【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年11月4日)
2025/11/04
文:がん+編集部
胃がん腹膜播種の新治療法を開発、歯の幹細胞とα線を組み合わせマウスの生存率改善
東京大学は2025年10月17日、胃がんが腹膜に転移した「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」に対する新しい治療法を開発したと発表しました。
胃がんが進行すると、がん細胞が腹膜に広がる腹膜播種が発生し、外科手術や化学療法では十分な効果が得られにくいことから、新たな治療法の開発が長年求められてきました。
研究グループは、抜いた歯から得られる「歯髄由来幹細胞」と、強力な放射線(α線)を出す「アスタチン-211」を組み合わせた治療法を開発。まず、がん細胞の近くに集まりやすい性質がある幹細胞に、アスタチンを効率的に取り込む特殊な遺伝子を組み込みました。この改良型幹細胞を腹腔内に投与後、アスタチン-211を投与すると、5分で幹細胞がアスタチンを取り込み、強力なα線を放出してがん細胞を選択的に破壊することがわかりました。
α線は高いエネルギーを持ちながらも届く距離が短く、正常な組織を傷つけにくいという特長があります。腹膜播種のマウスを用いた動物実験では、がんの進行を抑えること、生存率も有意に改善することが確認されました。
今後は臨床応用に向けた安全性と有効性の検証が行われる予定です。
切除可能な膵臓がん、術前化学療法で生存率改善・再発率も低下
岡山大学は2025年10月20日、切除可能な膵臓がんに対して手術前に抗がん剤治療を行う「術前化学療法(GS療法)」により、従来の手術を先行する治療法と比べて長期生存率が改善したと発表しました。
膵臓がんは早期発見が難しく、進行も早いため、5年生存率が約10%と予後不良ながんの一つです。手術で切除できても、半数以上の患者さんが再発することが問題となっています。
GS療法は、点滴薬のジェムシタビンと内服薬のS-1を組み合わせた治療で、2つの薬剤が互いの作用を高め合うことが期待されます。岡山大学病院では2019年から、手術の前にこの治療を行う集学的治療を導入してきました。
今回の研究では、術前化学療法を受けた81人と、従来の手術先行治療を受けた164人を比較。その結果、2年後の全生存率は術前化学療法群で83%、手術先行群では61%となり、術前化学療法により有意に予後が改善されました。また、再発率も術前化学療法群で7.5%、手術先行群で22.2%と大幅に低下しました。また、安全性も高く、術前化学療法群で約9割の患者さんが予定の治療を完遂し、全例が手術を受けたことが確認できました。
今後、切除可能な膵臓がんの新たな標準治療につながることが期待されます。
ALK陽性転移性肺がん、アレセンサの臨床試験で生存期間81か月を達成
中外製薬株式会社は2025年10月21日、同社が開発した「アレセンサ」の臨床試験で、ALK陽性転移性非小細胞肺がん患者さんの生存期間中央値が従来の標準治療薬を上回る結果を達成したと発表しました。
ALK陽性非小細胞肺がんは、肺がん全体の約3~5%を占める肺がんです。今回、未治療のALK陽性転移性非小細胞肺がん患者さんを対象とした国際共同第3相ALEX試験の最終結果が発表されました。
同試験では、アレセンサによる治療を受けた患者さんの生存期間中央値は81.1か月(約6年9か月)に達し、従来の標準治療薬クリゾチニブの54.2か月を上回りました。また、がんが進行するまでの期間を示す奏効期間中央値も、アレセンサが42.3か月とクリゾチニブの11.1か月の約4倍の長さを示しました。
安全性についても良好で、主な副作用は便秘(40.1%)でした。アレセンサの投与期間中央値は28.1か月とクリゾチニブの10.8か月より長期にわたりましたが、新たな安全性の問題は認められませんでした。
また、手術でがんを切除したALK陽性肺がん患者さんを対象とした別の臨床試験(ALINA試験)でも、アレセンサによる術後補助療法が従来の化学療法と比べて再発リスクを低減することが確認されました。

