切除不能、局所進行性または転移性胃・食道胃接合部がんに対するアベルマブの治験

治験名

切除不能、局所進行性または転移性の胃腺がんまたは胃食道接合部腺がんの被験者を対象に維持療法としてのアベルマブと一次化学療法の継続とを比較する第3相非盲検多施設共同試験

治験概要:

切除不能、局所進行性または転移性の胃腺がんまたは胃食道接合部腺がんに対する治験。HER2陰性で化学療法歴のない患者さんが対象です。 アベルマブとオキサリプラチン+5-FU、またはオキサリプラチン+カペシタビンの継続を比較して、全生存期間、無増悪生存期間、安全性などで評価する臨床試験です。 登録予定数は、666人。 フェーズは、3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化、平行群間、非盲検。 試験群:アベルマブ 対照群:オキサリプラチン+5-FU 対照群:オキサリプラチン+カペシタビン 対照群:BSCのみ 全生存期間、無増悪生存期間、安全性などで評価します。

疾患解説:胃がん・食道胃接合部がん

国立がん研究センターのがん統計の2014年の全国推計値によると、胃がんに罹った人は、男性89094人、女性40145人、合計129239人で女性に比べて男性が2倍以上多くなっています。50代で徐々に増えはじめ、男性は70代をピークにその後は減少しますが、女性は、80代からさらに増加していきます。 胃がんのリスク要因は、喫煙、塩分の多い食事や野菜などの不足、生活習慣などいくつもあるといわれていますが、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染がリスクを高めるといわれています。 早期の胃がんではほとんど自覚症状がありませんが、がんの進行につれて起こる、胃痛、胸やけ、吐き気、食欲不振などが代表的な症状です。こうした気になる症状があれば医療施設で検査を受けてください。 胃がん検診は、対策型検診と任意型検診があります。対策型検診は、会社などで加入している健康保険組合や自治体が定期的に行うもので、任意型検診は、個人の希望で行う検診です。いずれの検診でも、有効性評価に基づくがん検診ガイドラインでは、50歳以上を対象として、問診と胃部X線検査(当分は1年に1回)か胃内視鏡検査を2年に1回受けることが推奨されています。 胃は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層からできています。多くの胃がんは一番内側にある粘膜層から発生し、次第に胃壁の外側に向かって進行していきます。胃がんのステージ分類は、がんが5つの層のどこまで達しているかという深達度、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移の3つの要素で決定されます。 早期胃がんの治療では、体への負担が外科的手術より少ない内視鏡を使った手術も可能な場合もあります。大まかにいうと、ステージII程度の進行度なら「容易に手術が可能」と判断し、ステージIII程度の進行度なら「ギリギリ切除可能」と判断され、ステージIVに至ると「根治切除ができない」となります。ただし、ステージだけでは治療方針は決まりません。 手術と薬物療法を組み合わせることで、従来は治癒が難しかった胃がんも治療の対象となっています。今後、新しい薬剤と手術を組み合わせた臨床試験が進むことで、胃がんの手術療法の治療成績は、さらに向上していくと考えられています。 食道胃接合部がんは、食道と胃のつなぎ目の食道胃接合部の上下2cmの範囲にできるがんです。リンパ節転移の広がりが、がんのできた場所によるため、食道胃接合部がんという分類がされるようになってきています。 胃がんの深達度 胃がんの深達度 胃がんの治療方針の基本の考え方 胃がんの治療方針の基本の考え方

治験薬:アベルマブ

アバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:オキサリプラチン

オキサリプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。 薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。オキサリプラチンは、第2世代の白金製剤にさらに改変が行われ、新たな適応を獲得した第3世代の白金製剤です。

対照薬:フルオロウラシル

フルオロウラシルは、DNAの合成阻害、RNAの機能障害によるがん細胞を細胞死に誘導する代謝拮抗薬です。 DNAを構成する主な成分はピリミジン塩基といわれ、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシルなどです。フルオロウラシルは、このピリミジン塩基と似たような構造で、DNAが合成されるときにピリミジン塩基の代わりに取り込まれることで、DNA合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。

対照薬:カペシタビン

カペシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。 細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。 ピリミジン系抗がん剤には、カペシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、ゲムシタビンなどがあります。 カペシタビンは、体内に吸収されたのち肝臓や腫瘍組織でフルオロウラシルに変化するプロドラッグといわれる製剤です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 測定可能病変がある
  • 組織学的に確定診断された切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんまたは胃食道接合部腺がんの患者
  • 全身状態(Performance Status:PS )0~1
  • 推定される余命が12 週間超
  • 治験実施計画書に定義される十分な血液機能、肝機能、腎機能がある
  • 妊娠可能な女性の場合、スクリーニング時の血液妊娠検査が陰性
  • 患者本人またはパートナーが妊娠可能な場合、男性、女性の被験者ともに、有効性の高い避妊法を使用する
  • 治験実施計画書に定められるその他の基準が適用される
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • T細胞活性化調節蛋白をターゲットとする抗体または薬剤による治療歴がある
  • 抗がん治療の併用が必要である
  • 切除不能な局所進行性または転移性の胃腺がんまたは胃食道接合部腺がんの化学療法歴がある
  • 腫瘍がHER2陽性
  • 組入れ前4 週間以内に大手術を受けた、および/または患者が組入れ前4週間以内に受けた手術から十分に回復していない場合
  • 理由を問わず、免疫抑制剤による治療を受けている患者は、治験治療の開始前に当該薬剤を漸減中止すること
  • 脳転移があるすべての患者。ただし、下記の基準を満たす患者は適格とする a. 脳転移に対して局所治療が実施されている。b. 脳内の局在性病変に関連する神経学的症状が認められない(脳転移の治療による後遺症は許容される)
  • 過去5 年以内の悪性疾患。ただし、皮膚の基底細胞がん、皮膚の扁平上皮がん、上皮内がん(膀胱、子宮頸部、結腸直腸、乳房)は適格とする
  • 同種幹細胞移植を含む臓器移植を受けている
  • 重大な急性または慢性感染
  • 免疫賦活薬の投与で悪化する可能性がある活動性の自己免疫疾患がある
  • モノクローナル抗体に対する重度の過敏反応があることが知られている、アナフィラキシーの既往歴がある、またはコントロール不良の喘息がある
  • 前治療に関連する毒性が持続している
  • グレード3 以上のニューロパチーがある
  • 妊娠中または授乳中である
  • アルコール乱用または薬物乱用が知られている
  • 高血圧、活動性感染、糖尿病をはじめとするコントロール不良の疾患が合併している
  • 臨床的に重大な心血管疾患
  • 治験治療に対する忍容性を損なう可能性がある重大なその他の疾患
  • 同意説明に対する理解または解釈が困難で、本治験の要件を遵守することが制限されるような精神状態がある
  • アベルマブの初回投与前55日以内および治験治療中のワクチン接種は禁止する。ただし、不活化ワクチンの接種は認められる
  • 法的能力が欠如している、または法的能力に制限がある
  • 治験実施計画書に定められるその他の基準が適用される

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。 ※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称 切除不能、局所進行性または転移性の胃腺癌または胃食道接合部腺癌の被験者を対象に維持療法としてのavelumab(MSB0010718C)と一次化学療法の継続とを比較する第III 相非盲検多施設共同試験
試験の概要 切除不能、局所進行性または転移性の胃腺癌または胃食道接合部腺癌の被験者を対象とし、avelumab(MSB0010718C)と一次化学療法(オキサリプラチン + 5FU) または (オキサリプラチン+ カペシタビン)あるいは (オキサリプラチン + (5FUまたはカペシタビン) の継続とを比較
疾患名 切除不能、局所進行性または転移性の胃腺癌または胃食道接合部腺癌
試験薬剤名 アベルマブ
用法・用量 維持期間:2週間に1 回、10mg/kg の用量を(1時間かけて)点滴静注
対照薬剤名 オキサリプラチン+5-FU
用法・用量 導入期間および維持期間:
対照薬剤名 オキサリプラチン+カペシタビン
用法・用量 導入期間および維持期間:Day 1のオキサリプラチン130mg/m2 静注と、カペシタビン1000mg/m2を最初の2週
対照薬剤名 BSCのみ
用法・用量 維持期間: 導入期間の化学療法の継続に適格ではないと考えられる被験者には、他の有効な化学療法を行わずBSCのみを実施する
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン
目標症例数 666
適格基準
  • 18歳以上の男性または女性の被験者
  • RECIST v1.1 で定義される測定可能病変を有する
  • 組織学的に確定診断された切除不能な局所進行性または転移性の胃腺癌または胃食道接合部腺癌の患者である
  • 治験組入れ時のECOG PSが0~1である
  • 推定される余命が12 週間超である
  • 治験実施計画書に定義される十分な血液機能、肝機能、腎機能を有する
  • 妊娠可能な女性の場合、スクリーニング時の血液妊娠検査が陰性である
  • 患者本人またはパートナーが妊娠可能な場合、男性、女性の被験者ともに、有効性の高い避妊法を使用する
  • 治験実施計画書に定められるその他の基準が適用される
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • T細胞活性化調節蛋白をターゲットとする抗体または薬剤による治療歴を有する
  • 抗癌治療の併用が必要である
  • 切除不能な局所進行性または転移性の胃腺癌または胃食道接合部腺癌の化学療法歴を有する
  • 腫瘍がHER2+であることが確認されている
  • 組入れ前4週間以内に大手術を受けた(理由は問わない。診断的生検は除く)、および/または患者が組入れ前4週間以内に受けた手術から十分に回復していない場合
  • 理由を問わず、免疫抑制剤(ステロイドなど)による治療を受けている患者は、治験治療の開始前に当該薬剤を漸減中止すること(ただし、副腎機能不全を有する患者では、生理学的機能の維持を目的として、プレドニゾン換算で1日用量10mg未満のステロイド補充療法を実施することが認められる)
  • 脳転移を有するすべての患者。ただし、下記の基準を満たす患者は適格とする a. 脳転移に対して局所治療が実施されている。b. 脳内の局在性病変に関連する神経学的症状が認められない(脳転移の治療による後遺症は許容される)
  • 過去5年以内の悪性疾患(胃癌を除く)。ただし、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、上皮内癌(膀胱、子宮頸部、結腸直腸、乳房)は適格とする
  • 同種幹細胞移植を含む臓器移植を受けている
  • 重大な急性または慢性感染
  • 免疫賦活薬の投与で悪化する可能性がある活動性の自己免疫疾患を有する
  • モノクローナル抗体に対する重度の過敏反応(NCI-CTCAE v 4.03のGrade 3以上)を有することが知られている、アナフィラキシーの既往歴を有する、またはコントロール不良の喘息(すなわち、コントロール不十分な喘息の徴候が3個以上)を有する
  • 前治療に関連する毒性が持続している
  • Grade 3以上のニューロパチーがある
  • 妊娠中または授乳中である
  • アルコール乱用または薬物乱用が知られている
  • 高血圧、活動性感染、糖尿病をはじめとするコントロール不良の疾患が合併している
  • 臨床的に重大な(すなわち、活動性の)心血管疾患
  • 治験治療に対する忍容性を損なう可能性がある重大なその他の疾患
  • 同意説明に対する理解または解釈が困難で、本治験の要件を遵守することが制限されるような精神状態を有する
  • avelumab の初回投与前55日以内および治験治療中のワクチン接種は禁止する。ただし、不活化ワクチンの接種は認められる
  • 法的能力が欠如している、または法的能力に制限がある
  • 治験実施計画書に定められるその他の基準が適用される
主要な評価項目
主要な評価方法
副次的な評価項目
副次的な評価方法
予定試験期間 2015年12月1日~2018年9月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより