術前・術後補助療法として胃・食道胃接合部がんに対するペムブロリズマブ+化学療法の治験
治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム」ページでご確認ください。
治験名
胃腺がんおよび食道胃接合部腺がん患者を対象とした術前・術後補助療法としてペムブロリズマブおよび化学療法とプラセボおよび化学療法を比較する二重盲検無作為化第3相試験
治験概要:
胃腺がん、食道胃接合部腺がん患者さんを対象とした治験。転移性病変がなく、原発部位がT3以深またはリンパ節転移陽性で未治療の局所性の患者さんが対象です。
術前・術後圃場療法として、ペムブロリズマブ+化学療法とプラセボ+化学療法を比較して、全生存期間、無イベント生存期間、完全奏功率、安全性などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、860人。
フェーズは、3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化、プラセボ対照、多施設共同、二重盲検、第III相試験。
比較する対象は
試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(シスプラチン+カペシタビンまたは5-FU)
試験群:ペムブロリズマブ+化学療法(ドセタキセル+オキサリプラチン+5-FUおよびロイコボリン)
対照群:プラセボ+化学療法
全生存期間、無イベント生存期間、完全奏功率、安全性などで評価します。
疾患解説:胃がん・食道胃接合部がん
国立がん研究センターのがん統計の2014年の全国推計値によると、胃がんに罹った人は、男性89094人、女性40145人、合計129239人で女性に比べて男性が2倍以上多くなっています。50代で徐々に増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少しますが、女性は、80代からさらに増加していきます。
胃がんのリスク要因は、喫煙、塩分の多い食事や野菜などの不足、生活習慣などいくつもあるといわれていますが、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染がリスクを高めるといわれています。
早期の胃がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれて起こる、胃痛、胸やけ、吐き気、食欲不振などが代表的な症状です。こうした気になる症状があれば医療施設で検査を受けてください。
胃がん検診は、対策型検診と任意型検診があります。対策型検診は、会社などで加入している健康保険組合や自治体が定期的に行うもので、任意型検診は、個人の希望で行う検診です。いずれの検診でも、有効性評価に基づくがん検診ガイドラインでは、50歳以上を対象として、問診と胃部X線検査(当分は1年に1回)か胃内視鏡検査を2年に1回受けることが推奨されています。
胃は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層からできています。多くの胃がんは一番内側にある粘膜層から発生し、次第に胃壁の外側に向かって進行していきます。胃がんのステージ分類は、がんが5つの層のどこまで達しているかという深達度、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移の3つの要素で決定されます。
早期胃がんの治療では、体への負担が外科的手術より少ない内視鏡を使った手術も可能な場合もあります。大まかにいうと、ステージII程度の進行度なら「容易に手術が可能」と判断し、ステージIII程度の進行度なら「ギリギリ切除可能」と判断され、ステージIVに至ると「根治切除ができない」となります。ただし、ステージだけでは治療方針は決まりません。
手術と薬物療法を組み合わせることで、従来は治癒が難しかった胃がんも治療の対象となっています。今後、新しい薬剤と手術を組み合わせた臨床試験が進むことで、胃がんの手術療法の治療成績は、さらに向上していくと考えられています。
食道胃接合部がんは、食道と胃のつなぎ目の食道胃接合部の上下2cmの範囲にできるがんです。リンパ節転移の広がりが、がんのできた場所によるため、食道胃接合部がんという分類がされるようになってきています。
胃がんの深達度

胃がんの治療方針の基本の考え方

治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:シスプラチン
シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。
治験薬:カペシタビン
カペシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、カペシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、ゲムシタビンなどがあります。
カペシタビンは、体内に吸収されたのち肝臓や腫瘍組織でフルオロウラシルに変化するプロドラッグといわれる製剤です。
治験薬:フルオロウラシル
フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
治験薬:ドセタキセル
ドセタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。ドセタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。
タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ドセタキセルはアルコールに溶かさずに使用できる薬もあります。
治験薬:オキサリプラチン
オキサリプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。オキサリプラチンは、第2世代の白金製剤にさらに改変が行われ、新たな適応を獲得した第3世代の白金製剤です。
治験薬:ロイコボリン
ロイコボリンは、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する薬です。
フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。
DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
ロイコボリンは、体内でフルオロウラシルの代謝活性物質と強固な複合体を作り、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強します。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 胃腺癌及び食道胃接合部腺癌患者を対象とした術前・術後補助療法としてMK-3475及び化学療法(XP 又はFP)とプラセボ及び化学療法(XP 又はFP)を比較する二重盲検無作為化第III相試験 |
試験の概要 | 本治験の目的:胃腺癌及び食道胃接合部腺癌患者に対する術前・術後補助療法としてのMK-3475[ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)]の有効性を評価する 仮説:MK-3475と化学療法の併用療法は、化学療法単独と比較し、全生存期間(OS)、無イベント生存期間(EFS)、病理学的完全奏効(pathCR)において優越性を示す |
疾患名 | 切除可能な局所進行性胃腺癌及び食道胃接合部腺癌 |
試験薬剤名 | MK-3475 + 化学療法(シスプラチン、カペシタビン又は5-FU) |
用法・用量 | MK-3475:(200mg、IV、Q3W)術前補助療法3コース、シスプラチン:(80mg/m2、IV、Q3W)術前補助療法3コース及び術後補助療法3コース、カペシタビン:(1000mg/m2、PO、BID)術前補助療法3コース及び術後補助療法3コース、または5-FU:(800mg/m2/day、IV、Q3W)術前補助療法3コース及び術後補助療法3コース |
試験薬剤名 | MK-3475 + 化学療法(ドセタキセル、オキサリプラチン、5-FU及びロイコボリン) |
用法・用量 | MK-3475:(200mg、IV、Q3W)術前補助療法3コース及び術後補助療法14コース、ドセタキセル50mg/m2、オキサリプラチン85mg/m2、5-FU2600mg/m2及びロイコボリン(ホリナートカルシウム)200mg/m2をQ2Wで、術前補助療法期に4回、術後補助療法期に4回投与する |
対照薬剤名 | プラセボ + 化学療法(シスプラチン、カペシタビン又は5-FU) |
用法・用量 | プラセボ:(IV、Q3W)術前補助療法3コース及び術後補助療法14コース、ドセタキセル50mg/m2、オキサリプラチン85mg/m2、5-FU2600mg/m2及びロイコボリン(ホリナートカルシウム)200mg/m2をQ2Wで、術前補助療法期に4回、術後補助療法期に4回投与する |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、プラセボ対照、多施設共同、二重盲検、第III相試験 |
目標症例数 | 860 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 1) OS を評価する 2) 無イベント生存期間(EFS)を評価する 3) 病理学的完全奏効(pathCR)率を評価する 4) 安全性及び忍容性を評価する |
主要な評価方法 | 1. OSは、無作為化から原因を問わない死亡までの期間と定義する 2. EFSはRECIST 1.1に基づき中央判定機関が評価する。EFSは、無作為化から次のいずれか先に生じたイベントまでの期間と定義 RECIST 1.1を用いた画像評価に基づく疾患進行 術後に病変が認められなかった患者のうち、CT又は生検に基づく局所又は遠隔での再発 原因を問わない死亡二次原発の悪性腫瘍はEFSのイベントとしない 3. pathCR率を、pathCRが確認された患者の割合と定義する 4.有害事象が発現した患者数及び有害事象により治験薬投与を中止した患者数 |
副次的な評価項目 | 無病生存期間(DFS)を評価する 局所又は遠隔での再発 原因を問わない死亡 |
副次的な評価方法 | DFSはRECIST 1.1に基づき中央判定機関が評価する。DFSを、術後のベースライン画像評価から次のうちのいずれか先に生じたイベントまでの期間と定義する |
予定試験期間 | 2017年10月1日~2023年7月1日 |