膀胱がんに対するペムブロリズマブの有効性・安全性を評価する臨床試験
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治験名
BCG 不応性の高リスク筋層非浸潤性膀胱がん患者を対象としたMK-3475(ペムブロリズマブ)の有効性及び安全性を評価する第II相試験
疾患解説:高リスク筋層非浸潤性膀胱がん
高リスク筋層非浸潤性膀胱がんは、筋層に浸潤していない高リスクの膀胱がんです。
膀胱は、内側から「粘膜上皮」「基底部」「粘膜下層」「筋層」「脂肪」の5つの層で構成されています。筋層非浸潤性がんとは、粘膜下層までにとどまり、筋層に達していないものです。 また、膀胱がんでは採取したがん細胞の組織を病理診断し、各種の画像診断とあわせて、再発や進展のリスク分類を行います。本治験の対象となる高リスクは、以下の条件のいずれかを含むものです。
- ・T1(筋層には浸潤していないが粘膜下層まで達している)
- ・ハイグレード(細胞の形が正常な細胞と比べて異なっている度合いが高い)
- ・上皮内がん(併発も含む)
- ・多発、再発
高リスク群や上皮内がんの場合は、抗がん剤膀注療法での効果は期待できないため、BCG膀注療法か膀胱全摘かの選択になります。
高リスク群に対してもBCG膀注療法は再発の抑制効果があることが確認されているため、可能な限りBCG膀注療法が行われますが、BCG膀注療法が適さない場合、治療効果が乏しくなることもあります。また、根治的膀胱全摘除術が不適格であると診断されたり、根治的膀胱全摘除術を希望しない患者さんに対してBCG膀注療法や根治的膀胱全摘除術の代わりになる治療法(薬)の開発が求められています。

低リスク | 単発、初発、3cm未満、Ta、ローグレード、上皮内がん併発なしのすべてを満たす |
中リスク | Ta-1、ローグレード、上皮内がん併発なし、多発性あるいは大きさが3cm以上 |
高リスク | T1、ハイグレード、上皮内がん(上皮内がん併発も含む)、多発、再発のいずれかを含む |
出典:日本泌尿器学会,編:膀胱がん診療ガイドライン2015年版,医学図書出版,2015.
治験薬:MK-3475(ペムブロリズマブ)
MK-3475(ペムブロリズマブ)は、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。
※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | BCG 不応性の高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)患者を対象としたMK-3475[ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)]の有効性及び安全性を評価する第II相試験 |
試験の概要 | 本治験は、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)療法不応性の高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)患者のうち、根治的膀胱全摘除術が不適格であると診断された患者、又は根治的膀胱全摘除術の施行を希望しない患者を対象にMK-3475を投与する試験である。 本試験に主要仮説はMK-3475の治療を受けた被験者が臨床的に意義のある抗腫瘍効果が得られることである。 |
疾患名 | 高リスク筋層非浸潤性膀胱癌 |
試験薬剤名 | MK-3475(ペムブロリズマブ) |
用法・用量 | MK-3475 200mg 静脈内投与 3週間間隔投与 |
試験の目的 | フェーズ2(第2相臨床試験) |
試験のデザイン | 単群非盲検試験 |
目標症例数 | 260 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 完全奏効率 |
主要な評価方法 | 治験開始から3年間の完全奏効率を調査する |
主要な評価項目 | 無病生存率 |
主要な評価方法 | 治験開始から3年間の無病生存率を調査する |
副次的な評価項目 | 奏効期間 |
副次的な評価方法 | 治験開始から3年間の奏効期間を調査する |
予定試験期間 | 2015年12月 ~ 2021年12月 |