尿路上皮膀胱がんに対するアテゾリズマブの治験
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治験名
プラチナ製剤併用化学療法歴を有する局所進行又は転移性尿路上皮膀胱癌患者を対象に,ATEZOLIZUMAB(抗PD-L1抗体)の有効性及び安全性を化学療法と比較する,第III相非盲検多施設共同ランダム化試験[IMvigor211]
治験概要
過去にプラチナ製剤併用化学療法の施行中または施行後に増悪した局所進行/転移性尿路上皮膀胱がん患者さんにおけるATEZOLIZUMAB(アテゾリズマブ)の有効性と安全性を、化学療法との比較により評価するためにデザインされた、第3相多施設共同非盲検ランダム化試験です。
治験薬の投与は、病勢の進行や許容できない毒性の発現まで、臨床的に有用である限り継続されます。登録症例数は931です。
疾患解説尿路上皮がん
尿路がんは、膀胱、尿管、腎盂、尿道にできたがんの総称です。このうち最も発生頻度の高いのが、膀胱がんです。尿路がんの約95%は尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生し、尿路上に多発したり、再発を繰り返すのが特徴です。尿路上皮組織から発生するがんを尿路上皮がんといいます。
厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計によると、膀胱がんによる死亡数は、2002年に5138人、2006年に6126人、2010年に6804人、腎盂がんによる死亡数は2002年に781人、2006年に1200に人、2010年に1558人、尿管がんの死亡数も2002年に852人、2006年に1105人、2010年に1593人と増加傾向にあります。
膀胱がんの主な自覚症状は、血尿と頻尿、排尿時の痛みなどがありますが、早期にはこうした症状がないこともあります。
腎盂・尿管がんで最も多い症状も血尿です。尿管がふさがったり、がんが周囲へ浸潤した場合は、腰、背中、脇腹などに痛みがおこることがあり、尿管結石に似た症状が起こることがあります。
低リスク | 単発、初発、3cm未満、Ta、ローグレード、上皮内がん併発なしのすべてを満たす |
中リスク | Ta-1、ローグレード、上皮内がん併発なし、多発性あるいは大きさが3cm以上 |
高リスク | T1、ハイグレード、上皮内がん(上皮内がん併発も含む)、多発、再発のいずれかを含む |
出典:日本泌尿器学会,編:膀胱がん診療ガイドライン2015年版,医学図書出版,2015.

治験薬アテゾリズマブ
アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。
がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、日本国内では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP) 」という厳しいルールに基づき、行われています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで進められます。治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを正しく理解しましょう。
試験詳細
試験の名称 | プラチナ製剤併用化学療法歴を有する局所進行又は転移性尿路上皮膀胱癌患者を対象に,ATEZOLIZUMAB(抗PD-L1抗体)の有効性及び安全性を化学療法と比較する,第III相非盲検多施設共同ランダム化試験[IMvigor211] |
試験の概要 | 本試験は、過去にプラチナ製剤併用化学療法の施行中又は施行後に増悪した局所進行/転移性尿路上皮膀胱癌患者におけるatezolizumabの有効性と安全性を化学療法との比較により評価するためにデザインされた、第III相多施設共同非盲検ランダム化試験である。治験薬は病勢の進行や許容できない毒性の発現まで、臨床的に有用である限り投与は継続される。登録症例数は931である。 |
疾患名 | 膀胱癌 |
試験薬剤名 | アテゾリズマブ |
用法・用量 | 1200mgを3週間隔で点滴静注 |
対照薬剤名 | ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル |
対照薬用法・用量 | 各国の添付文書に準ずる |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 多施設共同非盲検ランダム化試験 |
目標症例数 | 931 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 全生存期間 |
主要な評価方法 | |
副次的な評価項目 |
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副次的な評価方法 | RECIST version1.1他 |
予定試験期間 | 2014年12月~2018年5月 |