がん免疫療法の種類

がん免疫療法の種類について、ご紹介します。

エフェクターT細胞療法

エフェクターT細胞療法とはどんな治療法なのか、種類と開発状況を紹介します。

エフェクターT細胞は、がん細胞を直接攻撃し破壊したり増殖を抑制したりする免疫細胞です。キラーT細胞、ヘルパーT細胞、γδ(ガンマデルタ)T細胞、NK細胞、NKT細胞などがあります。これらのエフェクターT細胞を患者さんから採取し、体外で処理・増殖させてから再び患者さんに戻す治療がエフェクターT細胞療法です。エフェクターT細胞療法には、非特異的エフェクター細胞輸注療法、標的抗原特異的エフェクターT細胞輸注療法、非自己細胞を用いた細胞療法などがあります。

非特異的エフェクター細胞輸注療法

非特異的エフェクター細胞輸注療法には、活性化リンパ球輸注療法、γδT細胞輸注療法、NK細胞輸注療法、NKT細胞輸注療法などがあります。現在、保険適用された治療法はなく、自由診療として行われています。治療の直接的な効果に関しては、今のところ立証されていません。

NKT細胞輸注療法の1つであるNKT細胞標的がん治療は、2014年~2017年12月に国立病院機構で、ステージ2A~3Aの術後肺がんを対象に、先進医療Bとしてわれていました。現在、NKT細胞標的がん治療は、頭頸部がんを対象に先進医療Bを千葉大学で実施中です。また、「新規リガンドを用いたNKT細胞標的がん治療」というプロジェクト名の第Ⅰ相医師主導治験も慶應義塾大学病院で行われています。

※「先進医療」とは、まだ保険診療適用ではない高度な医療技術のうち、保険診療とすべきか否かを適切に評価するため、厚生労働大臣が認めた高度な医療技術のことです。「先進医療A」には、未承認薬等を含まない治療法、または人体への影響が極めて少ない未承認薬等を含む診断法として認められたものが含まれます。一方、「先進医療B」には、未承認の治療法を含む、または未承認の治療法を含まない場合でも臨床試験として、安全性および有効性の評価が特に必要とされる治療法が含まれます。先進医療にかかる費用は、公的医療保険が適用されず全額自己負担ですが、通常の治療と共通する部分は保険診療となります。

標的抗原特異的エフェクターT細胞輸注療法

標的抗原特異的エフェクターT細胞輸注療法は、腫瘍浸潤Tリンパ球輸注療法、腫瘍抗原特異的TCR遺伝子導入T細胞輸注療法、キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子導入T細胞輸注療法などがあります。

腫瘍浸潤Tリンパ球輸注療法は、がんを攻撃するために腫瘍組織に浸潤して来ていたTリンパ球を分離して、体外で培養した、腫瘍抗原特異的Tリンパ球を患者さんの体内に戻す治療法です。

腫瘍抗原特異的TCR遺伝子導入T細胞輸注療法は、患者さんの末梢血から採取したT細胞に腫瘍抗原特異的なT細胞受容体(TCR)遺伝子を体外で導入し、培養してから再び患者さんに戻す治療法です。臨床試験では、腫瘍縮小例、腫瘍消失例、長期寛解例が報告されていますが、重篤な有害事象の可能性があるため、まだ確立された治療法ではありません。

キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子導入T細胞輸注療法は、患者さんから採取したT細胞を、がん細胞の表面にある目印(CD19)を標的として攻撃するように遺伝子改変し、体外で培養したのち、患者さんに戻してがん細胞を攻撃する治療法です。

図1 CAR-T細胞の働き

CAR-T細胞の働き

CD19特異的CAR-T細胞がCD19抗原陽性のB細胞性腫瘍(白血病や悪性リンパ腫)を破壊する場合を示す

図2 CAR-T療法の流れ

CAR-T療法の流れ

CAR-T療法は、個々の患者さんから採取したT細胞を使用するため完全テーラーメイド治療です。臨床試験の結果だけでなく、承認後、実際に治療で用いる中でも治療効果が認められていますが、製造時間がかかる、製造不良のリスクがあるなどの課題もあります。また、サイトカイン放出症候群、神経毒性、血球減少、低ガンマグロブリン血症など、重篤な副作用もあり、経験のある専門医による慎重な適応判断が必要とされます。

CAR-T療法では、がん細胞の表面に発現する特定の抗原を標的として認識するように遺伝子が改変されています。現在、CD19という抗原を標的とした薬剤において、効果が示されています。CTL019(製品名:キムリア)とKTE-C19(製品名:イエスカルタ)という薬剤が海外で承認されています。2017年8月に、米国で若年成人の再発・難治性のB細胞性急性リンパ性白血病を対象にキムリアが承認され、同年10月にイエスカルタが、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫を対象に承認されました。2018年にはキムリアが、再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫にも適応拡大され、2018年、欧州でもキムリアとイエスカルタが承認されています。

国内では、2019年3月にCAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセル(製品名:キムリア)が、再発または難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病、および、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療薬として承認されました。

非自己細胞を用いた細胞療法

自家造血幹細胞移植療法は、自己細胞を用いますが、同種造血幹細胞移植療法は、非自己細胞を用いた細胞療法です。同種造血幹細胞移植療法では、ドナーから提供された非自己の造血幹細胞を移植するため、非常に強い副作用や合併症などが起こる可能性があります。また、移植する前に、大量の化学療法や全身への放射線治療を行います。ドナーと患者さんの白血球の型であるHLAの一致度が高いほど条件が良いため、兄弟、姉妹、親子など血縁者から提供されるケースが多いです。

同種造血幹細胞移植療法のように、非自己のエフェクターT細胞を輸注する治療法があります。患者さん自身のT細胞を使わないため、患者さんの状態による治療への影響が少ないのがメリットです。デメリットは、同種造血幹細胞移植療法のように拒絶反応、病原性のリスクが挙げられます。非自己のエフェクターT細胞による治療法の安全性や有効性は、まだ確認されていないため、確立された治療法ではありません。

参考文献:日本臨床腫瘍学会編. ”がん免疫療法ガイドライン 第2版”.金原出版,2019.

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