ステージIVの尿路上皮がんに対するアベルマブの治験
治験の募集状況は、「jRCT 臨床研究等提出・公開システム」ページでご確認ください。
治験名
JAVELIN BLADDER 100
プラチナ製剤を含む一次化学療法完了後に進行が認められていない局所進行または転移性の尿路上皮がん患者を対象に、維持療法としてアベルマブおよびベストサポーティブケアの併用療法とベストサポーティブケア単独療法を比較する第3相多施設、国際共同、無作為化、非盲検、並行群間試験
治験概要:
一次化学療法を実施中または完了後に進行が認められていない、局所進行または転移性の尿路上皮がん患者さんを対象とした治験。維持療法として、アベルマブ+ベストサポーティブケア併用療法とベストサポーティブケア単独療法を比較して全生存期間を評価する第3相試験です。
ベストサポーティブケアは、抗がん剤など積極的な治療を行わず、痛みや苦痛などの症状をやわらげ、QOLを高める医療のことをいいます。
登録予定数は668人。
試験デザインは、無作為化、非盲検、並行群間試験。
フェーズは、第3相臨床試験。
比較する対象は
対象群1:アベルマブ+ベストサポーティブケア
対象群2:ベストサポーティブケア
で主要評価項目は全生存期間、副次的な評価項目は、無増悪生存期間、奏効、奏効期間、病勢コントロールなどで評価します。
疾患解説:尿路上皮がん
尿路がんは、膀胱、尿管、腎盂、尿道にできたがんの総称です。このうち最も発生頻度の高いのが、膀胱がんです。尿路がんの約95%は尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生し、尿路上に多発したり、再発を繰り返すのが特徴です。尿路上皮組織から発生するがんを尿路上皮がんといいます。 厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計によると、膀胱がんによる死亡数は、2002年に5138人、2006年に6126人、2010年に6804人、腎盂がんによる死亡数は2002年に781人、2006年に1200に人、2010年に1558人、尿管がんの死亡数も2002年に852人、2006年に1105人、2010年に1593人と増加傾向にあります。 膀胱がんの主な自覚症状は、血尿と頻尿、排尿時の痛みなどがありますが、早期にはこうした症状がないこともあります。 腎盂・尿管がんで最も多い症状も血尿です。尿管がふさがったり、がんが周囲へ浸潤したばあいは、腰、背中、脇腹などに痛みがおこることがあり、尿管結石に似た症状が起こることがあります。
低リスク | 単発、初発、3cm未満、Ta、ローグレード、上皮内がん併発なしのすべてを満たす |
中リスク | Ta-1、ローグレード、上皮内がん併発なし、多発性あるいは大きさが3cm以上 |
高リスク | T1、ハイグレード、上皮内がん(上皮内がん併発も含む)、多発、再発のいずれかを含む |
出典:日本泌尿器学会,編:膀胱がん診療ガイドライン2015年版,医学図書出版,2015.

治験薬:アベルマブ
アバルマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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奏効率
固形がんの治療効果判定を取り決めたのがRECISTガイドラインです。画像診断(CTやMRIなど)など同一の測定検査によって腫瘍の大きさを測定し判定されます
CR | 完全奏功 | 腫瘍が完全に消失した状態 |
PR | 部分奏功 | 腫瘍の大きさの和が30%以上減少した状態 |
SD | 安定 | PR とするには腫瘍の縮小が不十分で,かつ PD とするには治療開始以降の最小の最長径の和に比して腫瘍の増大が不十分 |
PD | 病勢 | 腫瘍の大きさの和が20%以上増加 |
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | 局所進行または転移性の尿路上皮癌患者を対象としたAVELUMABの試験(JAVELIN BLADDER 100) |
試験の概要 | 本試験では一次化学療法を実施中または完了後に進行が認められていない、局所進行または転移性の尿路上皮癌患者を対象とした維持療法として、アベルマブ+ベストサポーティブケア併用療法とベストサポーティブケア単独療法における全生存期間を比較する。 |
疾患名 | 尿路上皮癌 |
試験薬剤名 | アベルマブ+ベストサポーティブケア |
用法・用量 | アベルマブ:4週間を1サイクルとして、2週間に1回アベルマブ 10 mg/kgを1時間かけて静注する。 ベストサポーティブケア:治験責任医師が適切と考える治療を指す。この治療には、抗菌薬、栄養補給、代謝性疾患の治療、対症療法および疼痛管理(緩和的放射線療法を含む)などを含むが、積極的な抗がん治療は含まない。ただし、孤立性病変に対する局所の緩和的放射線療法は許容される |
試験薬剤名 | ベストサポーティブケア |
用法・用量 | ベストサポーティブケア:治験責任医師が適切と考える治療を指す。この治療には、抗菌薬、栄養補給、代謝性疾患の治療、対症療法および疼痛管理(緩和的放射線療法を含む)などを含むが、積極的な抗がん治療は含まない。ただし、孤立性病変に対する局所の緩和的放射線療法は許容される |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 無作為化、非盲検、並行群間試験 |
目標症例数 | 668 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 全生存期間 |
主要な評価方法 | 全生存期間:無作為化から原因を問わない死亡までの期間と定義する。解析時に生存している患者については、最終生存確認日で打ち切りとする |
副次的な評価項目 | ・無増悪生存期間 ・奏効 ・奏効期間 ・病勢コントロール ・Cmax ・Ctrough ・抗薬物抗体(ADA)および中和抗体(Nab) ・腫瘍組織バイオマーカー ・FACT-膀胱癌の症状インデックス ・EuroQol EQ-5D-5L |
副次的な評価方法 | ・無増悪生存期間:無作為化から最初のPDまたは原因を問わない死亡のいずれか早い方までの期間 ・奏効:無作為化から進行または原因を問わない死亡までの期間に記録された、RECIST v 1.1に基づくCRまたはPR ・奏効期間:RECIST v 1.1に基づく奏効が認められた患者について、奏効(CRまたはPR)が最初に記録された時点から、最初の進行または原因を問わない死亡のいずれか早い方までの期間 ・病勢コントロール:無作為化から進行または原因を問わない死亡までの期間に記録された、RECIST v 1.1に基づくCR、PRまたはSD ・Cmax:avelumabの最高血漿中濃度 ・Ctrough:avelumab投与直前の血漿中トラフ濃度 ・ADA:avelumabに対するADAおよび中和抗体陽性患者を百分率で評価する ・腫瘍組織バイオマーカー:PD-L1の発現等のavelumabの感受性または抵抗性を予測するバイオマーカーを検討する ・FACT-膀胱癌の症状インデックス:質問票を用いて疾患に関連する症状を評価する ・EuroQol EQ-5D-5L:質問票を用いて健康状態を評価する |
予定試験期間 | 2016年5月~2019年7月 |