【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年10月27日)

2025/10/27

文:がん+編集部

HER2陰性進行・再発胃がん、新薬ONO-4578併用療法が臨床試験で良好な結果

 小野薬品工業株式会社は2025年10月9日、EP4拮抗薬ONO-4578が胃がん治療の第2相臨床試験(ONO-4578-08試験)で主要評価項目を達成したと発表しました。

 胃がんは日本で年間約12.6万人が新たに診断され、死亡者数は約4.3万人と、がんの中でも3番目に多い疾患です。HER2陰性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんでは、一次化学療法の標準治療として抗PD-1抗体と化学療法の併用療法が承認されていますが、依然として治癒は困難であり新しい治療選択肢が求められていました。

 この試験は、HER2陰性で化学療法未治療の進行・再発胃がん患者さんを対象に、日本、韓国、台湾で実施され、ONO-4578と抗PD-1抗体オプジーボおよび化学療法の併用療法の有効性が評価されました。ONO-4578併用群は、プラセボ併用群と比較して無増悪生存期間を統計学的に有意に延長し、安全性上の新たな懸念も認められませんでした。

 ONO-4578は、がん細胞が産生するPGE2という物質がEP4受容体を介して免疫の働きを抑制することを防ぎ、がんを排除する免疫応答を回復させる新しいメカニズムの薬剤です。

 この成果から、胃がん患者さんの新たな選択肢が広がることが期待されます。

血液がん診断に新たな検査法、採血だけで骨髄増殖性腫瘍を識別

 順天堂大学は2025年10月14日、血液がんの一種である骨髄増殖性腫瘍の診断に有用な新しいバイオマーカー「CREB3L1遺伝子」の検査を、株式会社エスアールエルと共同で実用化したと発表しました。

 骨髄増殖性腫瘍は、骨髄で血液成分が異常に増える血液がんです。これまで正確な診断のためには痛みを伴う骨髄検査が必要で、他の要因による血球増加(反応性血球増加症)との区別も重要な課題でした。両者は治療法や経過が全く異なるため、正確に見分けることが患者さんにとって極めて重要です。

 今回実用化されたCREB3L1遺伝子検査は、簡単な採血だけで診断が可能です。研究では、健康な人や反応性血球増加症の患者さんではCREB3L1遺伝子の発現量が1コピー/μL未満だったのに対し、骨髄増殖性腫瘍の患者さんでは全例で1コピー/μL以上となり、正確に診断する能力があると確認されました。

 この検査は全国どの医療機関からでも依頼可能で、患者さんの負担を大幅に軽減できます。今後は診断基準の確立や治療効果の監視など、さらなる臨床応用が期待されています。

がんを支える細胞を標的に、新しい創薬手法で治療薬候補を多数発見

 早稲田大学は2025年10月9日、体内に近い立体的ながんの培養組織「3Dミクロ腫瘍」を使った創薬研究により、がん細胞の周囲にある「サポート役」の細胞を標的とする新しい治療法を発見したと発表しました。

 従来のがん治療は、がん細胞そのものを攻撃する薬が中心でした。しかし近年、がんの周囲にいる血管細胞や免疫細胞、線維芽細胞などが、がんの増殖や転移を「サポート」していることがわかってきました。

 研究チームは、実際の患者さんの腫瘍に近い3Dミクロ腫瘍を使って400種類以上の薬剤の効果を調べ、選び出しました。その結果、従来の平面培養の組織を使った際は見逃されていた薬剤を3倍以上多く発見できました。

 特に注目されたのは「ドラマピモド」という薬剤です。この薬はがん細胞を直接攻撃するのではなく、がん細胞の周囲に存在し、コラーゲンなどを産生して腫瘍を支える「腫瘍随伴線維芽細胞」の働きを弱めることで、がんの増殖を抑制します。さらに、既存の抗がん剤や免疫治療薬との併用で高い治療効果が得られることも確認されました。

 この研究手法は将来的に、患者さんの腫瘍組織を使って最適な治療薬を選ぶ個別化医療や、膵臓がんなどの治療が困難ながんへの新しいアプローチにつながると期待されます。