筋層浸潤性膀胱がんに対するニボルマブとBMS-986205の治験

治験名

筋層浸潤性膀胱がん患者を対象に術前補助化学療法単独に対して、ニボルマブまたはニボルマブとBMS-986205の併用療法を追加した術前補助化学療法と、それに続くニボルマブまたはニボルマブとBMS-986205の術後補助療法を比較する無作為化第3相試験

治験概要:

筋層浸潤性膀胱がんに対する治験。ステージT2~T4a N0 M0の患者さんが対象です。
ニボルマブ+BMS-986205+ゲムシタビン+シスプラチン併用とゲムシタビン+シスプラチン併用を比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、1200人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、無作為化。
試験群:ニボルマブ+BMS-986205+ゲムシタビン+シスプラチン
対照群:ゲムシタビン+シスプラチン
完全奏功率、無イベント生存期間、全生存期間、有害事象などで評価します。

疾患解説:膀胱がん

国立がん研究センターのがん統計によると2014年に膀胱がんと診断された人は20207人です。60代後半から70代にかけて徐々に増えはじめ、高齢になるほど増加します。男性に多く、女性の3倍の罹患数です。
膀胱は内腔側の表面から順に、粘膜上皮(尿路上皮)、粘膜下層という粘膜で覆われ、さらに筋層(筋肉の層)と続いて、外側は脂肪の層で包まれています。膀胱がんは、この尿路上皮ががん化したもので、まれに扁平上皮がんや腺がんの場合もありますが、90%以上が尿路上皮がんという種類です。
膀胱がんは、筋層非浸潤性がん、筋層浸潤性がん、転移性がんに分類されます。がんが粘膜下層に留まっていて筋層に達していないものを筋層非浸潤性膀胱がんと呼びます。
膀胱がんの自覚症状で最も多いのが、痛みを伴わない赤色や茶色の血尿です。ときには膀胱炎と同様に排尿時の痛みや頻尿などの症状が出ることもあります。膀胱がんの原因としては喫煙が最も重要です。

低リスク単発、初発、3cm未満、Ta、ローグレード、上皮内がん併発なしのすべてを満たす
中リスクTa-1、ローグレード、上皮内がん併発なし、多発性あるいは大きさが3cm以上
高リスクT1、ハイグレード、上皮内がん(上皮内がん併発も含む)、多発、再発のいずれかを含む

出典:日本泌尿器学会,編:膀胱がん診療ガイドライン2015年版,医学図書出版,2015.

出典:日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会編:腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約 2011 年4月(第1版),金原出版.より作成

治験薬:ニボルマブ

ニボルマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:BMS-986205

BMS-986205は、インドールアミン2、3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害薬という種類のお薬です。
IDO1は、制御性T細胞を促進し、エフェクターT細胞の活性化を抑制する免疫抑制酵素です。
BMS-986205は、このIDO1を阻害する薬で効果的に免疫応答を回復させ、抗腫瘍効果を発揮します。

治験薬:ゲムシタビン

ゲムシタビンは、細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害する代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)と呼ばれる抗がん剤です。
細胞増殖に必要なピリミジン塩基という物質が必要で、DNAが合成されるときピリミジン塩基と似た構造のピリミジン拮抗薬が代わりに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮します。
ピリミジン系抗がん剤には、ゲムシタビンのほか、フルオロウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤、シタラビン、カペシタビンなどがあります。
ゲムシタビンは、細胞内で代謝され、DNA合成を直接的、間接的に阻害します。

治験薬:シスプラチン

シスプラチンは、細胞増殖に必要なDNAと結合して、DNAの複製を阻害したり、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する抗がん薬です。
薬の構造中に白金(プラチナ)があるため、白金製剤やプラチナ製剤とよばれることもあります。シスプラチンは、第1世代の白金製剤です。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 臨床ステージT2~T4a、N0、M0の筋層浸潤性膀胱がんであるとTURBTおよび画像検査で確認された患者。組織学的検査にて尿路上皮がんが優勢な組織成分である場合は、異型は許容される
  • 腫瘍医または泌尿器科医あるいはその両方により膀胱全摘除術に適格とみなされる必要があり、術前補助療法の完了後に膀胱全摘除術への同意
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • リンパ節転移または転移性膀胱がんの臨床的証拠が認められる患者
  • 膀胱がんに対する全身療法、放射線療法または手術の治療歴がある
  • グレード2以上の末梢性ニューロパチーもしくは難聴、またはGFR算出値もしくはクレアチニン・クリアランス測定値が50mL/min未満であるためシスプラチンの投与に不適応となる患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンスステータス


PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない100正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする70自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある40動けず、適切な医療および看護が必要
30全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10死期が切迫している
0

WHO パフォーマンスステータス


スコア患者の状態
0全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。

治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと

※多くの情報は、出典であるJAPIC-CTIUMIN-CTRに情報がある場合はそこから、転載しています。
※ここに掲載した情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。そのため、すべて情報を網羅しているものでも、情報に誤りがある場合もあります。

試験概要詳細

試験の名称層浸潤性膀胱がん患者を対象に術前補助化学療法単独に対して、ニボルマブ又はニボルマブとBMS-986205の併用療法を追加した術前補助化学療法と、それに続くニボルマブ又はニボルマブとBMS-986205の術後補助療法を比較する無作為化第3相試験
試験の概要筋層浸潤性膀胱がん患者を対象に、ニボルマブと化学療法、又はニボルマブ/BMS-986205と化学療法の併用と、それに続く根治的膀胱切除術(RC)後のがん免疫療法と術前補助化学療法単独とを比較する
疾患名膀胱がん
試験薬剤名ニボルマブ、BMS-986205、ゲムシタビン、シスプラチン
用法・用量ニボルマブ、ゲムシタビン、シスプラチン:静脈内投与/BMS-986205:経口投与
対照薬剤名ゲムシタビン、シスプラチン
用法・用量ゲムシタビン、シスプラチン:静脈内投与
試験のフェーズフェーズ3/phase3
試験のデザイン無作為化
目標症例数1200
適格基準
  • 臨床ステージT2~T4a、N0(CT又はMRIで10mm未満)、M0のMIBCであるとTURBT及び画像検査で確認された患者.組織学的検査にて尿路上皮がんが優勢な組織成分である場合は、異型は許容される
  • 患者は、腫瘍医又は泌尿器科医あるいはその両方によりRCに適格とみなされる必要があり、術前補助療法の完了後にRCを受けることに同意する必要がある
  • Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Statusが0又は1の患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 病理学的LN(短径が10mm以上)又は転移性膀胱がんの臨床的証拠が認められる患者
  • 膀胱がんに対する全身療法、放射線療法又は手術(TURBT又は生検を除く)の治療歴を有する
  • Grade2以上の末梢性ニューロパチー若しくは難聴、又はGFR算出値(Cockcroft-Gault式)若しくはクレアチニン・クリアランス(CrCl)測定値(24時間蓄尿)が50mL/min未満であるためシスプラチンの投与に不適応となる患者
主要な評価項目有効性/efficacy
主要な評価方法病理学的完全奏功率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)
副次的な評価項目全性/safety
有効性/efficacy
副次的な評価方法全生存期間(OS)、有害事象など
予定試験期間2018年10月12日~2026年12月30日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより