腎臓がんに対するアベルマブとアキシチニブ併用療法の治験

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治験名

JAVELIN Renal 101

スニチニブ単剤投与を対照としてアベルマブとアキシチニブの併用投与を検討する一次治療の進行腎細胞癌患者を対象とした、無作為化、非盲検、並行群間比較、国際共同第3相試験

治験概要:

進行腎細胞癌患者さんを対象の一次治療としての治験。
アベルマブとアキシチニブの併用療法と、スニチニブ単独投与を比較して有効性と安全性を評価する無作為化第3相試験です。
登録予定数は830人。
試験デザインは、無作為化、非盲検、並行群間試験。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
対象群1:アベルマブ+アキシチニブ併用療法
対象群2:スニチニブ単独投与
で主要評価項目は無増悪生存期間、副次的な評価項目は、全生存期間、奏効例数、病勢コントロール、奏功までの期間、奏功期間などで評価します。

疾患解説:腎細胞がん

腎臓がんは、腎臓の腎実質と呼ばれる細胞ががん化した悪性腫瘍です。腎癌研究会の2002年の調査によると、人口10万人に対して男性8.2人、女性3.7人と男性に多く、年々増加傾向です。50歳代から増え始め、70歳代まで高齢になるほど罹患数は多くなります。 腎臓がんの発生原因は、喫煙と肥満といわれており、腎臓がんの予防では、禁煙と肥満にならないようなバランスのいい食事や運動が効果的だとの日本人を対象とした研究報告もあります。 腎臓がんは、あまり自覚症状がなく、約70%の人が症状のない段階で発見されています。自覚症状として多く見られるのが、血尿、背中や腰の痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、体重減少、吐き気、便秘、腹痛などさまざまです。 腎臓がんは、がんの組織の違いでいくつかのタイプがり、混在していることもあります。最も多くみられる組織型は「淡明細胞型腎細胞がん」で、全体の約70~85%を占めます。そのほかに、多房嚢胞性腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がん、紡錘細胞がん、集合管がんなどがあります。 腎臓がんの組織型は、治療選択の判断材料の1つで、組織型の違いによって病気の進行や予後が異なります。 淡明細胞型腎細胞がんは、乳頭状腎細胞がんや嫌色素性腎細胞がんに比べて有意に予後不良といわれています。淡明細胞型腎細胞がんの腫瘍内で広範な壊死がある場合は有意に予後不良であるという報告もあります。

腎臓がん進行度

T1a腎細胞がんの直径が4cm以下で腎臓にとどまる
T1b腎細胞がんの直径が4cmを超え、7cm以下で腎臓にとどまる
T2a腎細胞がんの直径が7cmを超え、10cm以下で腎臓にとどまる
T2b腎細胞がんの直径が10cmを超えて腎臓にとどまる
T3a腎細胞がんが腎静脈または周囲の脂肪組織に及ぶがゲロタ筋膜※を超えない
T3b腎細胞がんが横隔膜より下の大静脈内に広がっている
T3c腎細胞がんが横隔膜より上の大静脈内に広がる、または大静脈壁まで及ぶ
T4腎細胞がんがゲロタ筋膜※を超えて広がる(同じ側の副腎まで及ぶ場合を含む)

※ゲロタ筋膜:腎臓を覆っている一番外側の膜
出典:日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会,編:泌尿器科・病理・放射線科 腎癌取扱い規約第4版.2011年,金原出版より作成

腎臓がんの組織型分類

淡明細胞型腎細胞がん
多房嚢胞性腎細胞がん
乳頭状腎細胞がん
嫌色素性腎細胞がん
集合管がん
腎髄質がん
Xp11.2転座型腎細胞がん
神経芽腫随伴腎細胞がん
粘液管状紡錘細胞がん
紡錘細胞がん
腎細胞がん、分類不能型

腎癌取扱い規約(第4版)より

治験薬:アベルマブ

アバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 淡明細胞型の進行または転移腎細胞がん
  • 腫瘍生検で採取した腫瘍組織ブロックを提供。または以下の条件
    原発巣または転移巣の切除または生検で得られた腫瘍組織を代わりに提供することができる。
    原発巣または転移巣の手術または生検を1年以内に実施していること
    腫瘍組織を採取してから本試験までの間に抗がん剤の全身療法を受けていないこと
    腫瘍組織ブロックが提供できない場合、15枚の未染色スライド(少なくとも10枚)を代わりに提供してもよい
  • 初回診断の検体から作成した保管用腫瘍組織ブロックの提供が可能である。腫瘍組織ブロックが提供できない場合は、15枚の未染色スライド(少なくとも10枚)の提供でもよい
  • 過去に放射線治療を行っていない測定可能病変を少なくとも1つがある
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0または1の患者
  • 適切な骨髄機能、腎機能および肝機能がある患者
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 過去に進行または転移腎細胞がんに対する全身療法を受けたことのある
  • 過去に腎細胞がんに対する術前または術後補助療法を受けた患者(投与中または最終投与から12か月以内に腫瘍の進行または再発が認められた場合)
  • 過去にIL-2またはIFN-αによる免疫療法を受けた患者、抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CD137または抗CTLA-4抗体(イピリムマブなど)による治療を受けた患者、またはその他のT細胞共刺激または免疫チェックポイント経路を標的とする抗体または化合物による治療を受けたことのある
  • 過去にアキシチニブやスニチニブに限らず他のVEGF経路阻害薬による治療を受けたことのある
  • モノクローナル抗体に対する重度の過敏症反応(グレード3以上)、またはアナフィラキシーの既往が認められている
  • 無作為割り付け前12か月以内に以下のいずれかの疾患がある患者
    (心筋梗塞、重症/不安定の狭心症、冠動脈/末梢動脈バイパス移植、症候性うっ血性心不全、基準下限値を下回る左室駆出率、臨床的に重大な心嚢液貯留、脳血管発作または一過性脳虚血発作)
  • 無作為割り付け前6か月以内に深部静脈血栓症または症候性の肺塞栓症を認めた患者
  • アベルマブの初回投与前4週間以内および治験治療期間中のワクチンの使用。ただし、不活化インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンは除く

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。

PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

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試験概要詳細

試験の名称進行腎細胞癌患者を対象として、アベルマブとアキシチニブの併用投与とスニチニブ単剤投与を比較する試験(JAVELIN Renal 101)
試験の概要本試験は、進行腎細胞癌患者を対象として一次治療としてのアベルマブとアキシチニブ(インライタ)の併用投与およびスニチニブ(スーテント)単剤投与の抗腫瘍活性および安全性を検討する無作為化第3相試験である
疾患名腎細胞癌
試験薬剤名アベルマブ
用法・用量アベルマブ10 mg/kg(2週ごとの投与)をアキシチニブと併用投与
試験薬剤名アキシチニブ
用法・用量アキシチニブ:5 mg 1日2回をアベルマブと併用投与
試験薬剤名スニチニブ
用法・用量スニチニブ:50 mg 1日1回を4週連続服用し、その後2週休薬
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン無作為化、非盲検、並行群間試験
目標症例数830
適格基準
  • 組織学的または細胞学的に淡明細胞癌のコンポーネントを有する進行または転移腎細胞癌であると診断されている。
  • スクリーニング時のde novo腫瘍生検で採取してホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed、 paraffin-embedded:FFPE)した腫瘍組織ブロックを提供する必要がある(生検を実施する腫瘍病変はRECISTに基づく標的病変以外の病変であること)。または、以下の条件を満たす場合、原発巣または転移巣の切除または生検で得られた直近の保存FFPE腫瘍組織ブロック(スライドは不可)を代わりに提供することができる。
    1) 原発巣または転移巣の手術または生検を無作為割り付けの1年以内に実施していること。
    2) 腫瘍組織を採取してから本試験の無作為割り付けまでの間に抗癌剤の全身療法を受けていないこと。FFPE腫瘍組織ブロックが提供できない場合、15枚の未染色スライド(少なくとも10枚)を代わりに提供してもよい。
  • 初回診断に用いた検体から作成した保管用FFPE腫瘍組織ブロックの提供が可能である(提供可能、かつ上述の直近の保存FFPE腫瘍組織ブロックの基準を満たしている検体を提供しない場合)。FFPE腫瘍組織ブロックが提供できない場合は、15枚の未染色スライド(少なくとも10枚)の提供でもよい。
  • RECIST version 1.1の定義に従った、過去に放射線治療を行っていない測定可能病変を少なくとも1つ有する。
  • ECOG PS が0または1の患者
  • 適切な骨髄機能、腎機能および肝機能を有する患者
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 過去に進行または転移腎細胞癌に対する全身療法を受けたことのある患者
  • 過去に腎細胞癌に対する術前または術後補助療法を受けた患者(投与中または最終投与から12ヵ月以内に腫瘍の進行または再発が認められた場合)
  • 過去にIL-2またはIFN-αによる免疫療法を受けた患者、抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CD137または抗CTLA-4抗体(イピリムマブなど)による治療を受けた患者、またはその他のT細胞共刺激または免疫チェックポイント経路を標的とする抗体または化合物による治療を受けたことのある患者
  • 過去にアキシチニブやスニチニブに限らず他のVEGF経路阻害薬による治療を受けたことのある患者
  • モノクローナル抗体に対する重度の過敏症反応(グレード3以上)、またはアナフィラキシーの既往が認められている患者
  • 無作為割り付け前12ヵ月以内に以下のいずれかの疾患を有する患者:心筋梗塞、重症/不安定の狭心症、冠動脈/末梢動脈バイパス移植、症候性うっ血性心不全、基準下限値を下回る左室駆出率、臨床的に重大な心嚢液貯留、脳血管発作または一過性脳虚血発作
  • 無作為割り付け前6ヵ月以内に深部静脈血栓症または症候性の肺塞栓症を認めた患者
  • 心筋または心嚢に及ぶ病変が認められる患者、または心臓まで伸展する腫瘍塞栓が認められる患者
  • アベルマブの初回投与前4週間以内および治験治療期間中のワクチンの使用。ただし、不活化インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンは除く。
主要な評価項目 RECIST version 1.1に従った盲検下での独立中央判定による無増悪生存期間
主要な評価方法
副次的な評価項目・全生存期間
・奏効例数
・病勢コントロール
・奏功までの期間
・奏功期間
・治験担当医師の判定による無増悪生存期間
・次治療の無増悪生存期間
・毒性による治験治療中止までの期間
・毒性による治験治療中止
・Avelumabのトラフ濃度
・アキシチニブのトラフ濃度
・アキシチニブの最高血中濃度
・Avelumabに対する抗薬物抗体/中和抗体
・腫瘍組織のバイオマーカーステータス
・バイオマーカー陽性および陰性の部分集団における全生存期間
・バイオマーカー陽性および陰性の部分集団における無増悪生存期間
・バイオマーカー陽性および陰性の部分集団における奏効
・バイオマーカー陽性および陰性の部分集団における病勢コントロール
・バイオマーカー陽性および陰性の部分集団における奏効までの期間
・バイオマーカー陽性および陰性の部分集団における奏功期間
・FACT-Kidney Symptom Index (FKSI)-19のベースラインからの変化
・EuroQol 5 Dimension (EQ 5D)のベースラインからの変化
・EuroQol 5 Dimension (EQ 5D)(視覚的アナログスケール)のベースラインからの変化
副次的な評価方法
予定試験期間2016年2月~2020年9月

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより