HER2発現胃腺がんまたは胃食道接合部腺がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの治験

治験名

進行胃腺がんまたは胃食道接合部腺がんの患者を対象としたトラスツズマブ デルクステカンの多施設共同第2相試験

治験概要:

HER2発現の進行胃腺がんまたは胃食道接合部がんに対する治験。2レジメン以上の治療で増悪が認められた患者さんが対象です。
トラスツズマブ デルクステカンと医師の選択による化学療法(イリノテカンまたはパクリタキセル)と比較して、奏効率、無増悪生存期間、全生存期間、奏功期間、病勢コントロール率、治療成功期間、安全性、薬物動態などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、220人。
フェーズは、2相臨床試験。
試験デザインは、非盲検、3コホート、多施設。
試験群:トラスツズマブ デルクステカン
対照群:イリノテカン(医師選択治療:イリノテカンまたはパクリタキセル)
対照群:パクリタキセル(医師選択治療:イリノテカンまたはパクリタキセル)
奏効率、無増悪生存期間、全生存期間、奏功期間、病勢コントロール率、治療成功期間、安全性、薬物動態などで評価します。

疾患解説:胃がん・食道胃接合部がん

国立がん研究センターのがん統計の2014年の全国推計値によると、胃がんに罹った人は、男性89094人、女性40145人、合計129239人で女性に比べて男性が2倍以上多くなっています。50代で徐々に増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少しますが、女性は、80代からさらに増加していきます。
胃がんのリスク要因は、喫煙、塩分の多い食事や野菜などの不足、生活習慣などいくつもあるといわれていますが、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染がリスクを高めるといわれています。
早期の胃がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれて起こる、胃痛、胸やけ、吐き気、食欲不振などが代表的な症状です。こうした気になる症状があれば医療施設で検査を受けてください。
胃がん検診は、対策型検診と任意型検診があります。対策型検診は、会社などで加入している健康保険組合や自治体が定期的に行うもので、任意型検診は、個人の希望で行う検診です。いずれの検診でも、有効性評価に基づくがん検診ガイドラインでは、50歳以上を対象として、問診と胃部X線検査(当分は1年に1回)か胃内視鏡検査を2年に1回受けることが推奨されています。
胃は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層からできています。多くの胃がんは一番内側にある粘膜層から発生し、次第に胃壁の外側に向かって進行していきます。胃がんのステージ分類は、がんが5つの層のどこまで達しているかという深達度、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移の3つの要素で決定されます。
早期胃がんの治療では、体への負担が外科的手術より少ない内視鏡を使った手術も可能な場合もあります。大まかにいうと、ステージII程度の進行度なら「容易に手術が可能」と判断し、ステージIII程度の進行度なら「ギリギリ切除可能」と判断され、ステージIVに至ると「根治切除ができない」となります。ただし、ステージだけでは治療方針は決まりません。
手術と薬物療法を組み合わせることで、従来は治癒が難しかった胃がんも治療の対象となっています。今後、新しい薬剤と手術を組み合わせた臨床試験が進むことで、胃がんの手術療法の治療成績は、さらに向上していくと考えられています。
食道胃接合部がんは、食道と胃のつなぎ目の食道胃接合部の上下2cmの範囲にできるがんです。リンパ節転移の広がりが、がんのできた場所によるため、食道胃接合部がんという分類がされるようになってきています。

胃がんの深達度
胃がんの深達度

胃がんの治療方針の基本の考え方
胃がんの治療方針の基本の考え方

治験薬:トラスツズマブ デルクステカン

トラスツズマブ デルクステカンは、HER2を標的とするトラスツズマブと細胞障害性のトピイソメラーゼ阻害薬のデルクステカンを結合させた抗体薬物複合体です。
トラスツズマブは、HER2たんぱくやHER2遺伝子の増殖があるがんで、HER2を標的として阻害し、がんの増殖を抑制します。
デルクステカンは、細胞の増殖にかかわる2つのトポイソメラーゼのうちI型の酵素を阻害することでがん細胞の増殖を抑制します。強力な細胞障害性があるデルクステカンをトラスツズマブと結合させることで、HER2が発現しているがんに選択的に送り届け、有害性を最小限に抑えながら抗腫瘍効果を発揮します。
トラスツズマブ デルクステカンは、トラスツズマブがHER2を抑制し、抗体が免疫細胞を呼び寄せ抗体が結合している細胞を殺傷する抗体依存性細胞障害作用を誘導します。さらに、トラスツズマブとの結合により、選択的に運ばれたデルクステカンが細胞障害作用を発揮することで抗腫瘍効果を高めます。

対照薬:イリノテカン

イリノテカンは、トポイソメラーゼというDNAの複製に必要な酵素を阻害する抗がん薬です。
細胞が増殖する場合、DNAの複製が必要なため、その複製に必要な酵素を阻害することで、細胞死を誘導します。
がん細胞では、活発な増殖が起こっているため、DNA複製に必要なトポイソメラーゼを阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 局所進行または転移性胃腺がんもしくは胃食道接合部腺がん
  • フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む2レジメン以上の治療において増悪が確認された者
  • 測定可能病変があると判断された者
  • 全身状態(Performance Status:PS )0~1
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 臨床的に問題となる肺疾患の既往歴/合併症がある
  • 無治療で臨床症状を伴う、あるいは治療を必要とする活動性の脳転移がある患者
  • 過去3年以内に胃および胃食道接合部以外の原発性悪性腫瘍がある患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称進行胃腺癌又は胃食道接合部腺癌の患者を対象としたDS-8201aの多施設共同第II相試験
試験の概要2レジメン以上の治療において増悪が認められたHER2発現の進行胃腺癌又は胃食道接合部腺癌患者を対象としてDS-8201aと医師選択治療の有効性及び安全性を比較する
疾患名胃腺癌又は胃食道接合部腺癌
試験薬剤名DS-8201a
用法・用量点滴静注(3週間に1度、6.4mg/kg)
対照薬剤名イリノテカン(医師選択治療:イリノテカン又はパクリタキセル)
用法・用量イリノテカン:点滴静注(150mg/m2)
対照薬剤名パクリタキセル(医師選択治療:イリノテカン又はパクリタキセル)
用法・用量パクリタキセル:点滴静注(80mg/m2)
試験のフェーズフェーズ2(第2相臨床試験)
試験のデザイン非盲検、3コホート、多施設
目標症例数220
適格基準
  • 病理診断により局所進行又は転移性胃腺癌もしくは胃食道接合部腺癌であることが確認された者
  • フルオロピリミジン系薬剤及びプラチナ系薬剤を含む2レジメン以上の治療において増悪が確認された者
  • RECIST ver. 1.1に基づき、治験責任医師等によって測定可能病変を有すると判断された者
  • ECOG PSが0又は1
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 臨床的に問題となる肺疾患の既往歴/合併症を有する
  • 無治療で臨床症状を伴う、あるいは治療を必要とする活動性の脳転移を有する患者
  • 過去3年以内に胃及び胃食道接合部以外の原発性悪性腫瘍を有する患者
主要な評価項目奏効率
主要な評価方法RECIST version 1.1
副次的な評価項目無増悪生存期間、全生存期間、奏効期間、病勢コントロール率、治療成功期間、安全性、薬物動態
副次的な評価方法RECIST version 1.1
予定試験期間2017/10/01~2019/12/31

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより