未治療進行胃がんおよび食道胃接合部がんに対するベマリツズマブの治験

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治験名

FIGHT:未治療進行胃がんおよび食道胃接合部がん患者を対象としてFPA144とmFOLFOX6を併用した、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第3相臨床試験

治験概要:

未治療進行胃がんおよび食道胃接合部がんに対する治験。 FGFR2b過剰発現が認められたもしくは FGFR2遺伝子増幅が認められた患者さんが対象です。
ベマリツズマブ+mFOLFOX6とプラセボ+mFOLFOX6を比較して、安全性と有効性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、548人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、二重盲検、プラセボ対照。
試験群:ベマリツズマブ+mFOLFOX6
対照群:プラセボ+mFOLFOX6
全生存期間 、無増悪生存期間、客観的奏効率、有害事象の発現頻度などで評価します。

疾患解説:胃がん、食道胃接合部がん

国立がん研究センターのがん統計の2014年の全国推計値によると、胃がんに罹った人は、男性89094人、女性40145人、合計129239人で女性に比べて男性が2倍以上多くなっています。50代で徐々に増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少しますが、女性は、80代からさらに増加していきます。
胃がんのリスク要因は、喫煙、塩分の多い食事や野菜などの不足、生活習慣などいくつもあるといわれていますが、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染がリスクを高めるといわれています。
早期の胃がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれて起こる、胃痛、胸やけ、吐き気、食欲不振などが代表的な症状です。こうした気になる症状があれば医療施設で検査を受けてください。
胃がん検診は、対策型検診と任意型検診があります。対策型検診は、会社などで加入している健康保険組合や自治体が定期的に行うもので、任意型検診は、個人の希望で行う検診です。いずれの検診でも、有効性評価に基づくがん検診ガイドラインでは、50歳以上を対象として、問診と胃部X線検査(当分は1年に1回)か胃内視鏡検査を2年に1回受けることが推奨されています。
胃は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層からできています。多くの胃がんは一番内側にある粘膜層から発生し、次第に胃壁の外側に向かって進行していきます。胃がんのステージ分類は、がんが5つの層のどこまで達しているかという深達度、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移の3つの要素で決定されます。
早期胃がんの治療では、体への負担が外科的手術より少ない内視鏡を使った手術も可能な場合もあります。大まかにいうと、ステージII程度の進行度なら「容易に手術が可能」と判断し、ステージIII程度の進行度なら「ギリギリ切除可能」と判断され、ステージIVに至ると「根治切除ができない」となります。ただし、ステージだけでは治療方針は決まりません。 手術と薬物療法を組み合わせることで、従来は治癒が難しかった胃がんも治療の対象となっています。今後、新しい薬剤と手術を組み合わせた臨床試験が進むことで、胃がんの手術療法の治療成績は、さらに向上していくと考えられています。
食道胃接合部がんは、食道と胃のつなぎ目の食道胃接合部の上下2cmの範囲にできるがんです。リンパ節転移の広がりが、がんのできた場所によるため、食道胃接合部がんという分類がされるようになってきています。

胃がんの深達度
胃がんの深達度

胃がんの治療方針の基本の考え方
胃がんの治療方針の基本の考え方

治験薬:ベマリツズマブ

ベマリツズマブは、選択的にFGF受容体2bを阻害する分子標的薬です。
FGFは、血管新生など成長因子の一種で、細胞の増殖や分化において重要な役割を担っています。
ベマリツズマブは、FGF7、10、22のFGFR2bへの結合を阻害し、抗体依存性細胞障害活性を高めるように設計されています。

治験薬:フルオロウラシル

フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。

治験薬:ロイコボリン

ロイコボリンは、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する薬です。
フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
ロイコボリンは、体内でフルオロウラシルの代謝活性物質と強固な複合体を作り、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強します。

治験薬:オキサリプラチン

ベオキサリプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。オキサリプラチンは、第2世代の白金製剤にさらに改変が行われ、新たな適応を獲得した第3世代の白金製剤です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 組織学的に診断された胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんである
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0~1
  • 適切な血液学的機能、肝および腎機能がある
  • 測定可能または測定不能病変がある
  • FGFR2b過剰発現が認められた、および/またはFGFR2遺伝子増幅が認められた
  • mFOLFOX6化学療法の投与対象と判断されている
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 未治療または症候性中枢神経系転移がある
  • 臨床的に重大な心疾患がある
  • グレード2以上の末梢性感覚ニューロパチー
  • 全身療法を必要とする活動性感染症
  • ヒト免疫不全ウイルス感染またはエイズ関連疾患、あるいは活動性または慢性B型肝炎/C型肝炎
  • FGF-FGFR経路の選択的阻害薬による治療歴がある
  • 角膜潰瘍の発現リスクの増加をもたらす可能性のある他の角膜異常がある
  • HER2陽性である
  • 妊娠中または授乳中の女性

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。

試験概要詳細

試験の名称FIGHT: 未治療進行胃癌及び食道胃接合部癌患者を対象として FPA144 と mFOLFOX6 を併用した、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第III相臨床試験 (第I相用量設定後の第III相)
試験の概要本試験はFGFR2で選択された胃癌または食道胃接合部癌患者(FGFR2b過剰発現を示す前向きIHC解析及び/またはctDNA血液検査によるFGFR2遺伝子増幅により判定)を対象にbemarituzumab(FPA144)+mFOLFOX6とプラセボ+mFOLFOX6の有効性を比較評価する無作為化、二重盲検、プラセボ対照の国際共同試験である
疾患名胃癌及び食道胃接合部癌
試験薬剤名bemarituzumab(FPA144)
用法・用量bemarituzumab(FPA144)+mFOLFOX6:bemarituzumab(FPA144)15mg/kgを静注し、その点滴静注完了後にmFOLFOX6投与する。*サイクル1ではDay8にbemarituzumab(FPA144)7.5mg/kgの静注を1回行う。投与を2週ごとに繰り返す
対照薬剤名bemarituzumab placebo
用法・用量Placebo+mFOLFOX6:プラセボを静注し、その点滴静注完了後にmFOLFOX6を投与する。*サイクル1ではDay8にプラセボの静注を1回行う。投与を2週ごとに繰り返す
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為化、二重盲検、プラセボ対照
目標症例数548
適格基準
  • 組織学的に診断された胃腺癌または食道胃接合部腺癌である(根治療法を受けることができない)
  • Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG)パフォーマンスステータスが0~1である
  • 適切な血液学的機能、肝及び腎機能を有する。RECISTv1.1を用いて評価可能な、測定可能または測定不能病変を有する
  • 中央測定機関によるIHC検査でFGFR2b過剰発現が認められた、及び/または中央測定機関によるctDNA血液検査でFGFR2遺伝子増幅が認められた
  • mFOLFOX6化学療法の投与対象と判断されている
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 未治療または症候性中枢神経系(CNS)転移を有する
  • 臨床的に重大な心疾患を有する
  • CTCAEグレード2以上の末梢性感覚ニューロパチー
  • 全身療法を必要とする活動性感染症
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染またはエイズ(AIDS)関連疾患、あるいは活動性または慢性B型肝炎/C型肝炎
  • FGF-FGFR経路の選択的阻害薬による治療歴を有する
  • 角膜潰瘍の発現リスクの増加をもたらす可能性のある他の角膜異常を有する
  • HER2陽性である
  • 妊娠中または授乳中の女性
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法全生存期間(OS)[期間:約46ヶ月まで]。組入れから何らかの原因による死亡まで
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
副次的な評価方法無増悪生存期間(PFS)[期間:約46ヶ月まで]。組入れから、a.疾患進行、又は、b.何らかの原因による死亡まで
客観的奏効率(ORR)[期間:約46ヶ月まで]。RECISTv1.1に準じた腫瘍病変の評価に基づく、部分奏効又は完全奏効であった患者の割合
治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現頻度(有害事象共通用語規準(CTCAE)による)[期間:試験治療の完了まで、平均1年]。治療下で発現した有害事象(TEAE)は、MedDRA PTにより分類し、CTCAEを用いて評価
予定試験期間2019年6月4日~2024年7月31日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより