ステージ4の局所進行性または転移性腎細胞がんに対するペムブロリズマブ+エパカドスタット併用療法の治験

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治験名

KEYNOTE-679/ECHO-302試験

局所進行性または転移性腎細胞がん患者を対象とし、1次治療としてのペムブロリズマブとエパカドスタットの併用投与と標準治療(スニチニブまたはパゾパニブ)における有効性および安全性を比較する無作為化非盲検第3相試験

治験概要:

局所進行性または転移性腎細胞がんに対する治験。転移性腎細胞がんに対して全身性の治療歴のない淡明細胞型の患者さんが対象です。 1次治療としてペムブロリズマブとエパカドスタットの併用療法と標準治療であるスニチニブまたはパゾパニブを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。 登録予定数は、630人。 フェーズは、第3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化、実薬対照、並行群間、非盲検試験。 比較する対象は 試験群:ペムブロリズマブ+エパカドスタット併用療法 対照群:スニチニブまたはパゾパニブ で主要評価項目は無増悪生存期間、副次的評価項目は全生存期間、奏効率、奏功期間などで評価します。

疾患解説:腎臓がん

腎臓がんは、腎臓の腎実質と呼ばれる細胞ががん化した悪性腫瘍です。腎がん研究会の2002年の調査によると、人口10万人に対して男性8.2人、女性3.7人と男性に多く、年々増加傾向です。50歳代から増え始め、70歳代まで高齢になるほど罹患数は多くなります。 腎臓がんの発生原因は、喫煙と肥満といわれており、腎臓がんの予防では、禁煙と肥満にならないようなバランスのいい食事や運動が効果的だとの日本人を対象とした研究報告もあります。 腎臓がんは、あまり自覚症状がなく、約70%の人が症状のない段階で発見されています。自覚症状として多く見られるのが、血尿、背中や腰の痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、体重減少、吐き気、便秘、腹痛などさまざまです。 腎臓がんは、がんの組織の違いでいくつかのタイプがり、混在していることもあります。最も多くみられる組織型は「淡明細胞型腎細胞がん」で、全体の約70~85%を占めます。そのほかに、多房嚢胞性腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がん、紡錘細胞がん、集合管がんなどがあります。

腎臓がんの組織型分類

淡明細胞型腎細胞がん
多房嚢胞性腎細胞がん
乳頭状腎細胞がん
嫌色素性腎細胞がん
集合管がん
腎髄質がん
Xp11.2転座型腎細胞がん
神経芽腫随伴腎細胞がん
粘液管状紡錘細胞がん
紡錘細胞がん
腎細胞がん、分類不能型

腎癌取扱い規約(第4版)より

腎臓がん進行度

T1a 腎細胞がんの直径が4cm以下で腎臓にとどまる
T1b 腎細胞がんの直径が4cmを超え、7cm以下で腎臓にとどまる
T2a 腎細胞がんの直径が7cmを超え、10cm以下で腎臓にとどまる
T2b 腎細胞がんの直径が10cmを超えて腎臓にとどまる
T3a 腎細胞がんが腎静脈または周囲の脂肪組織に及ぶがゲロタ筋膜※を超えない
T3b 腎細胞がんが横隔膜より下の大静脈内に広がっている
T3c 腎細胞がんが横隔膜より上の大静脈内に広がる、または大静脈壁まで及ぶ
T4 腎細胞がんがゲロタ筋膜※を超えて広がる(同じ側の副腎まで及ぶ場合を含む)

※ゲロタ筋膜:腎臓を覆っている一番外側の膜 出典:日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会,編:泌尿器科・病理・放射線科 腎癌取扱い規約第4版.2011年,金原出版より作成

治験薬:ペムブロリズマブ

ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:エパカドスタット

エパカドスタットは、IDO1阻害薬という種類のお薬です。 インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)は、免疫反応を調節する主要な免疫抑制酵素です。免疫監視機構を回避することにより、腫瘍の増殖を促します。エパカドスタットはこのIDO1を阻害する開発中のお薬で、強力かつ選択的にIDO1を阻害します。 これまでに、切除不能または転移性悪性黒色腫や非小細胞肺がん、腎細胞がん、扁平上皮頭頸部がん、膀胱がん患者さんを対象に、エパカドスタットと免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の臨床試験で、その薬効が探索的に検討されています。また、エパカドスタットと抗CTLA-4抗体「イピリムマブ」または抗PD-1抗体「ペムブロリズマブ」や「ニボルマブ」との併用療法では、免疫チェックポイント阻害剤単独療法と比較して、奏効率の改善が認められました。

対照薬:スニチニブ

スニチニブは、血管新生に関与する血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)、腫瘍増殖に関与する血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体(KIT)、マクロファージコロニー刺激因子受容体(CSF-1R)、FMS様チロシンキナーゼ-3受容体(FLT-3)、ret前がん遺伝子(RET)などの受容体を標的にした分子標的薬です。 さまざまな受容体をマルチターゲットに阻害して、血管新生、腫瘍増殖などを抑制します。

対照薬:パゾパニブ

パゾパニブは、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子受容体(c-kit)の3つの受容体の作用を阻害するマルチチロシンキナーゼ阻害薬です。 この3つの受容体を阻害することで、がん細胞の増殖に関わる血管新生を阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。 腎臓がんや血管肉腫、平滑筋肉腫などの血管新生が著明ながんに対して有効なお薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 組織学的に淡明細胞型がある局所進行性または転移性腎細胞がんと診断されステージ4の患者
  • 転移性腎細胞がんに対し全身性の治療が行われていない患者
  • 測定可能病変がある患者。放射線照射を受けた領域の腫瘍病変は、当該病変において進行が認められる場合に測定可能病変とみなす
  • 腫瘍組織の保存検体、または過去に放射線照射を受けていない腫瘍病変から新たに採取したコアまたは切除生検検体を提出した患者。腫瘍組織は無作為割付け前まで、かつ直近の腎細胞がんに対する全身性の治療後に得られた検体である必要がある
  • KPSの全身状態(performance status:PS)が70以上である患者
  • プロトコールに規定された、適切な臓器機能がある患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • プロトコールに記載した併用禁止薬を現在使用している患者
  • 無作為割付け前4週間以内に治験薬を含めた全身性の抗がん治療歴がある患者
  • 本治験薬またはその添加剤に対する重度の過敏症反応の既往歴がある患者
  • 過去2年以内に全身性の治療を要する活動性の自己免疫疾患がある患者
  • 過去3年以内に進行した、または全身性の治療が必要であった他の悪性腫瘍がある患者
  • 活動性の中枢神経系への転移またはがん性髄膜炎がある患者
  • 間質性肺疾患/肺臓炎を合併、もしくはステロイド投与が必要な間質性肺疾患/肺臓炎の既往がある患者
  • 治験担当医師が臨床的に重要であると判断する心電図異常がある、またはその既往がある患者
  • 無作為割付け前12か月以内に重篤な心疾患の既往歴がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称 局所進行性又は転移性腎細胞癌(mRCC)患者を対象とし、1次治療としてのMK-3475(ペムブロリズマブ)とINCB024360(epacadostat)の併用投与と標準治療(スニチニブ又はパゾパニブ)における有効性及び安全性を比較する無作為化非盲検第III相試験(KEYNOTE-679/ECHO-302試験)
試験の概要 淡明細胞型を有する局所進行性又は転移性腎細胞癌(mRCC)患者を対象とし、1次治療としてのMK-3475(ペムブロリズマブ)とINCB024360(epacadostat)の併用投与と標準治療(スニチニブ又はパゾパニブ)における有効性及び安全性を比較する mRCCに対する全身性の治療歴を有する患者は除外する
疾患名 淡明細胞型を有する局所進行性又は転移性腎細胞癌(mRCC)患者。mRCCに対する全身性の治療歴を有する患者は除外する
試験薬剤名 ペムブロリズマブ、エパカドスタット
用法・用量 投与群1:ペムブロリズマブ200mgの3週間間隔(Q3W)静脈内投与(IV)エパカドスタット100mgの1日2回(BID)経口連続投与
試験薬剤名 スニチニブ、パゾパニブ
用法・用量 投与群2:スニチニブ50mgの1日1回経口投与[6週間1コース(4週間内服+2週間休薬)]又はパゾパニブ800mgの1日1回経口連続投与
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン 無作為化、実薬対照、並行群間、非盲検試験
目標症例数 630
適格基準
  • 肉腫様所見の有無を問わず、組織学的に淡明細胞型を有する局所進行性又は転移性RCCと診断された[米国対がん合同委員会(AJCC)分類でStage IVの]患者
  • mRCCに対し全身性の治療が施行されていない患者
  • 治験実施医療機関による評価で、RECIST 1.1に基づく測定可能病変を有する患者。放射線照射を受けた領域の腫瘍病変は、当該病変において進行が認められる場合に測定可能病変とみなす
  • 腫瘍組織の保存検体、又は過去に放射線照射を受けていない腫瘍病変から新たに採取したコア又は切除生検検体を提出した患者。腫瘍組織は無作為割付け前まで、かつ直近のRCCに対する全身性の治療後に得られた検体である必要がある
  • 無作為割付け前14日以内のKarnofsky performance status(KPS)が70以上である患者
  • プロトコールに規定された、適切な臓器機能を有する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • プロトコールに記載した併用禁止薬を現在使用している患者
  • 無作為割付け前4週間以内に治験薬を含めた全身性の抗がん治療歴を有する患者
  • 本治験薬又はその添加剤に対する重度の過敏症反応(例:全身性皮疹/紅斑、低血圧、気管支痙攣、血管浮腫、アナフィラキシー)の既往歴を有する患者
  • 過去2年以内に全身性の治療を要する活動性の自己免疫疾患を有する患者
  • 過去3年以内に進行した、又は全身性の治療が必要であった他の悪性腫瘍を有する患者
  • 活動性の中枢神経系(CNS)への転移又は癌性髄膜炎を有する患者 間質性肺疾患/肺臓炎を合併、若しくはステロイド投与が必要な(非感染性の)間質性肺疾患/肺臓炎の既往を有する患者
  • 治験担当医師が臨床的に重要であると判断する心電図異常がある、又はその既往を有する患者
  • 無作為割付け前12ヵ月以内に重篤な心疾患の既往歴がある患者
主要な評価項目 無増悪生存期間(PFS)
主要な評価方法 MK-3475+INCB024360併用投与と標準治療(SOC)(スニチニブ又はパゾパニブ)の無増悪生存期間(PFS)を比較する [ 最大30ヵ月]
副次的な評価項目 全生存期間(OS)
副次的な評価方法 MK-3475+INCB024360併用投与とSOCの全生存期間(OS)を比較する [ 最大60ヵ月]
副次的な評価項目 奏効率(ORR)
副次的な評価方法 MK-3475+INCB024360併用投与とSOCの奏効率(ORR)を比較する [ 最大36ヵ月]
副次的な評価項目 奏効期間(DOR)
副次的な評価方法 MK-3475+NCB024360併用投与とSOCの奏効期間(DOR)を比較する [ 最大36ヵ月]
副次的な評価項目 安全性及び忍容性
副次的な評価方法 有害事象を発現した患者数 有害事象により治験薬投与を中止した患者数 [ 最大39ヵ月]
副次的な評価項目 健康に関する生活の質(HRQOL)評価のベースラインからの変化
副次的な評価方法 MK-3475+INCB024360併用投与とSOCにおける、健康に関する生活の質(HRQOL)評価のベースラインからの変化を比較する Functional Assessment of Cancer Therapy Kidney Symptom Index–15(FKSI-15)及びその疾患関連症状サブセット[Functional Assessment of Cancer Therapy Kidney Symptom Index– Disease-related Symptoms(FKSI-DRS)]に基づくベースラインから悪化までの期間(TTD)[ 最大36ヵ月] European Organization for the Research and Treatment of Cancer(EORTC)Quality of Life Questionnaire Core 30(QLQ-C30)の全般的な健康状態/生活の質(QOL)評価尺度により測定した経時的スコアのベースラインから42週目にかけての変化[ 最大42週間]
予定試験期間 2017年12月1日~2023年5月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより