局所進行または転移性尿路上皮がんに対する、ロガラチニブの治験

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治験名

プラチナ製剤を含む化学療法歴のあるFGFR陽性の局所進行性または転移性尿路上皮がん患者を対象としたロガラチニブの有効性と安全性を化学療法と比較、評価する無作為化、非盲検、多施設共同第2/3相試験

治験概要:

FGFR陽性の局所進行性または転移性の尿路上皮がんに対する治験。プラチナ製剤を含む化学療法歴のある患者さんが対象です。
ロガラチニブと化学療法(ドセタキセル、パクリタキセルまたはビンフルニン)を比較して、全生存期間、無増悪生存期間、客観的奏効率、病勢コントロール率、奏効期間、安全性、忍容性などで評価する臨床試験です。
登録予定数は、60人。
フェーズは、第2/3相臨床試験。
試験デザインは、並行群間比較試験、非盲検、無作為化。
試験群:ロガラチニブ
対照群:化学療法(ドセタキセル、パクリタキセルまたはビンフルニン)
全生存期間、無増悪生存期間、客観的奏効率、病勢コントロール率、奏効期間、安全性、忍容性などで評価します。

疾患解説:尿路上皮がん

尿路がんは、膀胱、尿管、腎盂、尿道にできたがんの総称です。このうち最も発生頻度の高いのが、膀胱がんです。尿路がんの約95%は尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生し、尿路上に多発したり、再発を繰り返すのが特徴です。尿路上皮組織から発生するがんを尿路上皮がんといいます。
厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計によると、膀胱がんによる死亡数は、2002年に5138人、2006年に6126人、2010年に6804人、腎盂がんによる死亡数は2002年に781人、2006年に1200に人、2010年に1558人、尿管がんの死亡数も2002年に852人、2006年に1105人、2010年に1593人と増加傾向にあります。
膀胱がんの主な自覚症状は、血尿と頻尿、排尿時の痛みなどがありますが、早期にはこうした症状がないこともあります。
腎盂・尿管がんで最も多い症状も血尿です。尿管がふさがったり、がんが周囲へ浸潤したばあいは、腰、背中、脇腹などに痛みがおこることがあり、尿管結石に似た症状が起こることがあります。

治験薬:ロガラチニブ

ロガラチニブは、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の活性を阻害する分子標的薬です。
FGFは、血管新生など成長因子の一種で、細胞の増殖や分化において重要な役割を担っています。
また、FGFR3変異がある腫瘍では、免疫活性化の兆候を示さないようで免疫療法に反応しない可能性が示唆されています。
ロガラチニブは、FGFR1/2/3に選択的に結合することでFGFR1/2/3に関連のシグナル伝達を阻害することで、抗腫瘍効果を発揮します。

対照薬:ドセタキセル

ドセタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。ドセタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。
タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ドセタキセルはアルコールに溶かさずに使用できる薬もあります。

対照薬:パクリタキセル

パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。
細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。

対照薬:ビンフルニン

ビンフルニンは、ビンカアルカロイド系の抗がん剤です。
細胞が分裂するときに重要なチューブリンと結合することで、細胞の分裂を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 以下の基準すべてを満たす膀胱、腎盂、尿管および尿道を含む尿路上皮がんがある患者
  • 混合型組織像を示す患者は移行上皮細胞パターンが優勢であること
  • 局所進行性または転移性である。局所進行性膀胱がんは切除不能であること。すなわち、骨盤壁または腹壁に浸潤しているまたは巨大結節があること
  • 保存または新鮮腫瘍生検標検体でFGFR1またはFGFR3 mRNAの高発現が認められた患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 尿路上皮がんに対する2レジメンを超える全身抗がん治療歴がある患者
  • 抗FGFR標的療法、またはタキサン系薬剤もしくはビンフルニンの投与継続中または治療歴がある患者

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。

試験概要詳細

試験の名称 プラチナ製剤を含む化学療法歴のあるFGFR陽性の局所進行性又は転移性尿路上皮癌患者を対象としたrogaratinib(BAY 1163877)の有効性と安全性を化学療法と比較、評価する無作為化、非盲検、多施設共同第II/III相試験
試験の概要 本治験は、プラチナ製剤を含む化学療法歴のあるFGFR陽性の局所進行性又は転移性尿路上皮癌患者を対象としてrogaratinib (BAY 1163877)の有効性と安全性を化学療法と比較、評価する無作為化、非盲検、多施設共同第II/III相試験である
試験17403全体の主要目的は、FGFR陽性腫瘍を有する尿路上皮癌患者における全生存期間(OS)の延長に関して、rogaratinibと化学療法(ドセタキセル、パクリタキセル又はvinflunine)を比較することである
無作為割付け時に、被験者は局所進行性又は転移性尿路上皮癌を有しており、プラチナ製剤を含む化学療法を少なくとも1レジメンは受けていることとする。FGFR1又はFGFR3陽性腫瘍のある被験者のみを本治験に無作為割付けすることが可能である。FGFR1及びFGFR3 mRNA発現の検査には保存腫瘍組織を用いることができ、RNA in situ ハイブリダイゼーション(RNA-ISH)法により中央検査機関で検査を行う
局所進行又は転移性尿路上皮癌のうち、約42%の患者がRAN-ISHによりFGFR陽性であると同定される
疾患名 移行上皮癌
試験薬剤名 Rogaratinib
用法・用量 Rogaratinibを1日2回(BID)経口(p.o.)連続投与
対照薬剤名 化学療法
用法・用量 化学療法としてタキサン(ドセタキセル又はパクリタキセル)又はvinflunineを3週間ごと(各サイクルの1日目)に静脈内投与する。化学療法は、当該国の承認状況を考慮して(つまり、当該薬が当該国において少なくとも1つの適応症に対して承認されていなければならない)、治験担当医師が選択する
試験のフェーズ フェーズ2/3(第2/3相臨床試験)
試験のデザイン 並行群間比較試験、非盲検、無作為化
目標症例数 60
適格基準
  • 以下の基準すべてを満たす膀胱、腎盂、尿管及び尿道を含む尿路上皮癌(移行上皮癌)を有する患者
  • 組織学的又は細胞学的に確認されていること
  • 混合型組織像を示す患者は移行上皮細胞パターンが優勢であること
  • 局所進行性(T4bでNは問わない又はN2~3でTは問わない)又は転移性(N、Tは問わないM1)である。局所進行性膀胱癌は切除不能であること。すなわち、骨盤壁又は腹壁に浸潤している(ステージT4b)又は巨大結節があること(N2~3)
  • 保存又は新鮮腫瘍生検標検体でFGFR1又はFGFR3 mRNAの高発現が認められた患者(RNAscopeスコアが3+又は4+、測定は本治験実施計画書で規定されている)
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 尿路上皮癌に対する2レジメンを超える全身抗癌治療歴がある患者
  • 抗FGFR標的療法(rogaratinib又はFGFR特異性抗体のような受容体チロシンキナーゼ阻害薬など)、又はタキサン系薬剤若しくはvinflunineの投与継続中又は治療歴がある患者
主要な評価項目 生存期間
主要な評価方法 評価期間:45ヵ月まで
副次的な評価項目 無増悪生存期間 客観的奏効率 病勢コントロール率 奏効期間 安全性及び忍容性の評価として有害事象の発生
副次的な評価方法 評価期間:45ヵ月まで
予定試験期間 2018年6月1日~2022年3月31日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより