[177Lu]Lu-PSMA-617、PSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんに対し無増悪生存期間を改善

2023/01/13

文:がん+編集部

 前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんを対象に、[177Lu]Lu-PSMA-617の有効性と安全性を評価したPSMAfore試験の結果が発表されました。[177Lu]Lu-PSMA-61により、統計学的有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の改善が認められました。

[177Lu]Lu-PSMA-617、標的化合物と治療用放射性核種を組み合わせた放射性リガンド療法の静脈内注射剤

 ノバルティスは2022年12月5日、PSMAを標的とする放射性リガンド療法である[177Lu]Lu-PSMA-617を評価したPSMAfore試験で、主要評価項目を達成したことを発表しました。

 PSMAfore試験は、アンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)による治療後のPSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さん469人を対象に、[177Lu]Lu-PSMA-617とARPIを比較した第3相試験です。主要評価項目は画像診断に基づく無増悪生存期間、主な副次的評価項目は全生存期間などでした。

 解析の結果、[177Lu]Lu-PSMA-617はARPIと比較して無増悪生存期間の統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。安全性に関しては、予期しない安全性所見は認められませんでした。

 [177Lu]Lu-PSMA-617は、標的化合物(リガンド)と治療用放射性核種(放射性同位元素lutetium-177)を組み合わせた放射性リガンド療法の静脈内注射剤です。血中に投与された[177Lu]Lu-PSMA-617は、膜貫通タンパク質であるPSMAを発現する前立腺がん細胞などの標的細胞に結合します。結合すると、放射性同位元素からのエネルギー放出によって標的細胞や近傍の細胞が損傷し、細胞の複製能力を阻害や細胞死を誘発します。

 同社のグローバル医薬品開発担当プレジデント兼チーフメディカルオフィサーであるShreeram Aradhy医師は、次のように述べています。

 「今回の有望な第3相臨床試験結果の発表をうけて、[177Lu]Lu-PSMA-617は、タキサン系化学療法を投与されていない前立腺がんの患者さんに対して、臨床的に意義のある効果を実証した初めてのPSMA標的放射性リガンド治療薬となりました。より多くの前立腺がんの患者さんに診断後早期にこの革新的な早期治療の選択肢をお届けできるよう、医療当局とデータを協議していきたいと考えています」