非小細胞肺がんの「抗がん薬治療」治療の進め方は?治療後の経過は?

監修者西尾誠人(にしお・まこと)先生
がん研有明病院 呼吸器内科部長
1963年大阪府生まれ。89年和歌山県立医科大学医学部卒業。92年国立がんセンター中央病院医員、93年マイアミ大学微生物・免疫学教室博士研究員を経て、95年癌研究会附属病院 内科医員、2004年同内科医長。06年癌研究会有明病院(11年がん研究会有明病院に改称)呼吸器内科副部長、12年1月より現職。

本記事は、株式会社法研が2012年3月24日に発行した「名医が語る最新・最良の治療 肺がん」より許諾を得て転載しています。
肺がんの治療に関する最新情報は、「肺がんを知る」をご参照ください。

がん細胞を攻撃し、がんの進行や再発を抑える

 がん細胞の分裂・増殖を抑える抗がん薬によって、肺の局所のがん、体のどこかに潜んでいるがんを死滅させたり、縮小させたりする治療法です。
 化学療法と呼ばれています。

がんを全身病としてとらえ抗がん薬によって治療

患者さんの情報を共有、治療方針を検討する

 現在、肺がんで死亡する患者さんは増加傾向にあり、1年間に7万人近くに上っています。この背景には、手術療法や放射線療法が非常に進歩してきてはいても、局所療法だけでは、どうしても再発を防ぎきれないという肺がん治療の実情があります。
 根治をめざす、あるいはがんを上手に抑えて患者さんがその人らしい生活をできるだけ長い期間維持していくには、肺とは遠いところに転移(遠隔転移)したがんや、目には見えないけれども全身のどこかに潜んでいる可能性のあるがん(潜在的ながん)をいかにコントロールするか。つまり、がんを全身病としてとらえて治療することが重要になってきます。
 そこで、大きな役割を果たすのが、血流に乗って全身にくまなく運ばれて効果を発揮できる抗がん薬です。

それぞれの病期ごとに目的に合わせた化学療法を行う

病期別化学療法の用い方

 これまで抗がん薬による治療は、主に手術療法や放射線療法といった局所療法では対応できない、すでに遠隔転移があるIV期の進行がんに対して行われていました。しかし、近年は、II~III期の手術後にも、潜在的ながんを死滅させ、再発を予防するための補助療法として積極的に導入されるようになってきています。
 それぞれの病期や患者さんの状態に合わせて、手術の前後に組み合わせる(II~III期:術前補助化学療法・術後補助化学療法)、放射線療法と組み合わせる(III期:放射線化学療法)、1種類の抗がん薬だけを用いる(IV期:単剤療法)、2種類以上を同時に用いる(IV期:多剤併用療法)といった方法で、根治をめざしたり、がんの増殖を遅らせたりします。
 「補助」という言葉がつきますが、転移や浸潤(しんじゅん)といった、もともと発生した場所にとどまらないがんの特性を考えると、全身に運ばれ、体のすみずみで作用する抗がん薬による治療は、がんをコントロールするためには理にかなった、非常に有効な治療であるといえます。

正常な細胞にも作用するのが難点 最近は分子標的薬の開発も

非小細胞肺がん

 がん細胞は、変異をおこしてしまったDNAが次々に複製され、活発に細胞分裂を繰り返しながら、どんどん増えていきます。こうした増殖の過程で、DNAの合成を阻止する作用や分裂を抑える作用によって、がんを攻撃し、縮小させたり消失させたりするのが、殺細胞性といわれる抗がん薬です。ただし、このような抗がん薬の作用は、がん細胞だけでなく、細胞分裂が盛んな正常細胞にも及び、副作用として、さまざまな症状が現れることになります。
 一方、最近非常に注目されているのが分子標的薬と呼ばれる種類の抗がん薬です。これは、がんの増殖のメカニズムにかかわる特定の分子を明らかにし、それを標的にしてがん細胞だけを狙い撃ちにする薬で、ここ数年、開発が進んできています。この種類の薬には、正常な細胞への影響を抑えることができるという大きなメリットがあります。
 しかし、分子標的薬はどの患者さんにも効くわけではなく、患者さんのがんの遺伝子の特徴によって効果が異なります。
 また、肺がんは組織型によって、大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分かれます。このうち非小細胞肺がんはおおむね腺(せん)がん、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、大細胞がんに分類されています。
 最近では非小細胞肺がんの場合、がん細胞の遺伝子のある種の変異と、分子標的薬の治療効果の関連性がわかってきています。そこで、現在は、分子標的薬の効果を予測するために、がん細胞の遺伝子のタイプを検査するようになっています。
 さらに、扁平上皮がんか、それ以外のがん(非扁平上皮がん)かという組織型の違いによっても、薬の効果や副作用の現れかたに違いがあることが明らかになっています。
 抗がん薬の選択にあたっては、がんの組織型、遺伝子変異のタイプの判定が、重要な条件となります。

肺がんに用いられる主な抗がん薬

組織型、遺伝子変異を加味して治療戦略を立てる

 各病期それぞれの目的で化学療法が行われますが、肺がんに対する化学療法の基本は、シスプラチン(商品名ブリプラチン、ランダなど)、またはカルボプラチン(商品名パラプラチンなど)に第三世代の抗がん薬を加える併用療法です。第三世代の抗がん薬というのは、主に1990年以降に承認された薬を指します。
 シスプラチンに何を加えるか、また、2剤を組み合わせたうえに、さらに何か上乗せするかといった戦略は、患者さんのがんの組織型、病期、全身の状態に、今は遺伝子のタイプも加味して立てられます。

がん研有明病院の治療戦略

治療の進め方は?

 シスプラチンに第三世代の抗がん薬をプラス、この療法を3~4週間で1コース。
 副作用の出かたや効果などにより、量を調整しつつ、通常4~6コース行います。

非小細胞肺がんに対する化学療法の進め方と治療後の経過とは?
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