転移性去勢抵抗性前立腺がんに対するペムブロリズマブ併用の治験
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治験名
KEYNOTE-921
新規ホルモン剤後に進行した転移性去勢抵抗性前立腺がんの化学療法未治療患者を対象に、ペムブロリズマブ、ドセタキセルおよびプレドニゾンの併用投与をプラセボ、ドセタキセルおよびプレドニゾンの併用投与と比較する二重盲検無作為化第3相試験
治験概要:
新規ホルモン剤後に進行した転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する治験。化学療法未治療患者さんが対象です。
ペムブロリズマブ+ドセタキセル+プレドニゾンとプラセボ+ドセタキセル+プレドニゾンを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、1000人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、並行群間、多施設共同、二重盲検試験。
試験群:ペムブロリズマブ+ドセタキセル+プレドニゾン
対照群:プラセボ+ドセタキセル+プレドニゾン
全生存期間、無増悪生存期間、奏効率、奏効期間、疼痛進行までの期間、症候性骨関連事象、有害事象などで評価します。
疾患解説:転移性去勢抵抗性前立腺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に前立腺がんと診断された人は74459人です。60代から徐々に増えはじめ、70代後半をピークにその後は減少していきます。男性では、胃がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に多いがんです。
前立腺は尿道のまわりを取り囲みようにある男性特有の臓器で、精液に含まれる前立腺液が作られます。前立腺の細胞が無秩序に増殖することで発生します。前立腺がんのほとんどは進行がゆるやかで、早期発見に有効なPSA検査もあり、治癒の可能性も高いがんです。全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査によると、前立腺がんの5年生存率は、ステージI~IIIまでは100%、ステージIVでも64.1%となっています。
前立腺がんの多くは早期には自覚症状がありませんが、進行してくると尿がでにくい、排尿回数が増える、さらに進行すると血尿や腰痛などの骨転移による痛みなどが起こることがあります。
前立腺がんは、男性ホルモンの刺激によって増殖する性質があるため、手術やホルモン療法(内分泌療法)で男性ホルモンの分泌を抑え、去勢状態にする治療が行われます。ホルモン療法を続けていくと薬の効果が薄れ、がんが再び勢いをましていきます。こうした状態を去勢抵抗性といいます。転移性去勢抵抗性前立腺がんは、去勢抵抗性でなおかつ転移のある前立腺がんの状態です。去勢抵抗性前立腺がんを対象とした治療薬や、去勢抵抗性前立腺がんの骨転移に対する治療薬が承認されています。
治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:ドセタキセル
ドセタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。ドセタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。
タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ドセタキセルはアルコールに溶かさずに使用できる薬もあります。
治験薬:プレドニゾン
プレドニゾンは、合成副腎皮質ホルモン剤で、免疫抑制作用のある薬剤です。炎症性疾患やがん治療にも使われています。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 新規ホルモン剤(NHA)後に進行した転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の化学療法未治療患者を対象に、MK-3475、ドセタキセル及びプレドニゾンの併用投与をプラセボ、ドセタキセル及びプレドニゾンの併用投与と比較する二重盲検無作為化第III相試験(KEYNOTE-921) |
試験の概要 | 本試験の目的は、新規ホルモン剤(NHA)後に進行した転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の化学療法未治療患者を対象に、MK-3475、ドセタキセル及びプレドニゾンの併用投与の有効性および安全性を比較評価することである 仮説1:MK-3475、ドセタキセル及びプレドニゾンの併用投与は、プラセボ、ドセタキセル及びプレドニゾンの併用投与と比較して、OSで優越性を示す 仮説2:MK-3475、ドセタキセル及びプレドニゾンの併用投与は、プラセボ、ドセタキセル及びプレドニゾンの併用投与と比較して、Prostate Cancer Working Group(PCWG)を基に改編した固形がんの治療効果判定のためのガイドライン第1.1版(PCWG-modified RECIST1.1)に基づき盲検下の独立中央画像判定機関(BICR)が評価した画像上の無増悪生存期間(rPFS)で優越性を示す |
疾患名 | 前立腺癌 |
試験薬剤名 | ペムブロリズマブ+ドセタキセル+プレドニゾン |
用法・用量 | ドセタキセル(75mg/m2、Q3W、静脈内投与)は各コース(21日間)の1日目(最大10コース)に投与する。ドセタキセル投与期間中はプレドニゾン(5mg、BID、経口投与)を併用する。ドセタキセルの投与開始前12時間、3時間及び1時間の時点でデキサメタゾン8mgPOの前投与を実施する。MK-3475(200mg、Q3W、静脈内投与)は各コース(21日間)の1日目(最大35回)投与(約2年)する |
対照薬剤名 | プラセボ+ドセタキセル+プレドニゾン |
用法・用量 | ドセタキセル(75mg/m2、Q3W、静脈内投与)は各コース(21日間)の1日目(最大10コース)に投与する。ドセタキセル投与期間中はプレドニゾロン(5mg、BID、経口投与)を併用する。ドセタキセルの投与開始前12時間、3時間及び1時間の時点でデキサメタゾン8mgPOの前投与を実施する。プラセボは各コース(21日間)の1日目(最大35回)投与(約2年)する |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 無作為化、並行群間、多施設共同、二重盲検試験 |
目標症例数 | 1000 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | 全生存期間(OS) PCWG-modified RECIST1.1に基づき、BICRが評価した画像上の無増悪生存期間(rPFS) |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | がんに対する初の次治療の開始又は死亡までの期間(TFST) 前立腺特異抗原(PSA)奏効率 PCWG-modified RECIST1.1に基づいてBICRが評価した奏効率(ORR) PCWG-modified RECIST1.1に基づいてBICRが評価した奏効期間(DOR) Brief Pain Inventory-Short Form(簡易疼痛質問票縮小版)(BPI-SF)項目3「24時間以内に感じた最も強い痛みの程度」及び麻薬性鎮痛剤の使用[Analgesic Quantification Algorithm(AQA)スコア]に基づく疼痛進行までの期間(TTPP) 症候性骨関連事象(SSRE)の初回発現までの期間 前立腺特異抗原(PSA)進行までの期間 PCWG-modified RECIST1.1の軟部組織に関する基準に基づきBICRが評価した画像上の軟部組織病変の疾患進行までの期間 有害事象 有害事象による治験薬投与中止 |
予定試験期間 | 2019年7月23 日~2023年2月28日 |