シスプラチン不耐容の尿路上皮がんのペムブロリズマブとエパカドスタットまたはプラセボの併用投与の治験

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治験名

シスプラチン不耐容の尿路上皮癌患者を対象としたMK-3475とINCB024360又はプラセボの併用投与の無作為化二重盲検第III相試験(KEYNOTE-672/ECHO-307試験)

治験概要

この試験の目的は、シスプラチン不耐容の尿路上皮がん患者さんを対象に、MK-3475(ペムブロリズマブ)と、INCB024360(epacadostat:エパカドスタット)またはプラセボを併用投与した際の有効性および安全性を比較検討することです。

疾患解説尿路上皮がん

尿路がんは、膀胱、尿管、腎盂、尿道にできたがんの総称です。このうち最も発生頻度の高いのが、膀胱がんです。尿路がんの約95%は尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生し、尿路上に多発したり、再発を繰り返すのが特徴です。尿路上皮組織から発生するがんを尿路上皮がんといいます。

厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計によると、膀胱がんによる死亡数は、2002年に5138人、2006年に6126人、2010年に6804人、腎盂がんによる死亡数は2002年に781人、2006年に1200に人、2010年に1558人、尿管がんの死亡数も2002年に852人、2006年に1105人、2010年に1593人と増加傾向にあります。

膀胱がんの主な自覚症状は、血尿と頻尿、排尿時の痛みなどがありますが、早期にはこうした症状がないこともあります。

腎盂・尿管がんで最も多い症状も血尿です。尿管がふさがったり、がんが周囲へ浸潤したばあいは、腰、背中、脇腹などに痛みがおこることがあり、尿管結石に似た症状が起こることがあります。

治験薬ペムブロリズマブ

MK-3475(ペムブロリズマブ)は、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害薬の1つです。

免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。

がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬エパカドスタット

INCB024360(epacadostat:エパカドスタット)は、IDO1阻害薬という種類のお薬です。

インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)は、免疫反応を調節する主要な免疫抑制酵素です。免疫監視機構を回避することにより、腫瘍の増殖を促します。epacadostatはこのIDO1を阻害する開発中のお薬で、強力かつ選択的にIDO1を阻害します。

これまでに、切除不能または転移性悪性黒色腫や非小細胞肺がん、腎細胞がん、扁平上皮頭頸部がん、膀胱がん患者さんを対象に、epacadostatと免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の臨床試験で、その薬効が探索的に検討されています。また、epacadostatと抗CTLA-4抗体「イピリムマブ」または抗PD-1抗体「ペムブロリズマブ」や「ニボルマブ」との併用療法では、免疫チェックポイント阻害剤単独療法と比較して、奏効率の改善が認められました。

主な治験参加条件

対象となる人
1.腎盂、尿管、膀胱または尿道の切除不能な(手術不能な)進行性または転移性尿路上皮がんであることが組織学的または細胞学的に確定診断された患者さん
2.RECIST 1.1に基づく測定可能病変のある患者さん
3.プロトコールに定義された、シスプラチンを含む併用投与が不耐容の患者さん
4.放射線照射歴のない腫瘍病変からの保存腫瘍組織、針生検または切除生検により新たに採取した腫瘍組織から、PD-L1解析用の組織検体を提供可能な患者さん
5.切除不能な(手術不能な)進行性または転移性尿路上皮がんに対する全身性の化学療法の前治療歴のない患者さん
6.無作為割付け前14日以内のECOG PSが0、1または2の患者さん
7.適切な臓器機能が示された患者さん
年齢:18歳以上
性別:男女
対象とならない人
1.根治を目的とした局所治療が適応となる患者さん
2.過去3年以内に進行性または積極的治療を要する他の悪性腫瘍のある患者さん
3.中枢神経系(CNS)への活動性転移またはがん性髄膜炎のある患者さん。ただし、脳転移の治療歴がある場合は、画像上安定(4週間以上経過後の再画像評価で疾患進行が認められない)しており、臨床的に安定、かつ少なくとも治験薬初回投与前14日以内にステロイドを投与されていない患者さんは、組入れ可能です
4.過去2年間に全身療法(疾患修飾薬、コルチコステロイドまたは免疫抑制剤の投与など)を必要とした活動性の自己免疫疾患のある患者さん。
5.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の病歴のある患者さん。ただし、規制上必須ではない場合、HIV検査は不要です
6.活動性のB型肝炎[B型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性]の既往もしくは合併、または活動性のC型肝炎(HCV RNA)のある患者さん。注:適格性確認のための検査を行うこと
7.経口製剤の吸収を妨げる可能性のある消化管状態または処置の既往歴を有すると治験担当医師が判断した患者さん
8.治験担当医師が臨床的に意義のあると判断する心電図検査の異常所見が認められた、またはその既往のある患者さん
9.プロトコールで使用が制限された前治療/併用療法が必要な患者さん

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

全身状態(Performance Status)は、患者さんが自分で身のまわりのことをどこまでこなせるかを表す尺度です。ECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。

ECOG パフォーマンス ステータス(ECOG PS)

ECOG Performance Statusは、米国の腫瘍学の団体(ECOG)が決めた全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。

PS 0全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。

治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、日本国内では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールに基づき、行われています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで進められます。治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを正しく理解しましょう。

試験詳細

試験の名称シスプラチン不耐容の尿路上皮癌患者を対象としたMK-3475とINCB024360又はプラセボの併用投与の無作為化二重盲検第III相試験(KEYNOTE-672/ECHO-307試験)
試験の概要本試験の目的はシスプラチン不耐容の尿路上皮癌患者を対象として、MK-3475と、INCB024360又はプラセボを併用投与した際の有効性及び安全性を比較検討することである。
疾患名切除不能な(手術不能な)進行性又は転移性尿路上皮癌
試験薬剤名MK-3475、INCB024360
用法・用量MK-3475 200mgの3週間間隔投与+INCB024360 100mgの1日2回連日経口投与
試験薬剤名プラセボ
用法・用量MK-3475 200mgの3週間間隔投与+プラセボの1日2回連日経口投与
試験のフェーズフェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン無作為化、プラセボ対照、多施設共同、二重盲検試験
目標症例数650
適格基準 1.腎盂、尿管、膀胱又は尿道の切除不能な(手術不能な)進行性又は転移性尿路上皮癌であることが組織学的又は細胞学的に確定診断された患者
2.RECIST 1.1に基づく測定可能病変を有する患者
3.プロトコールに定義された、シスプラチンを含む併用投与が不耐容の患者
4.放射線照射歴のない腫瘍病変からの保存腫瘍組織、針生検又は切除生検により新たに採取した腫瘍組織から、PD-L1解析用の組織検体を提供可能な患者
5.切除不能な(手術不能な)進行性又は転移性尿路上皮癌に対する全身性の化学療法の前治療歴のない患者
6.無作為割付け前14日以内のECOG PSが0、1又は2の患者
7.適切な臓器機能が示された患者
年齢:18歳以上
性別:両方
除外基準 1.根治を目的とした局所治療が適応となる患者
2.過去3年以内に進行性又は積極的治療を要する他の悪性腫瘍を有する患者
3.中枢神経系(CNS)への活動性転移又は癌性髄膜炎を有する患者。ただし、脳転移の治療歴がある場合は、画像上安定(4週間以上経過後の再画像評価で疾患進行が認められない)しており、臨床的に安定、かつ少なくとも治験薬初回投与前14日以内にステロイドを投与されていない患者は、組入れ可能である
4.過去2年間に全身療法(疾患修飾薬、コルチコステロイド又は免疫抑制剤の投与など)を必要とした活動性の自己免疫疾患を有する患者。
5.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の病歴を有する患者。ただし、規制上必須ではない場合、HIV検査は不要である
6.活動性のB型肝炎[B型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性]の既往若しくは合併、又は活動性のC型肝炎(HCV RNA)を有する患者。注:適格性確認のための検査を行うこと
7.経口製剤の吸収を妨げる可能性のある消化管状態又は処置の既往歴を有すると治験担当医師が判断した患者
8.治験担当医師が臨床的に意義のあると判断する心電図検査の異常所見が認められた、又はその既往を有する患者
9.プロトコールで使用が制限された前治療/併用療法が必要な患者
主要な評価項目
  • 無増悪生存期間(PFS)
  • 全生存期間(OS)
主要な評価方法
  • PFSは、無作為割付日からResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST) 1.1に基づき評価した疾患進行又はあらゆる原因による死亡のいずれか早い時点までの期間と定義する。(最大36カ月)
  • OSは、無作為割付日からあらゆる原因による死亡日までの期間と定義する。(最大36カ月)
副次的な評価項目
  • 安全性及び忍容性
  • 奏効率(ORR)
  • 全般的な健康状態/生活の質(QoL)のベースラインからの平均変化及び真の悪化までの期間(TTD)
副次的な評価方法
  • 有害事象を発現した患者数及び有害事象により治験薬投与を中止した患者数(最大39カ月)
  • ORRは、解析対象集団を対象に、RECIST 1.1に基づきBICRにより評価したCR又はPRを達成した患者の割合と定義する。(約24カ月)
  • a)European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)QoL Questionnaire(QLQ)-C30の全般的な健康状態/QoL評価(項目29及び30)b)TTDはベースラインから患者アンケート(PRO)の悪化が最初に認められた時点までの期間と定義する。(最大25カ月)
予定試験期間2017年12月~2021年4月

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより