免疫チェックポイント阻害薬の副作用

免疫チェックポイント阻害薬は、従来の抗がん剤や分子標的薬とは異なる副作用があります。比較的頻度の高い副作用、注意すべき副作用をご紹介します。

免疫チェックポイント阻害薬は、抑制されていた免疫細胞の攻撃機能を復活させることで、免疫細胞が再びがん細胞を攻撃できるようにする薬剤です。そのため、従来の抗がん剤とは異なる副作用が起こることがあります。こうした免疫に関連した副作用を免疫関連有害事象といいます。

免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象は、皮膚、消化管、肝臓、肺、内分泌器に比較的多く発生するほか、腎臓、神経、筋、目などにも起こるといわれています。特に自己免疫疾患のような特有の免疫関連有害事象には、注意が必要です。

皮膚障害

免疫チェックポイント阻害薬による皮膚障害は、早期に起こる、頻繁にみられる、軽度なことが多い、という特徴があります。主な症状は、皮疹、発疹、皮膚炎、瘙痒症(そうこうしょう・発疹のないかゆみ)、紅斑(赤いぶつぶつ)、丘疹(直径1cm以下の皮膚の隆起)、白斑、脱毛症、乾燥肌、斑状丘疹状皮疹(色の変化を伴う皮疹)などです。スティーヴンス・ジョンソン症候群や中毒性表在壊死症などの重症例も、まれですが起こることがあるので注意が必要です。

スティーヴンス・ジョンソン症候群と中毒性表在壊死症は、高熱や全身倦怠感などの症状を伴い、口唇、口腔、眼、外陰部など全身に紅斑、びらん、水疱が現れる疾患です。水疱やびらんなどで皮膚が裂けた状態が体表面積の10%未満をスティーヴンス・ジョンソン症候群、10%以上を中毒性表在壊死症といいます。

皮膚障害に対する対処法は、グレード(程度)によって異なります。医師が「症状が軽い」と判断した場合には、治療が継続されることもありますが、重篤と判断された場合には治療の休止や中止となることもあります。

皮膚障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1皮疹(びらん・水泡以外の)が体表面積の10%未満投与継続
2皮疹(びらん・水泡以外の)が体表面積の10~30%未満投与継続
3皮疹(びらん・水泡以外の)が体表面積の30%以上投与休止
治療前またはグレード1以下に回復した場合、再投与を検討
4皮疹(びらん・水泡以外の)が体表面積の30%以上で、びらん・水泡が10%未満認められ、発熱と粘膜疹を伴う投与休止し、入院の上厳重管理と治療
治療前またはグレード1以下に回復した場合、再投与を検討

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

肺障害

免疫チェックポイント阻害薬に関連した肺障害の頻度は、0~10%程度とさまざまな報告がありますが、メタ解析(複数の臨床研究データを統合した解析)では約3%といわれています。がん種によって発生頻度は異なりますが、重症化することもあり慎重な対応が必要です。

悪性黒色腫と非小細胞肺がんに対するニボルマブの臨床試験で報告された重篤な副作用は、間質性肺疾患、胸水、器質化肺炎、誤嚥性肺炎、肺臓炎、気胸などです。イピリムマブで報告されている重篤な副作用は、間質性肺疾患、胸水、縦隔出血です。また、ニボルマブとイピリムマブの併用療法では、肺障害の増加が示されています。

肺障害の症状は、障害される範囲と炎症の強度によるため、症状の出る時期は人によります。また、早期は症状がみられない場合もあります。急激に悪化し呼吸不全に陥ることもあるため、呼吸困難や咳などの呼吸器症状に注意しながら、経過観察とともに迅速な対応が重要です。

肺障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1肺臓炎:症状なし
臨床所見または検査所見のみで治療の必要なし
投与休止
2肺臓炎:症状あり
内科的治療が必要
身の回り以外の日常生活に制限がある
投与休止もしくは中止
3肺臓炎:高度の症状があり
入院が必要
身の回り以外の日常生活に制限がある
酸素が必要
投与中止
4肺臓炎
生命を脅かす呼吸不全
緊急処置が必要
投与中止

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

肝・胆・膵障害

肝障害

免疫チェックポイント阻害薬による肝・胆・膵障害で最も多く認められるのが、自己免疫性の肝障害です。肝障害は約5%未満で認められ、グレード3以上の重篤な肝障害は1%程度です。

国内で行われたイピリムマブの全例調査では、肝障害の発生頻度は2割程度で、重篤な副作用は1割強だったと報告されています。ニボルマブの肝障害の発生頻度の調査では、悪性黒色腫で2割弱、非小細胞肺がんは1割弱で、重篤な副作用は悪性黒色腫で4%程度、非小細胞肺がんで2%程度だったそうです。

抗CTLA-4、抗PD-1抗体薬を投与する際には、肝機能を評価するAST、ALT、総ビリルビン、γ-GTP、ALPを定期的に血液検査します。ASTとALTは、いずれも肝臓の細胞中に含まれる酵素で、肝臓に障害が起こると肝細胞が壊れ、血液中に増え、値が上昇します。健康な人では、ALTよりASTが高く、肝障害が起こるとALTの値が高くなります。ビリルビンは、赤血球に含まれる黄色い色素です。肝障害になると、ビリルビンが血液中に大量に残ることで黄疸が起こります。γ-GTPは、タンパク質を分解する酵素で、飲酒量が多いときや胆道系疾患などで血中の濃度が上昇します。ALPは、肝臓や腎臓、腸粘膜、骨などで作られ肝臓で処理され胆汁中に流れ出てきます。胆道がふさがれて胆汁の流れが悪くなったり、肝機能の低下で胆汁中に流れず、血液中に流れ込み、値が高くなります。

肝障害がグレード1の時は、医師が肝機能を定期的に観察した上で、投与が継続されます。グレード2では、投与を一旦休止して肝機能を定期的に観察。治療開始前の検査値や状態(ベースライン)またはグレード1に改善した場合、医師は肝機能を慎重に定期的に観察しながら、再投与を検討します。グレード3以上は投与中止です。

免疫関連肝障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1ASTまたはALT正常上限~3.0倍以下
総ビリルビンが正常上限~1.5倍以下
投与継続
2ASTまたはALT正常上限3.0倍~5.0倍以下
総ビリルビンが正常上限1.5倍~3.0倍以下
投与休止
3ASTまたはALT正常上限5.0倍~20.0倍以下
総ビリルビンが正常上限3.0倍~10.0倍以下
投与中止、再投与しない
4ASTまたはALT正常上限20倍以上
総ビリルビンが正常上限10倍以上
投与中止、再投与しない

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

膵障害

免疫チェックポイント阻害薬による膵障害は、頻度は高くありませんが、アミラーゼやリパーゼの値の上昇が認められることがあります。アミラーゼは、膵臓や唾液腺から分泌される糖質を分解する酵素で、リパーゼは膵臓から分泌される脂肪を分解する酵素です。どちらも、膵臓に異常があると値が上昇します。

アミラーゼとリパーゼの値などにより、膵障害への対応方法は異なります。グレード1または2の時は、投与が継続されます。グレード3でも明らかな膵炎の症状が見られない無症候の場合は、投与が継続されます。グレード4で無症候の場合は、一旦投与を休止し、消化器専門医と協議した上で、再投与が検討されます。グレード3以上で症状が認められた場合は投与を中止し、膵炎の治療を行います。

膵障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1アミラーゼまたはリパーゼ正常上限~1.5倍以下投与継続
2アミラーゼまたはリパーゼ正常上限1.5倍~2.0倍以下投与継続
3無症候性
アミラーゼまたはリパーゼ正常上限2.0倍~5.0倍以下
投与継続
4無症候性
アミラーゼまたはリパーゼ正常上限5.0倍以上
投与休止
3以上グレード3以上の症候性投与休止

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

胆道障害

免疫チェックポイント阻害薬による胆道障害は胆管炎の報告があります。ニボルマブでの報告(国内)では、18,562例中10例とまれです。胆道系酵素ALPやγ-GTPの値が高い肝障害があり、胆管壁が厚くなっている場合は、硬化性胆管炎が疑われます。

胃腸障害

免疫チェックポイント阻害薬による胃腸障害の頻度は、比較的高く30~40%で認められ、グレード3以上の障害は、10%前後といわれています。

主な症状は下痢や大腸炎で、悪心、腹痛、便秘、胃食道逆流症、出血性腸炎、腸閉塞、壊死性大腸炎、消化管穿孔(胃や腸の壁に穴が開く状態)なども認められます。グレード3以上の腸炎の好発時期は、イピリムマブとニボルマブでは約7~8週間、ペムブロリズマブで約6か月と報告されていますが、治療開始から数日での発現や、治療終了後から数か月後に発現した例もあり、いつでも起こる可能性があります。また、従来の抗がん剤や分子標的薬の投与による下痢とは対処法が異なるため注意が必要です。

胃腸障害がグレード1の時、医師は、投与を継続しながら注意深く経過観察します。粘液便や血便といった下痢症状や排便回数の増加、腹痛がみられる場合はグレード2で、投与を休止し対処療法が行われます。それでも症状が悪化した場合や、3~5日以内に改善しなかった場合は、グレード3となります。グレード3では、投与休止または中止されますが、ベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、医師は再投与を検討します。グレード4は投与が中止されます。

胃腸障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1下痢:ベースラインと比べ1日4回未満の排便回数増加
ベースラインと比べ人工肛門からの排泄量が軽度に増加
大腸炎:症状がなく、臨床所見または検査所見のみ
投与継続
2下痢:ベースラインと比べ、1日4~6回の排便回数増加
ベースラインと比べ、人工肛門からの排泄量が中等度に増加
大腸炎:腹痛、粘液便または血便
投与休止
ベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、再投与を検討
31週間より長く持続するグレード2も該当
下痢:ベースラインと比べ、7回以上の排便回数増加、便失禁、入院を要する
ベースラインと比べ、人工肛門からの排泄量が高度に増加、身の回りの日常生活動作に制限
大腸炎:高度の腹痛、腸管運動の変化、腹膜刺激症状
投与休止または中止
ベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、再投与を検討
4生命を脅かす、緊急処置が必要投与休止

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変
※ベースライン:治療開始前の検査値や状態のこと

腎障害

免疫チェックポイント阻害薬による腎障害の頻度は、単剤投与の場合、1~2%程度と高くありません。しかし、ニボルマブとイピリムマブ併用では4.5%、ペムブロリズマブ単剤では急性腎障害5.6%という報告もあります。また、重篤な障害が起こることがあるため、定期的な腎機能検査が行われます。

有害事象として、血中クレアチニン(筋肉で作られる老廃物の1つ)上昇、血中の尿素に含まれる窒素値の上昇、腎不全、自己免疫性腎炎、尿細管間質性腎炎などが報告されています。腎不全の自覚症状は、むくみ、頭痛、口渇、吐き気、食欲低下、乏尿、無尿、血圧上昇などで、急性尿細管間質性腎炎の自覚症状は、発熱、発疹、関節痛、腰痛、多尿、頻尿などです。

グレード1では、クレアチニン値を毎週観察しながら投与が継続されますが、グレード2以上は投与が休止されます。グレード2と3の場合でも、グレード1に改善すれば、医師は、少なくとも1か月以上かけステロイドを少しずつ減らし、感染症に対する抗菌薬の予防投与を検討。さらに、クレアチニン値を定期的に観察しながら再投与を検討します。グレード4の場合、毎日クレアチニン値を確認するなどし、グレード1に改善した時には、グレード2/3同様にステロイドを徐々に減らし、抗菌薬の予防投与が検討されます。

腎障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1血中クレアチニン値が施設正常上限を超えかつベースラインの1.5倍以下投与継続
2血中クレアチニン値が施設正常上限の1.5倍~3倍、またはベースラインの1.5~3倍投与中止
グレード1以下に回復した場合、再投与を検討
3血中クレアチニン値が施設正常上限の3倍~6倍、またはベースラインの3倍以上投与中止
グレード1以下に回復した場合、再投与を検討
4血中クレアチニン値が施設正常上限の6倍以上投与休止

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変
※ベースライン:治療開始前の検査値や状態のこと

神経・筋・関節障害

免疫チェックポイント阻害薬による神経・筋・関節障害の頻度は低いものの、障害される部位によってさまざまな症状が認められます。診断が容易ではないグレード2以上の神経・筋障害には注意が必要です。

神経障害は、中枢神経から末梢神経まであらゆる部位で起こる可能性があります。特に、重篤な後遺症や生命を脅かす事象となる自己免疫性脳炎、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性ニューロパチー、重症筋無力症、筋炎を発症した場合、投与は休止または中止になります。

これらの疾患でグレード2の症状がある場合は投与を休止し、原則的に永続的な投与を中止します。グレード1以下に回復した場合は、再投与が検討されます。グレード3以上では、永続的な投与は中止です。

特に重篤な免疫関連神経・筋障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
2中等度の症状、身の回り以外の日常生活動作の制限がある、免疫抑制治療が考慮される投与休止(原則、永続的な投与中止)
ベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、再投与を検討
3高度の症状、身の回りの日常生活動作困難永続的な投与中止
4生命を脅かす、緊急処置が必要永続的な投与中止

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変
※ベースライン:治療開始前の検査値や状態のこと

中枢神経障害の中でも、頭痛、めまい、味覚障害などは比較的頻度が高いですが、治療継続が可能な軽症例が多く認められています。末梢神経の感覚神経障害は、手足の先のしびれだけで、検査や医師の診断では感覚異常が認められない場合が多いです。また、脳神経障害では、顔面神経まひ、外転神経まひ、三叉神経痛、視神経炎などの症状がみられます。筋障害でみられる疾患は、筋痛、無症候性の血清クレアチンキナーゼ上昇、横紋筋融解症(骨格筋細胞の壊死や融解により筋細胞内成分が血液中に流出)、重症筋無力症、筋炎、リウマチ性多発筋痛症などです。

検査の所見のみで無症状または軽度の場合はグレード1で、投与が継続されます。グレード2になった場合、グレード1以下に回復するまで投与が休止され、ベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、医師は再投与を検討します。グレード3以上は、永続的な投与中止です。

免疫関連神経・筋障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1症状がない、あるいは軽度の症状がある、検査所見の異常だけで治療は必要ない投与継続
2中等度の症状、身の回り以外の日常生活動作の制限がある、対処療法か免疫療法が考慮されるグレード1以下に回復するまで投与休止
ベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、再投与を検討
3高度の症状、身の回りの日常生活動作の制限があり、免疫療法が必要永続的な投与中止
4生命を脅かす、緊急処置が必要永続的な投与中止

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変
※ベースライン:治療開始前の検査値や状態のこと

炎症性関節炎は、免疫チェックポイント阻害薬の治療中ではいつでも起こる可能性があり、小さな関節から大きな関節まで体の両側でみられます。

グレード1の軽度の関節炎や関節痛では、投与を継続します。グレード2では、投与を休止し、グレード1以下に回復した場合、再投与が検討されます。グレード3以上は投与を中止し、リウマチ、膠原病内科医と協議の上で、ベースラインまたはグレード1に回復した場合、再投与の可能性もあります。

関節炎のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1軽度の関節炎、関節痛投与継続
2紅斑(赤いぶつぶつ)・腫れを伴う中等度の関節炎、日常生活活動の制限投与休止
ベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、再投与を検討
3~4紅斑・腫れを伴う高度の関節炎、顕著な日常生活活動の制限、非可逆的な関節破壊投与中止
リウマチ・膠原病内科医と協議した上で、ベースラインまたはグレード1以下に回復した場合、再投与の可能性あり

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変
※ベースライン:治療開始前の検査値や状態のこと

眼障害

免疫チェックポイント阻害薬による眼障害の発症頻度は、1%未満といわれています。しかし、眼の障害は生活の質を下げるため注意が必要です。眼障害でみられる疾患は、ぶどう膜炎、末梢性潰瘍性角膜炎、強膜炎、上強膜炎、眼瞼炎(がんけんえん・まぶたの縁の炎症)、ドライアイなどさまざまです。主な症状は、霧視、飛蚊症、色覚変化、羞明(しゅうめい・強い光を受けた時の不快感や眼の痛み)、暗点、視野変化、複視、眼痛、眼瞼膨張などがみられます。

グレード1では投与が継続され、グレード2になると投与休止、グレード3以上では投与中止になります。

眼障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1無症状、臨床所見または検査所見のみ投与継続
2前部ぶどう膜炎の内科的治療が必要
症状あり、身の回り以外の日常生活動作の制限、中等度の視力低下(0.5以上)
投与休止
グレード1に改善したら再投与
3後部ぶどう膜炎、びまん性ぶどう膜炎
症状あり、身の回りの日常生活動作の制限、顕著な視力低下(0.5未満)
投与中止
4罹患眼の失明(視力0.1以下)投与中止

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

心筋炎・心血管障害

免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎・心血管障害は、頻度は高くありませんが、無症状から生命を脅かす症状まで、さまざまな病態があります。重篤な場合は、致死率が高いので注意が必要です。

心筋炎では、無症状で経過する症例から、致死的な不整脈、心臓のポンプ機能を失う心不全まで幅広い症状を呈します。自覚症状としては、動悸、息切れ、胸部圧迫感などの一般的な症状から、脈拍異常、末梢循環不全、心不全による全身倦怠感、奔馬調律(馬が走る音のような心音異常)、肺のうっ血、頸静脈怒張(血管が太くなり膨れ上がっている状態)、下腿(膝から足首まで)浮腫、低血圧などがみられます。

症状はないが検査値に異常があるグレード1では、医師は、検査や注意深い経過観察を行いながら投与継続します。軽度から中等度の運動や作業で症状が出るグレード2は、投与休止。病状が回復後、病態に応じて再投与が検討されます。安静時またはわずかな運動や作業でも症状があり治療を必要とするグレード3では、投与を休止し副腎皮質ステロイドホルモン薬による治療が行われます。病状の安定後、副腎皮質ステロイドホルモン薬を徐々に減らし、病状回復後、病態に応じて再投与が検討されます。生命を脅かすような、緊急処置が必要なグレード4は投与が中止され、集中治療が行われます。

心筋炎・心血管障害のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1無症状、臨床検査異常あり投与継続
2軽度から中程度の運動または作業で症状あり投与休止
病状回復後、病態に応じて再投与を検討
3重症で、安静時またはわずかな運動や作業で症状があり、治療が必要投与中止
病状安定後、副腎皮質ステロイドホルモン薬は徐々に減らす
病状回復後、病態に応じて再投与を検討
4生命を脅かす結果、緊急処置が必要投与中止
集中治療を行う

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

内分泌障害

免疫チェックポイント阻害薬による内分泌障害は、1型糖尿病、下垂体機能低下症、副腎皮質機能低下症、甲状腺機能異常症などがあります。

1型糖尿病

1型糖尿病は、自己免疫疾患の1つで、免疫細胞が膵臓にあるインスリンを分泌するβ細胞を破壊することで発症します。インスリンが出なくなるため、糖が分解できなくなり、血糖値が上昇し、口の渇き、多飲、多尿などの高血糖症状がみられます。重症化すると、全身倦怠感や意識障害などの症状が現れます。発見時の血糖値にかかわらず急速に血糖値が上昇する劇症1型糖尿病は、発症後すぐに治療を開始しないと命にかかわるため注意が必要です。

免疫チェックポイント阻害薬の投与前と投与ごとに血糖値を測定し、高血糖症状や血糖値に異常があれば、グレードにかかわらず速やかに専門医と協議し診断、治療が開始されます。インスリン治療により血糖コントロールが改善するまで休薬が検討されます。

また、2型糖尿病として治療中に、免疫チェックポイント阻害薬を投与した場合、病態が変化して1型糖尿病を発症(合併)することがあるので、血糖値の悪化に注意が必要です。

下垂体機能低下症

下垂体機能低下症は、脳の下垂体が分泌するホルモンが1種類以上不足することで、下垂体の機能が低下する病気。さまざまな原因で起こりますが、免疫チェックポイント阻害薬による下垂体の炎症も原因の1つです。抗PD-1/PD-L1抗体薬よりも、抗CTLA-4抗体薬の方が発生頻度は高いといわれています。

主な症状は、下垂体の腫れに伴う頭痛(抗CTLA-4抗体薬投与による症状、抗PD-1/PD-L1抗体薬ではあまりみられない)、倦怠感、食欲不振、好酸球増多、電解質異常(ナトリウムやカリウムなどの異常)、低血糖などです。検査値の異常のみの軽症の場合もありますが、全身倦怠感や食欲低下のため日常生活が困難になったり、ショック状態に陥るなど重症化することもあります。

グレード1は、症状がないまたは軽度、検査値に異常があるだけの状態。グレード2は、中等症で日常生活は可能でも治療が必要な状態です。重症または医学的には重大でも直ちに生命を脅かすものではなく、日常生活が困難な状態がグレード3です。グレード1では、必要に応じてホルモン補充療法を行い、症状が安定するまで投与を休止します。症状が改善した後、投与を再開します。グレード2と3では、ホルモン補充療法を行い、症状が安定するまで投与を休止します。症状が改善した後、投与を再開します。グレード4は、重度の低血圧、低血糖、ショックなどから急性副腎不全症が疑われ、緊急処置が必要な状態です。この場合、投与を休止し急性副腎不全症の症状が安定後、再投与します。

下垂体機能低下症のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1症状がない、または軽度の症状、検査値の異常だけで治療の必要はない必要に応じてホルモン補充療法を開始
症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与
2中等症で、最小限の治療が必要、日常生活は可能ホルモン補充療法を開始
症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与
3重症または医学的に重大だが生命を脅かすものではない、日常生活は困難ホルモン補充療法を開始
症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与
4副腎不全症の疑いで、重度の低血圧、低血糖、ショックなどの症状があり、生命にかかわるため緊急処置が必要投与休止
副腎不全症を脱し、症状が安定したら再投与

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

副腎皮質機能低下症

免疫チェックポイント阻害薬による副腎皮質機能低下症は、自己免疫により副腎皮質が障害される原発性と、下垂体機能低下症によるものがあります。いずれも頻度は低く、特徴は明らかではありませんが、急性の副腎皮質機能の低下による副腎不全症になると生命にかかわるため注意が必要です。

主な症状は、あまり体を動かさないのに疲れを感じる易疲労感、食欲不振、無気力、体重減少、悪心、下痢、腹痛などです。

グレード1は軽症で、好酸球増多や低ナトリウム血症などの検査値の軽微な異常にとどまる場合もあります。グレード3では、全身倦怠感や食欲不振のため生活が困難になります。グレード4では、副腎不全症のためショック状態になる可能性があります。

グレード1では、必要に応じてホルモン補充療法を行い、症状が安定するまで投与を休止します。症状が改善した後、投与を再開します。グレード2と3では、ホルモン補充療法を行い、症状が安定するまで投与を休止します。症状が改善した後、投与を再開します。急性副腎不全症の疑いで、重度の低血圧、低血糖、ショックなど生命を脅かす症状があり、緊急処置が必要な状態のグレード4では、投与を休止し急性副腎不全症の症状が安定後、再投与します。

原発性副腎皮質機能低下症のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1症状がない、または軽度の症状、検査値の異常だけで治療の必要はない必要に応じてホルモン補充療法を開始
症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与
2中等症で、最小限の治療が必要、日常生活は可能ホルモン補充療法を開始
症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与
3重症または医学的に重大だが生命を脅かすものではない、日常生活は困難ホルモン補充療法を開始
症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与
4急性副腎不全症の疑いで、重度の低血圧、低血糖、ショックなどの症状があり、生命にかかわるため緊急処置が必要投与休止
危機的な状態を脱し、症状が安定したら再投与

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

甲状腺機能異常症

免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺機能異常症は、内分泌障害の中で最も頻度が高いです。破壊性甲状腺炎に伴う甲状腺中毒症(血中の甲状腺ホルモンの働きが過剰になる状態)は投与早期に起こることが多く、その後、甲状腺機能低下症に至るとこともあります。発症当初から甲状腺機能低下症に至ることもあります。まれですが、抗CTLA-4抗体薬によるバセドウ病も報告されています。

甲状腺中毒症の主な症状は、グレード1では検査値の異常のみで無症状です。グレード2では、びまん性甲状腺腫大(甲状腺の全体的な腫れ)、動悸、発汗、発熱、下痢、震え、体重減少、倦怠感などがみられます。甲状腺機能低下症の主な症状は、甲状腺ホルモンの低下により倦怠感、食欲低下、便秘、脈が遅くなる、体重増加などがみられます。

グレード1の甲状腺中毒症では、定期的に検査を行いながら投与を継続します。グレード2以上では、動悸や手足の震えなどがある場合は、症状の改善もしくは検査値が正常になるまで投与の休止が検討され、症状が改善したら再投与されます。

甲状腺中毒症のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1無症状、検査値の異常のみ、もしくは軽度の臨床所見がある投与継続
2中等度の症状があるが、日常生活に制限はない症状の改善、検査値が正常化するまで投薬休止
症状が改善したら再投与
3高度の症状があり、身の回りの日常生活動作に制限がある、入院が必要症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与
4生命を脅かす、緊急処置が必要症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

グレード1の甲状腺機能低下症では、定期的に検査を実施しながら投与を継続します。グレード2以上では、症状がはっきりと現れたり、検査値が一定以上の数値になった場合は、甲状腺機能改善のための治療が行われます。医師は、症状の改善もしくは検査値が正常になるまで投与の休止を検討し、症状が改善したら再投与を行います。

甲状腺機能低下症のグレード別対処法

グレード症状投与可否
1症状がなく、甲状腺刺激ホルモンが10mlU/L未満投与継続
2中等症の症状があるが、日常生活に支障はない
甲状腺刺激ホルモンが10mlU/L以上
症状の改善、検査値が正常化するまで投薬休止
症状が改善したら再投与
3高度の症状があり、医学的に重大で、生命を脅かす恐れがあり入院が必要、日常生活が困難症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与
4生命を脅かす、緊急処置が必要症状が安定するまで投薬休止
症状改善後、再投与

出典:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.より改変

参考文献:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.

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