切除不能の局所進行性または転移性の胃がんまたは食道胃接合部がんに対するチスレリズマブの治験

治験名

切除不能の局所進行性または転移性の胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんの患者を対象とした一次治療としてのtislelizumab(BGB-A317)+白金製剤およびフルオロピリミジンの有効性と安全性をプラセボ+白金製剤およびフルオロピリミジンと比較する無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験

治験概要:

切除不能の局所進行性または転移性の胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんに対する治験。全身療法の治療歴がない患者さんが対象です。
チスレリズマブとプラセボを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、720人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、二重盲検。
試験群:チスレリズマブ
対照群:プラセボ
無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、奏効期間、有害事象の発現率および重症度などで評価します。

疾患解説:胃がん、食道胃接合部がん

国立がん研究センターのがん統計の2014年の全国推計値によると、胃がんに罹った人は、男性89094人、女性40145人、合計129239人で女性に比べて男性が2倍以上多くなっています。50代で徐々に増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少しますが、女性は、80代からさらに増加していきます。
胃がんのリスク要因は、喫煙、塩分の多い食事や野菜などの不足、生活習慣などいくつもあるといわれていますが、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染がリスクを高めるといわれています。
早期の胃がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれて起こる、胃痛、胸やけ、吐き気、食欲不振などが代表的な症状です。こうした気になる症状があれば医療施設で検査を受けてください。
胃がん検診は、対策型検診と任意型検診があります。対策型検診は、会社などで加入している健康保険組合や自治体が定期的に行うもので、任意型検診は、個人の希望で行う検診です。いずれの検診でも、有効性評価に基づくがん検診ガイドラインでは、50歳以上を対象として、問診と胃部X線検査(当分は1年に1回)か胃内視鏡検査を2年に1回受けることが推奨されています。
胃は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層からできています。多くの胃がんは一番内側にある粘膜層から発生し、次第に胃壁の外側に向かって進行していきます。胃がんのステージ分類は、がんが5つの層のどこまで達しているかという深達度、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移の3つの要素で決定されます。
早期胃がんの治療では、体への負担が外科的手術より少ない内視鏡を使った手術も可能な場合もあります。大まかにいうと、ステージII程度の進行度なら「容易に手術が可能」と判断し、ステージIII程度の進行度なら「ギリギリ切除可能」と判断され、ステージIVに至ると「根治切除ができない」となります。ただし、ステージだけでは治療方針は決まりません。
手術と薬物療法を組み合わせることで、従来は治癒が難しかった胃がんも治療の対象となっています。今後、新しい薬剤と手術を組み合わせた臨床試験が進むことで、胃がんの手術療法の治療成績は、さらに向上していくと考えられています。
食道胃接合部がんは、食道と胃のつなぎ目の食道胃接合部の上下2cmの範囲にできるがんです。リンパ節転移の広がりが、がんのできた場所によるため、食道胃接合部がんという分類がされるようになってきています。

胃がんの深達度
胃がんの深達度

胃がんの治療方針の基本の考え方
胃がんの治療方針の基本の考え方

治験薬:チスレリズマブ

チスレリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん
  • 同意説明文書に自発的に署名した時点で成人
  • 切除不能な局所進行性または転移性胃がん/食道胃接合部がんに対して全身療法の治療歴がない
  • 測定可能な病変が1つ以上ある
  • 全身状態(Performance Status:PS)が1以下
  • 十分な臓器機能がある
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 扁平上皮または未分化もしくはその他組織型のGCがある患者
  • 活動性の軟膜・髄膜疾患またはコントロール不良の脳転移がある
  • 活動性の自己免疫疾患または再燃の可能性がある自己免疫疾患の既往
  • 本試験で研究対象となっている特定のがんと、治癒した局所再発がんを除く、無作為割付け前2年以内のあらゆる活動性悪性腫瘍
  • 無作為割付け前7日以内の頻繁なドレナージが必要なコントロール不能な胸水、心嚢液、または腹水
  • 無作為割付け前3か月以内に消化管から臨床的に重大な出血がある
  • 無作為割付け前6か月以内に消化管穿孔および/または瘻孔の既往がある
  • 臨床的に重大な腸閉塞がある
  • HER2陽性の胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんと診断されている
  • 上記以外、プロトコル規定の除外基準が該当する可能性がある

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称切除不能の局所進行性又は転移性の胃腺癌又は食道胃接合部腺癌の患者を対象とした一次治療としてのtislelizumab(BGB-A317)+白金製剤及びフルオロピリミジンの有効性と安全性をプラセボ+白金製剤及びフルオロピリミジンと比較する無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験
試験の概要本試験は、切除不能な局所進行性又は転移性の胃腺癌又は食道胃接合部(GEJ)腺癌の患者の一次治療としてのtislelizumab又はプラセボ+化学療法の有効性及び安全性を比較する無作為化(1:1)二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験である
疾患名切除不能の局所進行性又は転移性の胃腺癌又は食道胃接合部腺癌
試験薬剤名Tislelizumab(BGB-A317)
用法・用量BGB-A317として、1回200mgを3週間間隔で点滴静注する
対照薬剤名プラセボ
用法・用量
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為化、二重盲検
目標症例数720
適格基準
  • 胃腺癌又はGEJ腺癌の組織学的な確定診断を受け、同意説明文書に自発的に署名した時点で成人で、切除不能な局所進行性又は転移性胃癌/GEJ癌に対して全身療法の治療歴がない被験者。全ての被験者は、RECISTv1.1に基づいた測定可能な病変が1つ以上、米国東海岸癌臨床試験グループによるパフォーマンスステータス(ECOG PS)スコアが1以下、かつ十分な臓器機能を有すること
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 扁平上皮又は未分化若しくはその他組織型のGCを有する患者
  • 活動性の軟膜・髄膜疾患又はコントロール不良の脳転移がある
  • 活動性の自己免疫疾患又は再燃の可能性がある自己免疫疾患の既往
  • 本試験で研究対象となっている特定の癌と、治癒した局所再発癌(切除された皮膚の基底細胞癌や扁平上皮癌、表在性膀胱癌、子宮頸部又は乳房上皮内癌等)を除く、無作為割付け前2年以内のあらゆる活動性悪性腫瘍
  • 無作為割付け前7日以内の頻繁なドレナージが必要なコントロール不能な胸水、心嚢液、又は腹水(体液の細胞診は認められる)
  • 無作為割付け前3ヵ月以内に消化管(GI)から臨床的に重大な出血がある
  • 無作為割付け前6ヵ月以内にGI穿孔及び/又は瘻孔の既往がある
  • 臨床的に重大な腸閉塞がある
  • HER2陽性の胃腺癌又はGEJ腺癌と診断されている
  • 上記以外、プロトコル規定の除外基準が該当する可能性がある
主要な評価項目安全性/efficacy
検証的/confirmatory
主要な評価方法BIRCによって評価されたPFS−無作為割付け日から、RECISTv1.1に従ってBIRCによって客観的な腫瘍進行が最初に判定される日又は死亡のいずれか早い時点までの期間と定義
OS−無作為割付け日から死亡日(理由は問わず)までの期間と定義
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
副次的な評価方法BIRCによって評価されたORR−RECISTv1.1に従って、最良総合効果(BOR)が完全奏効又は部分奏効と判定された被験者の割合と定義
BIRCによって評価された奏効期間−RECISTv1.1に従って、最初に客観的奏効と判定されてから最初に進行と判定される又は死亡のいずれか早い時点までの期間と定義
EORTC QLQ-STO22スコアのベースラインからの変化、EORTC QLQ-C30スコア及びEQ-5D-5Lスコアのベースラインからの変化
National Cancer Institute Common Terminology. Criteria for Adverse Events(NCI-CTCAE)v5.0に基づく有害事象の発現率及び重症度
予定試験期間2018年11月13日~2022年11月13日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより