進行・転移性の尿路上皮がんに対するペムブロリズマブ+エパカドスタット併用の治験

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治験名

KEYNOTE-698/ECHO-303試験

プラチナ製剤併用化学療法後に再発または疾患進行した進行性または転移性尿路上皮がんに対するペムブロリズマブ+エパカドスタット併用投与とペムブロリズマブ+プラセボ併用投与を比較する無作為化二重盲検第3相試験

治験概要:

切除不能な進行性または転移性尿路上皮がんに対する治験。プラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した患者さんが対象です。 ペムブロリズマブ+エパカドスタット併用とペムブロリズマブ+プラセボ併用を比較して、全生存期間、無増悪生存期間、奏効率、安全性および忍容性で評価する臨床試験です。 登録予定数は、648人。 フェーズは、3相臨床試験。 試験デザインは、無作為化、並行群間、多施設共同、二重盲検試験。 比較する対象は 試験群:ペムブロリズマブ+エパカドスタット併用 対照群:ペムブロリズマブ+プラセボ併用 全生存期間、無増悪生存期間、奏功率、安全性および忍容性などで評価します。

疾患解説:尿路がん

尿路がんは、膀胱、尿管、腎盂、尿道にできたがんの総称です。このうち最も発生頻度の高いのが、膀胱がんです。尿路がんの約95%は尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生し、尿路上に多発したり、再発を繰り返すのが特徴です。尿路上皮組織から発生するがんを尿路上皮がんといいます。 厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計によると、膀胱がんによる死亡数は、2002年に5138人、2006年に6126人、2010年に6804人、腎盂がんによる死亡数は2002年に781人、2006年に1200に人、2010年に1558人、尿管がんの死亡数も2002年に852人、2006年に1105人、2010年に1593人と増加傾向にあります。 膀胱がんの主な自覚症状は、血尿と頻尿、排尿時の痛みなどがありますが、早期にはこうした症状がないこともあります。 腎盂・尿管がんで最も多い症状も血尿です。尿管がふさがったり、がんが周囲へ浸潤したばあいは、腰、背中、脇腹などに痛みがおこることがあり、尿管結石に似た症状が起こることがあります。

治験薬:ペムブロリズマブ

ペムブロリズマブは、抗PD-1抗体という免疫チェックポイント阻害剤の1つです。 免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対して、免疫細胞が本来の力を発揮できるようにする薬です。最終的には、免疫の力でがんを攻撃し、治療効果を発揮します。 がん細胞の表面に発現しているPD-L1とがん細胞を攻撃する免疫細胞(T細胞)に発現しているPD-1が結合すると、免疫細胞は、がん細胞を攻撃しなくなってしまいます。この仕組みを「免疫チェックポイント機構」といい、この仕組みが働かないように開発されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。

治験薬:エパカドスタット

エパカドスタットは、IDO1阻害薬という種類のお薬です。 インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)は、免疫反応を調節する主要な免疫抑制酵素です。免疫監視機構を回避することにより、腫瘍の増殖を促します。エパカドスタットはこのIDO1を阻害する開発中のお薬で、強力かつ選択的にIDO1を阻害します。 これまでに、切除不能または転移性悪性黒色腫や非小細胞肺がん、腎細胞がん、扁平上皮頭頸部がん、膀胱がん患者さんを対象に、エパカドスタットと免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の臨床試験で、その薬効が探索的に検討されています。また、エパカドスタットと抗CTLA-4抗体「イピリムマブ」または抗PD-1抗体「ペムブロリズマブ」や「ニボルマブ」との併用療法では、免疫チェックポイント阻害剤単独療法と比較して、奏効率の改善が認められました。

主な治験参加条件

対象となる人
  • 腎盂、尿管、膀胱または尿道の尿路上皮がんの患者
  • 転移性または切除不能な局所進行性の尿路上皮がんに対するプラチナ製剤併用化学療法後に進行または再発した尿路上皮がん患者。注:限局性の筋層浸潤性尿路上皮がんに対する膀胱切除術後、プラチナ製剤を含む術前補助化学療法または術後補助化学療法を受けた場合、治療終了後12か月以内に再発または進行した患者は組入れ可能
  • 測定可能病変を1つ以上ある患者
  • 放射線照射を受けていない腫瘍病変から採取した保存検体もしくは新たに採取した針生検または切除生検検体をPD-L1解析用に提供可能な患者
  • 全身状態(Performance Status:PS)が0または1の患者
  • プロトコールに示す適切な臓器機能がある患者
  • 年齢:20歳以上
  • 性別:両方
対象とならない人
  • 根治を目的とした局所治療が適応となる尿路上皮がん患者
  • 治験担当医師が臨床的に意義のあると判断する心電図検査の異常所見が認められた、またはその既往がある患者
  • 過去3年以内に進行性または治療が必要な他の悪性腫瘍がある患者
  • 活動性の中枢神経系への転移またはがん性髄膜炎がある患者。ただし、脳転移の治療を受けた患者で、画像測定で脳転移が安定している、すなわち、再画像測定により少なくとも4週間を超えて疾患進行が認められず、臨床的に安定している場合、組入れ可能
  • 過去2年間に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患がある患者
  • ヒト免疫不全ウイルス感染の既往がある患者。ただし、規制当局により必要とされていない場合には、HIV検査を実施する必要はない
  • 活動性のB型肝炎の既往もしくは合併、または活動性のC型肝炎がある患者。注:適格性確認のための検査を行うこと
  • プロトコール記載の前治療禁止薬および併用禁止薬の投与が必要な患者

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)

パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。 ECOG パフォーマンスステータス  
PS 0 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える
PS 1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業
PS 2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす
PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
PS 4 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)

Karnofsky パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない 100 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし
90 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能
80 かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする 70 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある 40 動けず、適切な医療および看護が必要
30 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない
20 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10 死期が切迫している
0
WHO パフォーマンスステータス  
スコア 患者の状態
0 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など
2 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす
3 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす
4 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす
5 死亡

出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より

治験情報に関する注意点

治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。 治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。 治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。 がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと ※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。

試験概要詳細

試験の名称 プラチナ製剤併用化学療法後に再発又は疾患進行した進行性又は転移性尿路上皮癌に対するMK-3475+INCB024360併用投与とMK-3475+ プラセボ併用投与を比較する無作為化二重盲検第III相試験(KEYNOTE-698/ECHO-303試験)
試験の概要 本治験では、進行性又は転移性尿路上皮癌に対するプラチナ製剤併用化学療法後に再発又は進行した切除不能な進行性又は転移性尿路上皮癌の患者を対象として、MK-3475とINCB024360、又はMK-3475とプラセボを併用投与した際の有効性及び安全性を比較検討することである
疾患名 切除不能な進行性又は転移性尿路上皮癌
試験薬剤名 MK-3475、INCB024360
用法・用量 1. MK-3475 200mgの3週間間隔静脈内投与+INCB024360 100mgの1日2回連日経口投与
対照薬剤名 MK-3475、プラセボ
用法・用量 2. MK-3475 200mgの3週間間隔静脈内投与+プラセボの1日2回連日経口投与
試験のフェーズ フェーズ3(第3相臨床試験)
試験のデザイン 無作為化、並行群間、多施設共同、二重盲検試験
目標症例数 648
適格基準
  • 腎盂、尿管、膀胱又は尿道の尿路上皮癌[移行上皮癌又は移行上皮癌/非移行上皮癌の混合型(移行上皮癌が主な組織型であること)]であることが組織学的に確定診断された患者
  • 転移性又は切除不能な局所進行性の尿路上皮癌に対するプラチナ製剤併用化学療法後に進行又は再発した尿路上皮癌患者(追加の全身性治療を受けている患者は本治験から除外する) 注:限局性の筋層浸潤性尿路上皮癌に対する膀胱切除術後、プラチナ製剤を含む術前補助化学療法又は術後補助化学療法を受けた場合(追加の全身性治療を受けていない)、治療終了後12ヵ月以内に再発又は進行した患者は組入れ可能である
  • RECIST 1.1に基づく測定可能病変を1つ以上有する患者
  • 放射線照射を受けていない腫瘍病変から採取した保存検体若しくは新たに採取した針生検又は切除生検検体をPD-L1解析用に提供可能な患者
  • ECOG PSが0又は1の患者
  • プロトコールに示す適切な臓器機能を有する患者
  • 年齢:18歳以上
  • 性別:両方
除外基準
  • 根治を目的とした局所治療が適応となる尿路上皮癌患者
  • 治験担当医師が臨床的に意義のあると判断する心電図検査の異常所見が認められた、又はその既往を有する患者
  • 過去3年以内に進行性又は治療が必要な他の悪性腫瘍を有する患者
  • 活動性の中枢神経系(CNS)への転移又は癌性髄膜炎を有する患者。ただし、脳転移の治療を受けた患者で、画像測定で脳転移が安定している、すなわち、再画像測定により少なくとも4週間を超えて疾患進行が認められず(再画像測定はスクリーニング期に実施すること)、臨床的に安定している場合、組入れ可能である
  • 過去2年間に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患を有する患者
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の既往を有する患者。ただし、規制当局により必要とされていない場合には、HIV検査を実施する必要はない
  • 活動性のB型肝炎[B型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性]の既往若しくは合併、又は活動性のC型肝炎(HCV RNA)を有する患者。注:適格性確認のための検査を行うこと
  • プロトコール記載の前治療禁止薬及び併用禁止薬の投与が必要な患者
主要な評価項目 全生存期間(OS)
主要な評価方法 MK-3475+INCB024360併用投与とMK-3475+プラセボ併用投与のOSを評価・比較する。(最大27カ月)
主要な評価項目 無増悪生存期間(PFS)
主要な評価方法 MK-3475+INCB024360併用投与とMK-3475+プラセボ併用投与のPFSを評価・比較する。(最大27カ月)
副次的な評価項目 奏効率(ORR)
副次的な評価方法 MK-3475+INCB024360併用投与とMK-3475+プラセボ併用投与のORRを評価・比較する。(約24カ月)
副次的な評価項目 安全性及び忍容性
副次的な評価方法 有害事象を発現した患者数及び有害事象により治験薬投与を中止した患者数。(最大27カ月)
副次的な評価項目 European Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC)QoL Questionnaire(QLQ)-C30の全般的な健康状態/QoL評価および真の悪化までの期間(TTD)
副次的な評価方法 全般的な健康状態/生活の質(QoL)のベースラインからの平均変化及び真の悪化までの期間(TTD)を両投与群で評価・比較する
予定試験期間 2017年12月1日~2021年4月1日

出典:医薬品情報データベースiyakuSearchより