【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年7月28日)

2025/07/28

文:がん+編集部

若年発症肺腺がんのゲノム解析実施、一部でBRCA2やTP53遺伝子の遺伝的要因の関与が判明

 国立がん研究センターは2025年7月9日、日本人の若年発症肺腺がんを対象とした初の大規模ゲノム解析の調査結果を発表しました。

 研究グループは、40歳以下で発症する肺腺がんの原因や特徴を明らかにするため、若年発症肺腺がん患者さん348人を含む日本人の肺腺がん患者さん1,773人の全ゲノム・全エクソームシークエンス解析を実施しました。その結果、若年発症患者さんは非若年発症患者さんと比較してBRCA2やTP53遺伝子の生殖細胞系列病的バリアント(生まれつき持っている、病気の発症と関連した遺伝子の変化)の頻度が高いことが判明しました。

 また、BRCA2遺伝子の病的バリアントがある患者さんの腫瘍では、DNA修復機能に異常があることが確認され、DNA修復経路を標的とし乳がんや卵巣がん治療に用いられるPARP阻害薬が有効である可能性が示唆されました。さらに、DNA修復に関わるALKBH2遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントが、若年発症の肺腺がん患者さんの新たなリスク因子として特定されました。

 進行期で発見されることが多く予後不良の若年発症肺腺がんに対し、遺伝子情報に基づいた新たな治療アプローチの必要性が示されました。

日本人労働者のがん診断後10年生存率に職種間格差、大規模解析で明らかに

 産業医科大学は2025年7月7日、職種別にがん診断後10年の予後を調べた解析結果を発表しました。

 研究グループは、神奈川県地域がん登録における約4万人の大規模データを用いて、がんの診断と治療、最長期間従事した職種に関する情報がある20~65歳までの労働者を対象に、がん診断後10年のがんを含む死亡リスクや生存率を職種別に分析しました。

 その結果、製造・建設・鉱業・運輸業などに従事するグループの10年生存率は、全原因死亡を含めた生存率、がん死亡のみを対象とした生存率がともに他の職種と比較して低いことが判明しました。また、進行がんの人の割合も高いことがわかりました。死亡リスクの解析では、専門職・管理職に従事するグループと比較して、製造・建設・鉱業・運輸業のほか農業・林業・漁業に従事するグループで死亡リスクが高い傾向でした。さらに、年齢が50歳を超える世代では、こうした職業間の格差がより大きくなる傾向もみられました。

 この研究により、職種による健康格差の実態と、それに応じたがん対策の必要性が明らかになりました。

新しいがん治療用ウイルスの抗腫瘍効果メカニズムを解明

 大阪大学は2025年7月11日、がん治療用ウイルスの抗腫瘍効果メカニズムを解明したと発表しました。

 研究グループは、これまでにアデノウイルスを改良した35型治療用ウイルス(35型Ad)を開発していました。このウイルスはがん細胞を破壊する腫瘍溶解性を持ち、従来の5型ウイルス(5型Ad)と比較して同等以上の殺細胞効果があり、かつ5型Adで課題となっていた免疫システムからの阻害も受けないという特徴がありました。

 今回の研究で、この35型Adは、がん細胞を直接破壊するだけでなく、がんを攻撃する免疫細胞を活性化させるという、二つの仕組みで効果を発揮することが明らかになりました。

 この研究成果により、治療が困難ながんに対する、新たな治療法の開発につながることが期待されます。