HER2陽性胃がん・食道胃接合部がんに対するペムブロリズマブの治験
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治験名
KEYNOTE-811
HER2陽性進行性胃腺がんまたは食道胃接合部腺がん患者を対象とした1次治療としてのトラスツズマブ+化学療法+ペムブロリズマブ療法をトラスツズマブ+化学療法+プラセボ療法と比較する二重盲検無作為化第3相試験
治験概要:
HER2陽性の進行性胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんの治験。
1次治療として、トラスツズマブ+化学療法+ペムブロリズマブ療法とトラスツズマブ+化学療法+プラセボを比較して評価する第3相試験です。
登録予定数は732人。
試験デザインは、無作為化、プラセボ対照、多施設共同、二重盲検、第3相試験。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
治験群:ペムブロリズマブ+化学療法+トラスツズマブ
対照群:プラセボ+化学療法+トラスツズマブ
で主要評価項目は無増悪生存期間、全生存期間、副次的な評価項目は、客観的奏効、完全奏効または部分奏効、奏効期間、全性および忍容性などで評価します。
疾患解説:胃がん・食道胃接合部がん
国立がん研究センターのがん統計の2014年の全国推計値によると、胃がんに罹った人は、男性89094人、女性40145人、合計129239人で女性に比べて男性が2倍以上多くなっています。50代で徐々に増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少しますが、女性は、80代からさらに増加していきます。
胃がんのリスク要因は、喫煙、塩分の多い食事や野菜などの不足、生活習慣などいくつもあるといわれていますが、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染がリスクを高めるといわれています。
早期の胃がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれて起こる、胃痛、胸やけ、吐き気、食欲不振などが代表的な症状です。こうした気になる症状があれば医療施設で検査を受けてください。
胃がん検診は、対策型検診と任意型検診があります。対策型検診は、会社などで加入している健康保険組合や自治体が定期的に行うもので、任意型検診は、個人の希望で行う検診です。いずれの検診でも、有効性評価に基づくがん検診ガイドラインでは、50歳以上を対象として、問診と胃部X線検査(当分は1年に1回)か胃内視鏡検査を2年に1回受けることが推奨されています。
胃は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層からできています。多くの胃がんは一番内側にある粘膜層から発生し、次第に胃壁の外側に向かって進行していきます。胃がんのステージ分類は、がんが5つの層のどこまで達しているかという深達度、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移の3つの要素で決定されます。
早期胃がんの治療では、体への負担が外科的手術より少ない内視鏡を使った手術も可能な場合もあります。大まかにいうと、ステージII程度の進行度なら「容易に手術が可能」と判断し、ステージIII程度の進行度なら「ギリギリ切除可能」と判断され、ステージIVに至ると「根治切除ができない」となります。ただし、ステージだけでは治療方針は決まりません。
手術と薬物療法を組み合わせることで、従来は治癒が難しかった胃がんも治療の対象となっています。今後、新しい薬剤と手術を組み合わせた臨床試験が進むことで、胃がんの手術療法の治療成績は、さらに向上していくと考えられています。
食道胃接合部がんは、食道と胃のつなぎ目の食道胃接合部の上下2cmの範囲にできるがんです。リンパ節転移の広がりが、がんのできた場所によるため、食道胃接合部がんという分類がされるようになってきています。
治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:トラスツズマブ
トラスツズマブは、上皮成長因子受容体(EGFR)を含むEGFRと似た構造の物質(ErbBファミリー/HERファミリー)のうちHER2(ErbB2)を標的とする分子標的薬です。
HERファミリーは、EGFR(ErbB1/HER1)、HER2(ErbB2)、HER3(ErbB3)、HER4(ErbB4)に4つに分類されます。
HERファミリーは、それぞれ同じHER同士で二量体を形成したり、別のHERで二量体を形成することで増殖シグナルを活性化します。このとき、構成される組み合わせにより、シグナル活性の強度が異なり、HER2とHER3で構成された二量体がもっともシグナル活性の強度が高くなります。
トラスツズマブは、HER2のドメインIVという部位に選択的に結合することで、HER2による細胞増殖シグナルのみを阻害します。この阻害により、がん細胞増殖のシグナルを抑制したり、マクロファージやNK細胞といった免疫細胞を呼び寄せ、がん細胞を攻撃する作用などで抗腫瘍効果を発揮します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | HER2陽性進行性胃腺癌又は食道胃接合部腺癌患者を対象とした1次治療としてのトラスツズマブ+化学療法+MK-3475療法をトラスツズマブ+化学療法+プラセボ療法と比較する二重盲検無作為化第III相試験(KEYNOTE-811) |
試験の概要 | 本治験では、HER2陽性進行性胃腺癌又は食道胃接合部腺癌患者を対象とした1次治療としてのトラスツズマブ+化学療法+MK-3475療法をトラスツズマブ+化学療法+プラセボ療法と比較する。対照群に対して被験薬群のPFS 又はOS で優越性が示された場合、試験が成功したとみなす |
疾患名 | 進行性胃腺癌又は食道胃接合部腺癌 |
試験薬剤名 | MK-3475+化学療法+トラスツズマブ |
用法・用量 | MK-3475:(200mg、IV、Q3W)。FP:シスプラチン(80mg/m2、IV、Q3W)、5-FU(800mg/m2/day、IV、Q3W)、またはCAPOX:オキサリプラチン(130mg/m2、IV、Q3W)、カペシタビン(1,000mg/m2、IV、Q3W)。トラスツズマブ:(回投与時8mg/kg、2回目以降6mg/kg、Q3W) |
対照薬剤名 | プラセボ+化学療法+トラスツズマブ |
用法・用量 | プラセボ:(200mg、IV、Q3W)。FP:シスプラチン(80mg/m2、IV、Q3W)、5-FU(800mg/m2/day、IV、Q3W)、またはCAPOX:オキサリプラチン(130mg/m2、IV、Q3W)、カペシタビン(1,000mg/m2、IV、Q3W)。トラスツズマブ:(回投与時8mg/kg、2回目以降6mg/kg、Q3W) |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、プラセボ対照、多施設共同、二重盲検、第III相試験 |
目標症例数 | 732 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 無増悪生存期間(PFS) |
主要な評価方法 | 無増悪生存期間(PFS)を治療群間で比較する |
主要な評価項目 | 全生存期間(OS) |
主要な評価方法 | 全生存期間(OS)を治療群間で比較する |
副次的な評価項目 | 客観的奏効(OR):完全奏効(CR)又は部分奏効(PR) |
副次的な評価方法 | 客観的奏効率(ORR)を治療群間で比較する |
副次的な評価項目 | 奏効期間(DOR):CR 又はPR が認められた患者に対して、最初にCR 又はPR が認められた時点から疾患進行又は原因を問わない死亡のいずれか早い方までの期間 |
副次的な評価方法 | 盲検化された中央画像判定機関がRECIST 1.1に基づき評価した奏効期間(DOR)を各治療群で評価する |
副次的な評価項目 | 安全性及び忍容性(有害事象、 有害事象による治験薬投与中止) |
副次的な評価方法 | 有害事象の発現割合により、MK-3475+トラスツズマブ+化学療法の安全性及び忍容性を評価する |
予定試験期間 | 2018年10月~2023年6月 |