シスプラチン適応の筋層浸潤性膀胱がんに対するペムブロリズマブの治験

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治験名

KEYNOTE-866

シスプラチン適応の筋層浸潤性膀胱がん患者を対象とした周術期のペムブロリズマブ+術前補助化学療法を周術期のプラセボ+術前補助化学療法と比較する第3相無作為化二重盲検試験

治験概要:

組織型が50%以上尿路上皮由来による筋層浸潤性膀胱がんに対する治験。シスプラチン適応の患者さんが対象です。
ペムブロリズマブ+ゲムシタビン+シスプラチン+手術とプラセボ+ゲムシタビン+シスプラチン+手術を比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、790人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為割付、並行群間、多施設共同、二重盲検。
試験群:ペムブロリズマブ+ゲムシタビン+シスプラチン+手術
対照群:プラセボ+ゲムシタビン+シスプラチン+手術
完全奏効率、無イベント生存期間、全生存期間、無病生存期間、有害事象、周術期合併症などで評価します。

疾患解説:膀胱がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に膀胱がんと診断された人は20207人です。60代後半から70代にかけて徐々に増えはじめ、高齢になるほど増加します。男性に多く、女性の3倍の罹患数です。
膀胱は内腔側の表面から順に、粘膜上皮(尿路上皮)、粘膜下層という粘膜で覆われ、さらに筋層(筋肉の層)と続いて、外側は脂肪の層で包まれています。膀胱がんは、この尿路上皮ががん化したもので、まれに扁平上皮がんや腺がんの場合もありますが、90%以上が尿路上皮がんという種類です。
膀胱がんは、筋層非浸潤性がん、筋層浸潤性がん、転移性がんに分類されます。がんが粘膜下層に留まっていて筋層に達していないものを筋層非浸潤性膀胱がんと呼びます。
膀胱がんの自覚症状で最も多いのが、痛みを伴わない赤色や茶色の血尿です。ときには膀胱炎と同様に排尿時の痛みや頻尿などの症状が出ることもあります。膀胱がんの原因としては喫煙が最も重要です。

低リスク単発、初発、3cm未満、Ta、ローグレード、上皮内がん併発なしのすべてを満たす
中リスクTa-1、ローグレード、上皮内がん併発なし、多発性あるいは大きさが3cm以上
高リスクT1、ハイグレード、上皮内がん(上皮内がん併発も含む)、多発、再発のいずれかを含む

出典:日本泌尿器学会,編:膀胱がん診療ガイドライン2015年版,医学図書出版,2015.

出典:日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011 年4月(第1版),金原出版.より作成

治験薬:ペムブロリズマブ

ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

治験薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 主な組織型(50%以上)が尿路上皮がんである筋層浸潤性膀胱がんと組織学的に診断された患者
    混合型の患者は、上述のとおり50%以上が尿路上皮がんである場合は組入れ可能
    腫瘍に神経内分泌がんが含まれる患者は不適格とする
    膀胱由来でない尿路上皮がんは不適格とする
  • 臨床的に非転移性膀胱がんと判定された患者
  • 担当泌尿器科医または腫瘍専門医により根治的膀胱全摘除術+骨盤リンパ節郭清術に適応があると判断され、根治目的の標準的な根治的膀胱全摘除術+骨盤リンパ節郭清術を受けることに同意する患者
  • 経尿道的切除術で中央検査機関による組織型、筋層浸潤の有無が確認でき、PD-L1評価に十分な膀胱腫瘍検体が得られている患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0または1の患者
  • 適切な臓器機能がある患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 無作為割付け前3年以内に進行性または積極的な治療が必要な他の悪性腫瘍がある患者
  • 筋層浸潤性膀胱がんに対する全身性の抗悪性腫瘍治療歴がある患者
  • シスプラチン不適応の患者
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2の薬剤または他の補助刺激性または共抑制性T細胞受容体を標的とした薬剤の治療歴がある患者
  • 無作為割付け前14日以内に顆粒球コロニー刺激因子または顆粒球単球コロニー刺激因子などの造血因子による治療を受けた患者
  • 無作為割付け前3年以内にがんに対する全身性の治療を受けた患者
  • 膀胱に対する放射線療法歴がある患者
  • 治験薬初回投与前30日以内に生ワクチンの接種を受けた患者
  • 現在他の治験薬の治験に参加している、または治験薬初回投与前4週間以内に他の治験薬の治験に参加したもしくは治験用の医療機器を用いた患者
    注:治験のフォローアップ期間に移行している患者で、他の治験薬の最終投与から4週間以上経過している場合は組入れ可能
  • 免疫不全状態と診断された患者、または治験薬初回投与前7日以内に長期全身性ステロイド療法や他の免疫抑制療法による治療を受けた患者
  • モノクローナル抗体またはそれらの添加剤に対する過敏症がある患者
  • シスプラチンもしくはゲムシタビン、またはそれらの添加剤に対する重度の過敏症がある患者
  • 過去2年以内に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患がある患者
  • 間質性肺疾患/肺臓炎を合併、もしくはステロイド投与が必要な間質性肺疾患/肺臓炎の既往がある患者
  • 全身性の治療を必要とする活動性の感染症がある患者。感染症の回復後に再スクリーニングが可能

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。

試験概要詳細

試験の名称シスプラチン適応の筋層浸潤性膀胱癌患者を対象とした周術期のMK 3475+術前補助化学療法を周術期のプラセボ+術前補助化学療法と比較する第III相無作為化二重盲検試験(KEYNOTE-866)
試験の概要シスプラチン適応の患者を対象とした、周術期のMK3475+術前補助化学療法を、周術期のプラセボ+術前補助化学療法と比較する国際共同試験
疾患名筋層浸潤性膀胱癌
試験薬剤名MK3475+ゲムシタビン+シスプラチン+手術
用法・用量術前:MK3475200mgQ3WIV4コース、ゲムシタビン1000mg/m2Q3WIV4コース、シスプラチン70mg/m2Q3WIV4コース
術後:MK3475200mgQ3WIV13コース
対照薬剤名プラセボ+ゲムシタビン+シスプラチン+手術
用法・用量術前:プラセボQ3WIV4コース、ゲムシタビン1000mg/m2Q3WIV4コース、シスプラチン70mg/m2Q3WIV4コース
術後:プラセボQ3WIV13コース
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為割付、並行群間、多施設共同、二重盲検
目標症例数790
適格基準
  • 主な組織型(50%以上)が尿路上皮癌であるMIBC(T2~T4aN0M0)であると組織学的に診断された患者(組織型及び筋層浸潤の有無はBICRが確認する)
    ・混合型の患者は、上述のとおり50%以上が尿路上皮癌である場合は組入れ可能である
    ・腫瘍に神経内分泌癌が含まれる患者は不適格とする
    ・膀胱由来でない[例:上部尿路(尿管、腎盂)、尿道]尿路上皮癌は不適格とする
  • 臨床的に非転移性膀胱癌(N0M0)であると画像評価(胸部CT及び腹部/骨盤部CT又はMRI)によりBICRが判定した患者
  • 担当泌尿器科医又は腫瘍専門医によりRC+PLNDに適応があると判断され、根治目的の標準的なRC+PLND(該当する場合、前立腺摘除術を含む)を受けることに同意する患者
  • 経尿道的切除術で中央検査機関による組織型、筋層浸潤の有無が確認でき、PD-L1評価に十分な膀胱腫瘍検体が得られている患者
  • Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Statusが0又は1の患者
  • 適切な臓器機能を有する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 無作為割付け前3年以内に進行性又は積極的な治療が必要な他の悪性腫瘍を有する患者
  • MIBCに対する全身性の抗悪性腫瘍治療歴を有する患者
  • シスプラチン不適応の患者(治験実施計画書の定義に合致する場合)
  • 抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2の薬剤又は他の補助刺激性又は共抑制性T細胞受容体(CTLA-4、OX-40、CD137等)を標的とした薬剤の治療歴を有する患者
  • 無作為割付け前14日以内に顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)又は顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)などの造血因子による治療を受けた患者
  • 無作為割付け前3年以内にがんに対する全身性の治療(治験薬も含む)を受けた患者
  • 膀胱に対する放射線療法歴を有する患者
  • 治験薬初回投与前30日以内に生ワクチンの接種を受けた患者
  • 現在他の治験薬の治験に参加している、又は治験薬初回投与前4週間以内に他の治験薬の治験に参加した若しくは治験用の医療機器を用いた患者
    注:治験のフォローアップ期間に移行している患者で、他の治験薬の最終投与から4週間以上経過している場合は組入れ可能
  • 免疫不全状態と診断された患者、又は治験薬初回投与前7日以内に長期全身性ステロイド療法や他の免疫抑制療法による治療を受けた患者
  • モノクローナル抗体(MK3475を含む)又はそれらの添加剤に対する過敏症を有する患者
  • シスプラチン若しくはゲムシタビン、又はそれらの添加剤に対する重度(Grade3以上)の過敏症を有する患者
  • 過去2年以内に全身性の治療(疾患修飾薬、コルチコステロイド又は免疫抑制剤)を要した活動性の自己免疫疾患を有する患者
  • 間質性肺疾患/肺臓炎を合併、もしくはステロイド投与が必要な(非感染性の)間質性肺疾患/肺臓炎の既往を有する患者
  • 全身性の治療を必要とする活動性の感染症を有する患者。感染症の回復後に再スクリーニングが可能である
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法全患者を対象とした病理学的完全奏効(pCR)率
PD-L1CPSが10以上の患者を対象としたpCR率
全患者を対象とした無イベント生存期間(EFS)
PD-L1CPSが10以上の患者を対象としたEFS
副次的な評価項目安全性/safety
有効性/efficacy
副次的な評価方法全患者を対象とした全生存期間(OS)
PD-L1CPSが10以上の患者を対象としたOS
全患者を対象とした無病生存期間(DFS)
PD-L1CPSが10以上の患者を対象としたDFS
全患者を対象とした病理学的ダウンステージング(pDS)率
PD-L1CPSが10以上の患者を対象としたpDS率
有害事象
有害事象による治験薬投与の中止
周術期合併症
Functional Assessment of Cancer Therapy(FACT)-Bl-Cys質問票による患者アンケート(PRO)評価
予定試験期間2019年7月19日~2025年1月15日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより