再発リスクが高い腎細胞がんに対するアテゾリズマブの治験

治験名

腎摘除後の再発リスクが高い腎細胞癌患者を対象とした術後補助療法としてのアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)を評価する第3相多施設共同ランダム化プラセボ対照二重盲検試験

治験概要:

腎臓摘除後の再発リスクが高い腎細胞がんに対する治験。淡明細胞型または肉腫様型の細胞成分が含まれ、かつ過去に術前または術後補助療法を受けていない患者さんが対象です。
アテゾリズマブとプラセボを比較して有効性と安全性を評価する臨床試験です。
登録予定数は、764人。
フェーズは、3相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同ランダム化二重盲検試験。
比較する対象は
試験群:アテゾリズマブ
対照群:プラセボ
有効性、安全性、薬物動態などで評価します。

疾患解説:腎臓がん

腎臓がんは、腎臓の腎実質と呼ばれる細胞ががん化した悪性腫瘍です。腎癌研究会の2002年の調査によると、人口10万人に対して男性8.2人、女性3.7人と男性に多く、年々増加傾向です。50歳代から増え始め、70歳代まで高齢になるほど罹患数は多くなります。
腎臓がんの発生原因は、喫煙と肥満といわれており、腎臓がんの予防では、禁煙と肥満にならないようなバランスのいい食事や運動が効果的だとの日本人を対象とした研究報告もあります。
腎臓がんは、あまり自覚症状がなく、約70%の人が症状のない段階で発見されています。自覚症状として多く見られるのが、血尿、背中や腰の痛み、腹部のしこり、足のむくみ、食欲不振、体重減少、吐き気、便秘、腹痛などさまざまです。
腎臓がんは、がんの組織の違いでいくつかのタイプがり、混在していることもあります。最も多くみられる組織型は「淡明細胞型腎細胞がん」で、全体の約70~85%を占めます。そのほかに、多房嚢胞性腎細胞がん、乳頭状腎細胞がん、嫌色素性腎細胞がん、紡錘細胞がん、集合管がんなどがあります。
腎臓がんの組織型は、治療選択の判断材料の1つで、組織型の違いによって病気の進行や予後が異なります。

腎臓がん進行度

T1a腎細胞がんの直径が4cm以下で腎臓にとどまる
T1b腎細胞がんの直径が4cmを超え、7cm以下で腎臓にとどまる
T2a腎細胞がんの直径が7cmを超え、10cm以下で腎臓にとどまる
T2b腎細胞がんの直径が10cmを超えて腎臓にとどまる
T3a腎細胞がんが腎静脈または周囲の脂肪組織に及ぶがゲロタ筋膜※を超えない
T3b腎細胞がんが横隔膜より下の大静脈内に広がっている
T3c腎細胞がんが横隔膜より上の大静脈内に広がる、または大静脈壁まで及ぶ
T4腎細胞がんがゲロタ筋膜※を超えて広がる(同じ側の副腎まで及ぶ場合を含む)

※ゲロタ筋膜:腎臓を覆っている一番外側の膜
出典:日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会,編:泌尿器科・病理・放射線科 腎癌取扱い規約第4版.2011年,金原出版より作成

腎臓がんの組織型分類

淡明細胞型腎細胞がん
多房嚢胞性腎細胞がん
乳頭状腎細胞がん
嫌色素性腎細胞がん
集合管がん
腎髄質がん
Xp11.2転座型腎細胞がん
神経芽腫随伴腎細胞がん
粘液管状紡錘細胞がん
紡錘細胞がん
腎細胞がん、分類不能型

腎癌取扱い規約(第4版)より

治験薬:アテゾリズマブ

アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 全身状態(Performance Status:PS)が1以下
  • 淡明細胞型または肉腫様型の細胞成分が含まれる腎細胞がんと病理学的に確定診断され、かつ過去に術前または術後補助療法を受けていない
  • 残存病変および転移巣が認められない
  • 脳転移が認められない
  • 腎摘除または転移巣切除後、ランダム化前12週間以内に手術から完全に回復している
  • 十分な血液学的機能および末端器官機能がある患者
  • 妊娠可能な女性の場合は以下の条件をみたすこと。治験薬投与期間中および最終投与後少なくとも5か月間は、禁欲または年間避妊失敗率が1%未満である避妊方法を使用することに同意する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • フォン・ヒッペル・リンドウ病などの遺伝性腎細胞がんによる同時性両側性腫瘍がある患者
  • 治験薬投与開始前3週間以内に承認済みの抗癌治療を受けた患者
  • 治験登録前の28日間または治験薬の半減期の5倍のいずれか長い方の期間内に、治療を目的として他の治験薬の投与を受けたか、別の治験に参加した患者
  • 中枢神経系転移または軟膜髄膜病変がある患者
  • サイクル1、1日目の前5年以内に腎細胞がん以外の悪性腫瘍があった患者
  • 推定余命が24週間未満の患者
  • 妊娠中または授乳中の女性、および治験期間中に妊娠する予定のある女性
  • キメラ抗体、ヒト化抗体または融合蛋白質に対する高度のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、その他の過敏症反応の既往歴がある患者
  • チャイニーズハムスター卵巣細胞由来のバイオ医薬品あるいはアテゾリズマブ製剤の成分に対する過敏症またはアレルギーがある患者
  • 自己免疫疾患の既往歴がある患者
  • 同種幹細胞移植または臓器移植の前歴がある患者
  • 特発性肺線維症、薬剤誘発性肺臓炎、器質化肺炎の既往歴、またはスクリーニング時の胸部CTスキャンによる活動性肺臓炎の所見がある患者
  • 重大な心血管疾患
  • HIV陽性、活動性B型肝炎ウイルス感染またはC型肝炎がある患者、活動性結核の患者
  • 治験薬投与開始前4週間以内の重度の感染症
  • 治験薬投与開始前4週間以内に弱毒生ワクチンを投与された患者
  • CD137アゴニスト、抗CTLA-4/抗PD-1/抗PD-L1抗体薬、または経路標的薬の投与歴がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称腎摘除後の再発リスクが高い腎細胞癌患者を対象とした術後補助療法としてのATEZOLIZUMAB(抗PD-L1抗体)を評価する第III相多施設共同ランダム化プラセボ対照二重盲検試験
試験の概要腎摘除後の再発リスクが高い腎細胞癌患者を対象とした、本剤投与による術後補助療法の有効性と安全性を、プラセボ群と比較する国際共同第III相二重盲検ランダム化試験である
疾患名腎細胞癌
試験薬剤名アテゾリズマブ
用法・用量1200mgを3週間隔で点滴静注
対照薬剤名プラセボ
用法・用量
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン多施設共同ランダム化二重盲検試験
目標症例数764
適格基準
  • 年齢が18歳以上であること
  • ECOG performance statusが1以下
  • 淡明細胞型又は肉腫様型の細胞成分が含まれるRCCと病理学的に確定診断され、かつ過去に術前又は術後補助療法を受けていない
  • 残存病変及び転移巣が認められない
  • 脳転移が認められない
  • 腎摘除又は転移巣切除後、ランダム化前12週間以内に手術から完全に回復している
  • 十分な血液学的機能及び末端器官機能を有する患者
  • 妊娠可能な女性の場合は以下の条件をみたすこと。治験薬投与期間中及び最終投与後少なくとも5カ月間は、禁欲(異性間性交を避ける)又は年間避妊失敗率が1%未満である避妊方法を使用することに同意する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • von Hippel-Lindauなどの遺伝性RCCによる同時性両側性腫瘍を有する患者
  • 治験薬投与開始前3週間以内に承認済みの抗癌治療(例:化学療法、ホルモン療法)を受けた患者
  • 治験登録前の28日間又は治験薬の半減期の5倍のいずれか長い方の期間内に、治療を目的として他の治験薬の投与を受けたか、別の治験に参加した患者
  • CNS転移又は軟膜髄膜病変がある患者
  • サイクル1、1日目の前5年以内にRCC以外の悪性腫瘍を有していた患者
  • 推定余命が24週間未満の患者
  • 妊娠中又は授乳中の女性、及び治験期間中に妊娠する予定のある女性
  • キメラ抗体、ヒト化抗体又は融合蛋白質に対する高度のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、その他の過敏症反応の既往歴がある患者
  • チャイニーズハムスター卵巣細胞由来のバイオ医薬品あるいはatezolizumab製剤の成分に対する過敏症又はアレルギーがある患者
  • 自己免疫疾患の既往歴がある患者
  • 同種幹細胞移植又は臓器移植の前歴がある患者
  • 特発性肺線維症(肺臓炎を含む)、薬剤誘発性肺臓炎、器質化肺炎(閉塞性細気管支炎、特発性器質化肺炎)の既往歴、又はスクリーニング時の胸部CTスキャンによる活動性肺臓炎の所見がある患者
  • 重大な心血管疾患
  • HIV陽性、活動性B型肝炎ウイルス感染又はC型肝炎を有する患者、活動性結核の患者
  • 治験薬投与開始前4週間以内の重度の感染症
  • 治験薬投与開始前4週間以内に弱毒生ワクチンを投与された患者
  • CD137アゴニスト、抗CTLA-4/抗PD-1/抗PD-L1抗体薬、又は経路標的薬の投与歴がある患者
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法独立評価機関
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
薬物動態/pharmacokinetics
ファーマコゲノミクス/pharmacogenomics
副次的な評価方法 RECIST
予定試験期間2016/12/01~2024/04/01

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより