高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対するペムブロリズマブの治験
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治験名
KEYNOTE-676
Bacillus Calmette-Guerin(BCG)導入療法後に持続または再発した高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)患者を対象としたMK-3475とBCGの併用療法の有効性と安全性を評価するための無作為化実薬対照第3相試験
治験概要:
高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対する治験。BCG導入療法後に持続または再発した患者さんが対象です。
ペムブロリズマブ+BCG療法とBCG療法を比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、550人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、多施設共同、無作為化、非盲検、対照薬比較、並行群間。
試験群:ペムブロリズマブ+BCG療法
対照群:BCG療法
完全奏効率、無イベント生存期間、無再発生存期間、全生存期間、疾患特異的生存期間、膀胱全摘除術までの期間などで評価します。
疾患解説:高リスク筋層非浸潤性膀胱がん
高リスク筋層非浸潤性膀胱がんは、筋層に浸潤していない高リスクの膀胱がんです。
膀胱は、内側から「粘膜上皮」「基底部」「粘膜下層」「筋層」「脂肪」の5つの層で構成されています。筋層非浸潤性がんとは、粘膜下層までにとどまり、筋層に達していないものです。
また、膀胱がんでは採取したがん細胞の組織を病理診断し、各種の画像診断とあわせて、再発や進展のリスク分類を行います。本治験の対象となる高リスクは、以下の条件のいずれかを含むものです。
・T1(筋層には浸潤していないが粘膜下層まで達している)
・ハイグレード(細胞の形が正常な細胞と比べて異なっている度合いが高い)
・上皮内がん(併発も含む)
・多発、再発
高リスク群や上皮内がんの場合は、抗がん剤膀注療法での効果は期待できないため、BCG膀注療法か膀胱全摘かの選択になります。高リスク群に対してもBCG膀注療法は再発の抑制効果があることが確認されているため、可能な限りBCG膀注療法が行われますが、BCG膀注療法が適さない場合、治療効果が乏しくなることもあります。また、根治的膀胱全摘除術が不適格であると診断されたり、根治的膀胱全摘除術を希望しない患者さんに対してBCG膀注療法や根治的膀胱全摘除術の代わりになる治療法(薬)の開発が求められています。
低リスク | 単発、初発、3cm未満、Ta、ローグレード、上皮内がん併発なしのすべてを満たす |
中リスク | Ta-1、ローグレード、上皮内がん併発なし、多発性あるいは大きさが3cm以上 |
高リスク | T1、ハイグレード、上皮内がん(上皮内がん併発も含む)、多発、再発のいずれかを含む |
出典:日本泌尿器学会,編:膀胱がん診療ガイドライン2015年版,医学図書出版,2015.

治験薬:ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

対照薬:膀胱内BCG注入療法
膀胱内BCG注入療法は、結核予防ワクチンのBCGを膀胱に刺して注入する治療法です。
上皮内がんや表在性のがんに対して行われます。
BCG膀注療法を行うと8割以上が再発しないとの報告がありますが、BCG膀注療法を行っても約2割の人は再発します。再発した場合に、もう1度BCG膀注療法をするか、内視鏡による切除を行うか、あるいは膀胱全摘するかは、再発したときのリスク分類や年齢、全身の状態などによって変わってきます。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | Bacillus Calmette-Guerin(BCG)導入療法後に持続又は再発した高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)患者を対象としたMK-3475とBCG の併用療法の有効性と安全性を評価するための無作為化実薬対照第III相試験(KEYNOTE-676) |
試験の概要 | 本試験では、十分なBacillus Calmette-Guerin(BCG)導入療法後に持続又は再発した高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)患者を対象として、MK-3475とBCGの併用療法の有効性と安全性をBCG単独療法と比較検討する 主要仮説として、CIS併発患者において、MK-3475とBCGの併用投与は、BCG単独投与と比較して、中央病理診断機関が評価したCRRが有意に高くなる |
疾患名 | 高リスク筋層非浸潤性膀胱癌 |
試験薬剤名 | MK-3475+BCG |
用法・用量 | MK-3475200mg静脈内投与、3週間間隔(Q3W)を35回(約2年間)。BCG50mg(湿重量)の導入療法及び維持療法 |
対照薬剤名 | BCG |
用法・用量 | BCG50mg(湿重量)の導入療法及び維持療法 |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 多施設共同、無作為化、非盲検、対照薬比較、並行群間 |
目標症例数 | 550 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | 盲検下の独立した中央判定機関(BICR)による完全奏効率(CRR) |
副次的な評価項目 | 安全性/safety 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | 無イベント生存期間(EFS) 無再発生存期間(RFS) 全生存期間(OS) 疾患特異的生存期間(DSS) 膀胱全摘除術までの期間 12ヵ月EFS率 奏効期間(DOR) 12ヵ月DOR率 European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)QoL質問票Core30(QLQ-C30)における、真の悪化までの期間(TTD) 有害事象を発現した患者数 有害事象により治験薬の投与を中止した患者数 EORTCQLQ-C30の全般的な健康状態/QoL(項目29及び項目30) EORTCQLQ-C30の複数項目及び単項目のスケール EORTCQLQ-NMIBC24スコア European Quality of Life(EuroQoL)-5の程度及び5段階の質問票(EQ-5D-5L)により評価される健康効用値 |
予定試験期間 | 2019年4月15日~2024年11月25日 |