブの単剤療法またはペグ化リポソーマルドキソルビシンとの併用療法をペグ化リポソーマルドキソルビシンの単剤療法と比較する多施設共同、無作為化、非盲検、第3相試験

治験概要:

白金製剤抵抗性、不応性卵巣がん対する治験。最後の白金製剤投与後180日以内の疾患進行、あるいは白金製剤を用いた直近の治療中に無反応または疾患進行した患者さんが対象です。 アベルマブ単剤あるいは、アベルマブ+ペグ化リポソーマルドキソルビシン併用とペグ化リポソーマルドキソルビシン単剤と比較して、全生存期間、無増悪生存期間などで評価する臨床試験です。 登録予定数は、550人。 フェーズは、3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化、非盲検、並行群間比較試験。 比較する対象は 試験群:アベルマブ単剤 試験群:アベルマブ+ペグ化リポソーマルドキソルビシン併用 対照群:ペグ化リポソーマルドキソルビシン単剤 無増悪生存期間、全生存率、奏効率、奏功期間、病勢コントロール率薬物動態パラメータ-、患者アウトカムなどで評価します。

疾患解説:卵巣がん・卵管がん

国立がん研究センターのがん統計によると2016年に卵巣がんに罹患した人は、約5000人弱です。40歳くらいから増加し始め、50代前半から60代前半をピークに、その後は高齢になるにつれ減少します。 卵巣にできる腫瘍には、良性腫瘍と悪性腫瘍、それに良性と悪性の中間型の境界悪性とがあり、悪性腫瘍が卵巣がんです。術前に行うMRIやCTなどの画像検査による所見や血液検査による腫瘍マーカー測定によって、良性~悪性を推定します。 卵巣がんは複数の発生要因が関与されているといわれていますが、そのうち約10%はBRCA1/2遺伝子の変異が関与していることがわかっています。同じ遺伝子変異があると乳がんの発症リスクも高くなり、BRCA1/2遺伝子変異が原因の場合、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)といいます。

治験薬:アバルマブ

アバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:ペグ化リポソーマルドキソルビシン

ペグ化リポソーマルドキソルビシンは、ドキソルビシンをペグ化リポソームに封入したドラッグデリバリーシステムを活用したお薬です。ペグ化リポソームに有効成分のドキソルビシンを封入することで、マクロファージに補足されることなく、がん細胞に運ばれるように設計されています。 ドキソルビシンは、細胞内のDNAに結合することでDNAやRNAの合成を阻害するアントラサイクリン系の殺細胞性抗がん薬です。 アントラサイクリン系抗がん薬は、DNA鎖を延長させる酵素の阻害、DNA鎖の切断作用により、DNAやRNAの合成を阻害することで、抗腫瘍効果を発揮します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 上皮性卵巣がん、卵管がんまたは腹膜がん患者
  • 最後の白金製剤投与後180日以内の疾患進行、あるいは白金製剤を用いた直近の治療中に無反応または疾患進行と定義される白金製剤抵抗性/不応性患者
  • 前治療の化学療法が最大3ライン以内であり、直近の治療で白金製剤を含み、白金製剤抵抗性疾患に対する前治療歴がない患者
  • 測定可能病変を少なくとも1つある患者
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:女性
対象とならない人
  • 非上皮性腫瘍あるいは低悪性度の腫瘍がある患者
  • 過去に抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CD137、抗CTLA4抗体による治療を受けたことのある患者
  • ステロイド投与を必要とする症候性の脳転移がある患者。ただし、過去に脳転移の既往がある患者で、本治験登録前に治療を完了し、放射線治療または手術による急性症状から回復し、かつ本治験登録の4週間以上前にステロイドを中止し、神経学的に安定している場合に限り組入れ可能
  • 本治験登録前5年以内に他の悪性腫瘍の診断歴がある患者。ただし、適切な治療を受けた皮膚の基底細胞がんや扁平上皮細胞がん、乳房もしくは子宮頚部の上皮内がんは除く
  • 重度の消化管症状がある患者
  • 免疫賦活剤の投与により悪化する可能性のある活動性自己疾患がある患者。ただし、免疫賦活剤による治療を要しないI型糖尿病、尋常性白斑、乾癬、甲状腺機能低下症または亢進症の患者は組入れ可能

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 白金製剤抵抗性/不応性卵巣癌患者を対象としたアベルマブ(MSB0010718C)の単剤療法またはペグ化リポソーマルドキソルビシンとの併用療法をペグ化リポソーマルドキソルビシンの単剤療法と比較する多施設共同、無作為化、非盲検、第3相試験
試験の概要 白金製剤抵抗性/不応性卵巣癌患者を対象として、PLD単剤と比較して、アベルマブ単剤あるいはアベルマブとPLDの併用療法で全生存期間が延長するかを検討する
疾患名 卵巣癌
試験薬剤名 アベルマブ
用法・用量 4週間を1サイクルとして、アベルマブ10mg/kgを2週間隔で、1時間かけて点滴静注する
試験薬剤名 ペグ化リポソーマルドキソルビシン
用法・用量 4週間を1サイクルとして、PLD 40mg/m2を4週間隔で、1時間かけて点滴静注する
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン 無作為化、非盲検、並行群間比較試験
目標症例数 550
適格基準
  • 上皮性卵巣癌、卵管癌または腹膜癌が組織学的に確認されている患者
  • 最後の白金製剤投与後180日以内の疾患進行(抵抗性)、あるいは白金製剤を用いた直近の治療中に無反応または疾患進行(不応性)と定義される白金製剤抵抗性/不応性患者
  • 前治療の化学療法が最大3ライン以内であり、直近の治療で白金製剤を含み、白金製剤抵抗性疾患に対する前治療歴がない患者
  • RECIST v 1.1に基づき、測定可能病変(過去に放射線照射を受けていないこと)を少なくとも1つ有する患者
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:女性
除外基準
  • 非上皮性腫瘍(high grade漿液性腺癌の成分がないミューラー管混合腫瘍を含む)あるいは低悪性度の腫瘍(境界悪性腫瘍など)を有する患者
  • 過去に抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CD137、抗CTLA4抗体による治療を受けたことのある患者(イピリムマブ、tremelimumab、T細胞共刺激あるいは免疫チェックポイント経路を標的とした薬剤を含む)
  • ステロイド投与を必要とする症候性の脳転移を有する患者。ただし、過去に脳転移の既往がある患者で、本治験登録前に治療を完了し、放射線治療または手術による急性症状から回復し、かつ本治験登録の4週間以上前にステロイドを中止し、神経学的に安定している場合に限り、組入れ可能とする
  • 本治験登録前5年以内に他の悪性腫瘍の診断歴がある患者。ただし、適切な治療を受けた皮膚の基底細胞癌や扁平上皮細胞癌、乳房もしくは子宮頚部の上皮内癌は除く
  • 重度の消化管症状を有する患者(登録前4週間以内に臨床的または画像検査に基づき診断された腸管閉塞、登録前4週間以内のコントロール不良の下痢、炎症性腸疾患の既往など)
  • 免疫賦活剤の投与により悪化する可能性のある活動性自己疾患を有する患者。ただし、免疫賦活剤による治療を要しないI型糖尿病、尋常性白斑、乾癬、甲状腺機能低下症または亢進症の患者は組入れ可能とする
主要な評価項目 全生存期間 無増悪生存期間
主要な評価方法
副次的な評価項目 奏効率 無増悪生存期間 奏効期間 病勢コントロール率 薬物動態パラメーター アベルマブ:トラフ濃度、Cmax PLD:Cmax、分布容積、クリアランス、AUC 免疫原性:アベルマブに対する抗薬物抗体、中和抗体 患者アウトカム:EORTC QLQ-C30、EORTC QLQ-QV28、EQ-5D 腫瘍組織のバイオマーカー
副次的な評価方法
予定試験期間 2015年12月1日~2018年9月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより