局所進行切除不能または転移性膵臓がんに対するエボフォスファミド+ゲムシタビン併用療法の治験
治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム」ページでご確認ください。
治験名
EMR 200592-001
治療歴のない局所進行切除不能または転移性膵腺がん患者を対象として、ゲムシタビン+エボフォスファミド併用療法とゲムシタビン+プラセボ併用療法の有効性および安全性を比較評価する無作為化二重盲検第III相試験
治験概要:
局所進行切除不能または転移性膵臓がんに対する治験。化学療法または全身療法の治療歴のない患者刺さんが対象です。
ゲムシタビン+エボフォスファミド併用療法とゲムシタビン+プラセボ併用療法を比較して有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、660人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、二重盲検、プラセボ対照。
比較する対象は、
試験群:ゲムシタビン+エボフォスファミド併用療法
対照群:ゲムシタビン+プラセボ併用療法
で主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は無増悪生存期間、病勢コントロール率などで評価します。
疾患解説:膵臓がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に膵臓がんに罹患した人は、男性18654人女性17585人、合計36239人です。50代後半から増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少していきます。
膵臓がんの約90%は、膵管の細胞から発生する膵管がんです。このほか、神経内分泌腫瘍や膵管内乳頭粘液性腫瘍があります。
膵臓は体内の奥にあるため、がんが発生しても症状が出にくく早期発見が難しいがんです。進行してくると腹痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸、腰や背中の痛みなどが起こりますが、膵臓がんに限った症状ではないため、膵臓がんになっても症状が現れないこともあります。そのため進行してから発見されることも多く、全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2017年5月)によれば5年生存率は、ステージ1で41.2%、ステージ2で18.3%、ステージ3で6.2%、ステージ4で1.4%と予後の悪いがんとして知られています。
治験薬:エボフォスファミド
エボフォスファミドは、低酸素状態のがん細胞を標的とした抗がん薬です。
がん細胞は酸素分圧が低下しています。低酸素状態のがん細胞に到達したエボフォスファミドは、低酸素環境下でアルキル化剤を放出します。
アルキル化剤は、アルキル基という原子が、DNAと結合した状態で細胞分裂や増殖を行うとDNAが破壊され細胞死が起こります。この作用により、抗腫瘍効果を発揮します。
治験薬:ゲムシタビン
ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルかリウム配合剤、シタラビン、かペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 治療歴のない局所進行切除不能または転移性膵腺癌患者を対象として、ゲムシタビン+TH-302併用療法とゲムシタビン+プラセボ併用療法の有効性および安全性を比較評価する無作為化二重盲検第III相試験(EMR 200592-001) |
試験の概要 | 本治験は、局所進行切除不能または転移性の膵腺癌患者を対象として、ゲムシタビン+TH-302併用(G+TH-302、被験群)とゲムシタビン+プラセボ併用(G+Pbo、対照群)を比較する無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第III相試験である。被験者をG+TH-302またはG+Pboのいずれかに無作為に割り付け、4週間を1サイクルとして、進行(progressive disease; PD)もしくは忍容できない毒性の所見が認められるまで、またはその他の理由(例えば、同意撤回)により投与中止に至るまで、試験治療を実施する。主要評価項目は全生存期間である。主要および副次評価項目の統計解析のデータカットオフ日は、508件の事象(死亡)が報告された日である。有効性の中間解析は予定していない。被験者の安全性、ならびに本治験の妥当性および科学的メリットを保証するため、独立安全性モニタリング委員会(ISMB)が非盲検下で安全性データを定期的に評価する 合計660名の被験者が組み入れ予定 |
疾患名 | 治療歴のない局所進行切除不能または転移性膵腺癌患者 |
試験薬剤名 | TH-302 |
用法・用量 | 28日間を1サイクルとして、各サイクルのDay1、8および15に340mg/m2の用量で30分かけて持続静注する。進行もしくは忍容できない毒性の所見が認められるまで、または同意撤回まで投与継続する |
試験薬剤名 | ゲムシタビン |
用法・用量 | 28日間を1サイクルとして、各サイクルのDay1、8および15に1000mg/m2の用量で30分かけて持続静注する。進行もしくは忍容できない毒性の所見が認められるまで、または同意撤回まで投与継続する |
対照薬剤名 | プラセボ(5%ブドウ糖注射液もしくは0.9%生理食塩液) |
用法・用量 | 28日間を1サイクルとして、各サイクルのDay1、8および15に1000mg/m2の用量で30分かけて持続静注する。進行もしくは忍容できない毒性の所見が認められるまで、または同意撤回まで投与継続する |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、二重盲検、プラセボ対照 |
目標症例数 | 660 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 全生存期間 |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 | 無増悪生存期間 RECIST 1.1基準に基づく最良総合効果の割合 RECIST 1.1基準に基づく病勢コントロール割合 EQ-5D-5Lを用いたQOL評価 EORTC QLQ-C30(第3版)を用いたQOL評価 数値的評価スケール(NRS)を用いた疼痛評価 CA19-9 値における奏効割合 NCI CTCAE v.4.03に基づく試験治療下で発現した有害事象の発現数 |
副次的な評価方法 | |
予定試験期間 | 2012年12月1日~2017年2月1日 |