転移性前立腺がんに対するイパタセルチブ+アビラテロン+プレドニゾン併用療法の治験
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治験名
未治療の無症候性または軽度症候性転移性去勢抵抗性前立腺がん男性成人患者を対象とした、イパタセルチブ+アビラテロン+プレドニゾンの併用をプラセボ +アビラテロン+プレドニゾロンの併用と比較する第3相ランダム化多施設共同プラセボ対照二重盲検試験
治験概要:
転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する治験。未治療で症状がないかまたは、軽度の患者さんが対象です。 アビラテロン+プレドニゾン/プレドニゾロンの併用下で、イパタセルチブの上乗せ効果を評価するためにプラセボと比較する臨床試験です。 登録予定数は1100人。 試験デザインは、ランダム化、多施設共同、二重盲検。 フェーズは、第3相臨床試験。 比較する対象は 試験群:イパタセルチブ+アビラテロン+プレドニゾン併用 対照群:プラセボ+アビラテロン+プレドニゾン併用 で主要評価項目は無増悪生存期間、副次的な評価項目は、全生存期間、PSA進行までの期間、疼痛進行までの期間などで評価します。疾患解説:去勢抵抗性前立腺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に前立腺がんと診断された人は74459人です。60代から徐々に増えはじめ、70代後半をピークにその後は減少していきます。男性では、胃がん、大腸がん、肺がんに次いで4番目に多いがんです。 前立腺は尿道のまわりを取り囲みようにある男性特有の臓器で、精液に含まれる前立腺液が作られます。前立腺の細胞が無秩序に増殖することで発生します。前立腺がんのほとんどは進行がゆるやかで、早期発見に有効はPSA検査もあり、治癒の可能性も高いがんです。全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査によると、前立腺がんの5年生存率は、ステージI~IIIまでは100%、ステージIVでも64.1%となっています。 前立腺がんの多くは早期には自覚症状がありませんが、進行してくると尿がでにくい、排尿回数が増える、さらに進行すると血尿や腰痛などの骨転移による痛みなどが起こることがあります。 前立腺がんは、男性ホルモンの刺激によって増殖する性質があるため、手術やホルモン療法(内分泌療法)で男性ホルモンの分泌を抑え、去勢状態にする治療が行われます。ホルモン療法を続けていくと薬の効果が薄れ、がんが再び勢いをましていきます。こうした状態を去勢抵抗性といいます。転移性去勢抵抗性前立腺がんは、去勢抵抗性でなおかつ転移のある前立腺がんの状態です。去勢抵抗性前立腺がんを対象とした治療薬は、現在4剤と、去勢抵抗性前立腺がんの骨転移に対する治療薬が1剤、承認されています。 去勢抵抗性前立腺がんの承認薬一般名(製品名) | 投与法 | 副作用など | |
抗アンドロゲン薬 | エンザルタミド(イクスタンジ) | 経口 | 高血圧、疲労感。痙攣性発作、脳梗塞などの既往のある患者さんで強い発作が現れることがある |
アビラテロン(ザイティガ) | 心疾患、糖尿病の合併症を悪化させる場合がある。肝機能障害。プレドニンを併用する | ||
抗がん剤 | ドセタキセル(タキソテール) | 点滴 | 悪心・嘔吐、脱毛、骨髄抑制、末梢神経障害 |
カバジタキセル(ジェブタナ) | 骨髄抑制、発熱性好中球減少症、下痢 | ||
放射線治療薬 | ラジウム223(ゾーフィゴ) | 静脈注射 | 貧血、血小板減少、骨痛、下痢など |
治験薬:イパタセルチブ
イパタセルチブは、PI3K/Akt経路のAktを阻害する分子標的薬です。 PI3K/Akt経路は、生存増殖シグナルの伝達経路の1つです。正常細胞では、細胞の増殖や細胞死(アポトーシス)が調整されていますが、がん細胞では、この調整機能に異常が起きており、異常な増殖やアポトーシスが起こらなくなっています。 細胞が増殖因子の刺激を受けるとPI3Kという酵素が活性化され、さらにAktという酵素を活性化します。活性化されたAktは、細胞内のシグナル伝達に関わるたんぱく質を調整することで、細胞の増殖やアポトーシスを調整しています。 イパタセルチブは、このAktを阻害することで、シグナル伝達を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。治験薬:アビラテロン酢酸エステル
アビラテロン酢酸エステルは、アンドロゲン合成酵素であるCYP17を阻害するホルモン治療薬です。 前立腺がんは、男性ホルモンのテストステロンが酵素で変換されたジヒドロテストステロンとアンドロゲンが結合し、がん細胞の核に移行してDNAと結合すること増殖します。 アビラテロンは、精巣、副腎、がん細胞内でアンドロゲンの合成を阻害することで、去勢抵抗性前立腺がんに対して抗腫瘍効果をしめします。治験薬:プレドニゾン
プレドニゾンは、合成副腎皮質ホルモン剤で、免疫抑制作用のある薬剤です。炎症性疾患やがん治療にも使われています。主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 未治療の無症候性又は軽度症候性転移性去勢抵抗性前立腺癌男性成人患者を対象とした、ipatasertib+アビラテロン+prednisone/プレドニゾロンの併用をプラセボ+アビラテロン+prednisone/プレドニゾロンの併用と比較する第III相ランダム化多施設共同プラセボ対照二重盲検試験 |
試験の概要 | 未治療の転移性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象として、ipatasertib+アビラテロン+プレドニゾロンの併用療法の有効性と安全性及び薬物動態を、プラセボ+アビラテロン+プレドニゾロンの併用療法との比較で評価する |
疾患名 | 前立腺癌 |
試験薬剤名 | イパタセルチブ |
用法・用量 | 400mgを1日1回経口投与 |
試験薬剤名 | アビラテロン |
用法・用量 | 1000mgを1日1回経口投与 |
試験薬剤名 | プレドニゾロン |
用法・用量 | 5mgを1日2回経口投与 |
対照薬剤名 | プラセボ |
用法・用量 | 1日1回経口投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | ランダム化、多施設共同、二重盲検 |
目標症例数 | 1100 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 画像所見上の無増悪生存期間(rPFS) |
主要な評価方法 | PCWG3基準、RECIST ver1.1 |
副次的な評価項目 | 疼痛進行までの期間 細胞傷害性化学療法開始までの期間 全生存期間 機能低下までの期間 PSA進行までの期間 オピオイド初回使用までの期間 症候性の骨格系事象発現までの期間 客観的奏効率、PSA奏効率 NGSで腫瘍にPTEN欠損を認めた患者のrPFS |
副次的な評価方法 | 観察、PCWG3基準、RECIST ver1.1 |
予定試験期間 | 2017年6月1日~2023年11月1日 |