【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年10月6日)

2025/10/06

文:がん+編集部

がん患者さんと医師のSDM(協働意思決定)調査結果を発表、現状と課題が明らかに

 メルクバイオファーマ株式会社は2025年9月18日、がん患者さんと患者さんの家族、がん治療を行う医師を対象とした「SDM(協働※意思決定)に関する意識と実態調査」の結果を発表しました。SDMとは、医師の専門的な医学情報と患者さんの価値観や希望を共有し合い、お互いが納得できる治療方法を一緒に決めていく取り組みのことです。

 調査では、過去1年間にがん治療を受けたことがあるがん患者さん1,000人、患者さんの家族1,000人、がん治療に関わる医師200人を対象に行われました。

 結果として、治療方法への満足度が高い進行がん患者さんのSDM実施スコア(医師との話し合いや情報共有がより充実しているかの回答をスコア化したもの、100ポイントが満点)は71.4ポイントでしたが、満足度の低い患者さんでは53.1ポイントと、18.3ポイントの差がありました。また、「納得できる治療法であること」を大切にできた患者さんほど、SDM実施スコアが高いこともわかりました。

 さらに、患者さんの79%がSDMという言葉を知らないものの、95.5%の患者さんが「医師と話し合って一緒に治療方法を決めたい」と希望していることも明らかになりました。その一方、約4人に1人の患者さんが「何を話してよいかわからない」という理由で治療の意思決定に関われなかった実態も浮き彫りになりました。

 ※「協働」は「共同」と記載される場合もあります

イミフィンジ、膀胱がんの周術期免疫療法として国内承認

 アストラゼネカ株式会社は2025年9月19日、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)が、膀胱がんにおける術前・術後補助療法として厚生労働省より承認を取得したと発表しました。膀胱がんの周術期治療における免疫療法薬としては日本初の承認となります。

 この承認は、1,063人の筋層浸潤性膀胱がん患者さんを対象とした国際共同第3相試験であるNIAGARA試験の結果に基づいています。試験では、手術前にデュルバルマブと化学療法を併用、手術後にデュルバルマブ単独治療を行った患者さん(デュルバルマブ治療群)において、従来の術前化学療法のみを受けた患者さん(対照群)と比較して、病気の進行や再発、死亡のリスクが32%低下、統計学的に有意な改善が認められました。また、死亡リスクも25%低下し、2年後の生存率は対照群の75.2%に対し、デュルバルマブ治療群では82.2%でした。

 日本では2020年に2万3,185人が膀胱がんと診断されています。筋層浸潤性膀胱がんは新規診断の約25~30%を占めますが、標準治療を受けた患者さんの約50%が術後に再発を経験するという課題がありました。今回の承認により新たな治療選択肢が提供されることになります。

テセントリク、希少な血液がん「節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型」へ適応拡大

 中外製薬株式会社は2025年9月19日、アテゾリズマブ(製品名:テセントリク)について、再発または難治性の節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型(ENKL)に対する適応拡大の承認を厚生労働省より取得したと発表しました。ENKLに対する国内初の免疫チェックポイント阻害薬となります。

 ENKLは主に鼻腔に発症する希少な悪性リンパ腫で、小児から成人まで年齢に関わらず発症します。日本では悪性リンパ腫全体の約0.68%と非常にまれな疾患です。進行期では初回治療後に約6割の患者さんが再発し、再発後の標準治療は確立されていませんでした。

 今回の承認は、国立がん研究センター中央病院をはじめとする医師主導のATTACK試験の結果に基づいて行われました。この試験は、希少がんの治療開発を推進する「MASTER KEYプロジェクト」の一環として実施され、14人の再発または難治性ENKL患者さんを対象にアテゾリズマブの有効性と安全性が評価されました。

 アテゾリズマブは成人だけでなく12歳以上の小児にも使用可能で、標準治療が確立されていなかった患者さんに対する新たな治療選択肢となります。また今回、既存の肺がんと乳がんの適応において4週間ごとの投与法も追加承認されました。