局所進行性・転移性尿路上皮がんを対象としたエンフォツマブ ベドチンと化学療法の治験
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治験名
EV-301
前治療歴のある局所進行性または転移性尿路上皮がん患者を対象としたエンフォツマブ ベドチンと化学療法を比較する非盲検ランダム化第3相試験治験概要:
局所進行性または転移性尿路上皮がんに対する治験。プラチナ製剤を含む化学療法歴があり、免疫チェックポイント阻害薬による治療中または治療後に病勢進行が認められた成人患者さんが対象です。 エンフォツマブ ベドチンとドセタキセル、パクリタキセル、ビンフルニンのいずれかによる化学療法を比較して有効性を評価する臨床試験です。 登録予定数は550人。 試験デザインは、非盲検、ランダム化試験。 フェーズは、第3相臨床試験。 比較する対象は 試験群:エンフォツマブ ベドチン 対照群:ドセタキセル、パクリタキセル、ビンフルニンのいずれかによる化学療法 で主要評価項目は全生存期間、副次的な評価項目は、無増悪生存期間、全奏効率などで評価します。疾患解説:尿路上皮がん
尿路がんは、膀胱、尿管、腎盂、尿道にできたがんの総称です。このうち最も発生頻度の高いのが、膀胱がんです。尿路がんの約95%は尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生し、尿路上に多発したり、再発を繰り返すのが特徴です。尿路上皮組織から発生するがんを尿路上皮がんといいます。 厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計によると、膀胱がんによる死亡数は、2002年に5138人、2006年に6126人、2010年に6804人、腎盂がんによる死亡数は2002年に781人、2006年に1200に人、2010年に1558人、尿管がんの死亡数も2002年に852人、2006年に1105人、2010年に1593人と増加傾向にあります。 膀胱がんの主な自覚症状は、血尿と頻尿、排尿時の痛みなどがありますが、早期にはこうした症状がないこともあります。 腎盂・尿管がんで最も多い症状も血尿です。尿管がふさがったり、がんが周囲へ浸潤したばあいは、腰、背中、脇腹などに痛みがおこることがあり、尿管結石に似た症状が起こることがあります。治験薬:エンフォツマブ ベドチン
エンフォツマブ ベドチンは、抗ネクチン-4モノクローナル抗体に微小管阻害作用をもつ低分子薬剤を結合させた抗体薬物複合体(ADC)です。 ADCは、がん細胞の標的とした抗体と抗体に付加した薬物をがん細胞内に選択的に届けることで、正常細胞への影響を少なくしがん細胞を攻撃するように設計された薬剤です。 エンフォツマブ ベドチンは、ネクチン-4を標的したがん細胞に選択的に結合したあと、微小管障害作用を持つ薬を放出することでがん細胞の増殖を抑制します。対照薬:ドセタキセル
ドセタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。 細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。ドセタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。 タキサン系は水に溶けにくいため、無水エタノール(アルコール)を含んだ液体に溶かして使用されますが、ドセタキセルはアルコールに溶かさずに使用できる薬もあります。対照薬:パクリタキセル
パクリタキセルは、イチイ科の植物の成分から開発されたタキサン系と呼ばれる微小管阻害薬です。 細胞が増殖するために細胞分裂を行うときに、微小管という物質がばらばらになる必要があります。パクリタキセルは、この微小管がばらばらにならないように安定化させ過剰に形成を起こすことで、細胞分裂を阻害して抗腫瘍効果を発揮する殺細胞性の抗がん薬です。主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータスPS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータススコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した情報は、jRCT 臨床研究等提出・公開システム に登録された情報を元にし、がんプラスが独自に記事としてまとめ、提供しています。※QLife「がん治験情報サービス」でご案内している治験とは異なります。
試験概要詳細
試験の名称 | 前治療歴のある局所進行性又は転移性尿路上皮癌患者を対象としたEnfortumab Vedotinと化学療法を比較する非盲検、ランダム化第3相試験 (EV-301) |
試験の概要 | 本治験は、プラチナ製剤を含む化学療法歴を有し、免疫チェックポイント阻害薬による治療中又は治療後に病勢進行が認められた成人の局所進行性又は転移性尿路上皮癌患者を対象とする国際共同非盲検ランダム化第3相試験である。被験者を1:1の割合でendortumab vedotin (EV)又は化学療法のいずれかにランダムに割り付ける。Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status(ECOG PS)、地域及び肝転移により被験者を層別する |
疾患名 | 尿路上皮癌 |
試験薬剤名 | enfortumab vedotin / ASG-22CE |
用法・用量 | 28日を1サイクルとして、各サイクルの1、 8、 15日目に静脈投与する |
対照薬剤名 | 化学療法 (docetaxel、 vinflunine、 paclitaxelのいずれか) |
用法・用量 | 21日を1サイクルとして、各サイクルの1日目に静脈投与する |
試験のフェーズ | フェーズ3(第3相臨床試験) |
試験のデザイン | 非盲検、ランダム化試験 |
目標症例数 | 550 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 全生存期間(OS) |
主要な評価方法 | ランダム化から死亡日までの期間 |
副次的な評価項目 | 無増悪生存期間(PFS1) |
副次的な評価方法 | ランダム化の日から、画像評価で病勢進行が確認された日(RECIST V1.1に基づく)、又は、原因を問わない死亡日までの期間 評価期間: 病態進行の確認または死亡日まで |
副次的な評価項目 | 全奏効率(ORR) |
副次的な評価方法 | RECIST V1.1に基づいた客観的な完全奏効又は部分奏効を認めた被験者の割合 評価期間: 病態進行を確認するまで |
副次的な評価項目 | 病勢コントロール率(DCR) |
副次的な評価方法 | RECIST V1.1に基づいた客観的な完全奏効又は部分奏効、あるいは病勢安定を達成した被験者の割合 評価期間: 病勢進行を確認するまで |
副次的な評価項目 | 奏効期間(DOR) |
副次的な評価方法 | CR又はPRを達成した被験者について、RECIST V1.1に従って最初のCR/PRが認められた日から(いずれか最初に記録されたもの)、画像評価で進行が確認された日、又は死亡日までの期間 評価期間: 病態進行の確認または死亡日まで |
副次的な評価項目 | 安全性及び忍容性 |
副次的な評価方法 | 有害事象、臨床検査値、バイタルサイン、12誘導心電図、及びEastern Cooperative Oncology Group (ECOG) Performance Statusにて評価する 評価期間: 最終投与後の30日間追跡調査期間まで |
副次的な評価項目 | EORTC Quality of Life Questionnaire (QLQ-C30)による生活の質(QOL)の評価 |
副次的な評価方法 | 評価期間: 最終投与後の30日間追跡調査期間まで |
副次的な評価項目 | EuroQOL 5-dimensions (EQ-5D-5L)による患者報告アウトカム(PRO)評価 |
副次的な評価方法 | 評価期間: 最終投与後の30日間追跡調査期間まで |
予定試験期間 | 2018年8月31日~2021年9月29日 |