岡山済生会総合病院 栄養サポートチーム(NST)第二部

「シームレスな栄養管理が行えるように~入院前から退院後まで~」

栄養科科長 大原秋子さん
栄養科科長 大原秋子さん

 「食べること」は栄養を摂るだけでなく、楽しみの1つでありとても大事です。食事が食べられないとご本人は気持ちが落ち込み、家族も心配になります。
 年々、入院平均在院日数が短くなり、入院中だけで栄養サポートを行うことは難しくなってきています。「がん」と診断されたことで食事量が減り、痩せられる方も少なくありません。特に手術や化学療法を予定していて体力が落ちている場合は、入院前から栄養状態を改善していくことが大切になります。入院前に栄養状態の把握、身体計測や体成分分析器(InBody770)による筋肉量・体脂肪量の測定などを行って、その方にあった食事量や食べ方の工夫についてお話をしています。食事だけでは栄養が足りないときは、栄養補助食品を紹介し、身体や気持ちの準備をして治療に備えていただきます。
 最近はドラッグストアやスーパーなどに栄養補助食品がたくさん販売されています。栄養補助食品というとドリンクタイプのものが有名ですが、ドリンクタイプのものをゼリーやシャーベットにするなどすると飽きずに摂ることができます。ドリンクタイプ以外にも佃煮や豆腐、スープなど最近は普通においしくいただけるものがたくさん販売されているんです。また家族で食べる料理にひと工夫するだけで栄養を強化することもできるんです。
 入院中は、病棟担当の管理栄養士が栄養サポートを行います。病態に合った食事をお出しして食事が進まない場合は、好きなものや食べやすいものを聞いて、患者さん一人ひとりに合わせたメニュー調整を積極的にしています。まずは食べることが大切です。退院前にはご家族と一緒に栄養食事指導を行います。家に帰られてからの栄養バランスの良い食事の摂り方をお話しています。食べられない時に「食べて」ということは苦痛になります。身体に良いものにこだわるより、まずは食べたいときに食べられるものを少量から始めるのがコツです。ここでも栄養補助食品は強い味方です。足りない栄養を手軽に補うことが出来るので多種類の中から患者さんの嗜好(しこう)に合ったものを紹介しています。また、食事で困ったときはいつでも相談できるように栄養科直通の電話番号を伝え、退院後も安心して療養して頂けるようにしています。
 転院される場合は、当院での栄養管理の状況や課題など記載した栄養情報提供書を作成し、転院先の管理栄養士宛に届くようにしています。在宅医療の場合には、多職種による退院時カンファレンスに参加して情報共有し、栄養管理に関する情報を記載してお渡ししています。切れ目のない栄養管理ができるように多職種と地域連携をして患者さんや家族に関わっています。
 食べることに悩んだら、まずは管理栄養士にたずねてみてください。

「味覚障害や食欲不振には適切なアドバイスを」

がん化学療法センター 乳がん看護認定看護師 岡本直美さん
がん化学療法センター 乳がん看護認定看護師 岡本直美さん

 抗がん薬治療を受けられている患者さんは、治療に伴う様々な副作用が見られます。吐き気や嘔吐、食欲不振、味覚障害、口内炎など食事に影響してくるものもあります。
 がん化学療法センターでは、治療中の患者さんに様々な副作用の程度や日常生活で困り事がないかなどお話を伺っています。副作用の種類や程度によっては、食欲不振となり食事摂取量が低下し体重減少を引き起こす原因になります。そのため、抗がん薬治療を受けられている患者さんの栄養状態を評価していくことはとても大切です。
 味覚障害は多くの患者さんに見られます。甘さを感じなくなったり、食べ物そのものの味がしなくなったりすると、食欲は余計に減退します。主婦であれば料理の味付けがわからなくなり、落ち込んでしまわれることも。一般的には口腔ケアをしっかりするようにアドバイスするのですが、味付けのときはご主人やお子さん、家族にお願いするのも良いですね。また患者さんとそのご家族の方に食事が摂れるよう食事形態の紹介や少しの量で高カロリーの食事が摂れるよう栄養補助食品の紹介をしています。また、栄養科の協力も得て栄養補助食品紹介コーナーも設けており、患者さんが実際に手に取ってみたり、試飲していただいたりできる環境も整えています。
 私たちは抗がん薬治療もですが、患者さんをみています。しっかりした身体は治療を続ける上ですごく大切です。しっかりした身体のもとは食べること。私たちが日頃から「栄養が大事」「体重を測って」と言っているためか、患者さんの栄養に対する意識は高いですね。これからも患者さん自身や家族も栄養に対する意識を持てるように働きかけていきたいと思います。

「吐き気なしの抗がん薬治療を目指します」

がん薬物療法認定薬剤師 藤森浩美さん
がん薬物療法認定薬剤師 藤森浩美さん

 抗がん薬治療中の患者さんは様々な症状があります。特に私たちが気になっているのは吐き気です。吐き気があると食事が摂りにくく、栄養状態が悪くなり、抗がん薬治療を続けることができなくなり、治療成績にもかかわってきます。最近は吐き気止め(制吐薬)が進歩していて、適切に使えば吐き気をかなりコントロールすることができます。吐き気のメカニズム(発症機序)は多種多様なので、患者さんに聞き取りをしながら、様々な種類の制吐薬から適切なものを提案します。漢方薬も普通にアドバイスしています。
 当院は院内処方なので、化学療法に携わる薬剤師は薬剤指導までしっかり行ないます。様々な症状をチェックしながら、薬を処方できるメリットがあるんです。栄養剤の中には薬品もあります。私たちも栄養に興味を持っているんです。