【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年6月9日)
2025/06/09
文:がん+編集部
日本人大腸がん患者さんの5割で腸内細菌による発がん要因を発見
国立がん研究センターは2025年5月21日、日本人の大腸がん患者さんの5割に、一部の腸内細菌から分泌されるコリバクチン毒素による変異パターンが存在することが判明したと発表しました。
今回、日本を含む11か国の大腸がん患者さん981症例を対象とした全ゲノム解析が実施されました。その結果、コリバクチン毒素による変異パターンは、70歳以上の高齢者症例と比べて50歳未満の若年者症例(大腸がん全体の約10%を占める)で3倍多い傾向が見られました。日本をはじめ世界的に患者数の増加が問題とされている若年者大腸がんの重要な発症要因である可能性が示唆されました。
また、大腸がん初期段階に起こるドライバー異常であるAPC変異の15%がコリバクチン毒素による変異であることが判明。コリバクチン毒素によるDNA変異が、大腸がん発症早期から関与していることが示唆されました。
今後、コリバクチン毒素による変異と国内の患者数増加との関連性や、それ以外の発がん要因、特徴的なドライバー異常のメカニズムを解明することで、大腸がんに対する新たな予防法や治療法の開発につながることが期待されます。
高浸透圧・高粘度のカルボプラチンによるリンパ節転移の新治療法を確立
東北大学は2025年5月23日、高浸透圧・高粘度の抗がん剤カルボプラチンを用いたリンパ系ドラッグデリバリーの最適化に成功したと発表しました。
転移リンパ節では腫瘍の進展により血管やリンパ洞が消失する局所欠損が生じるため、血管経由での薬剤送達には限界があり、特に初期のリンパ転移に対して十分な効果が得られないという課題がありました。
研究グループは、薬剤をリンパ流に乗せて標的リンパ節に選択的に届ける送達法(LDDS)を開発し、従来の静脈内投与と比較して転移リンパ節に対する優れた治療効果を確認していました。今回、カルボプラチンを用いたLDDSが転移リンパ節に対して長期的な治療効果を発揮するための最適な投与条件を検討しました。
ヒトと同程度の大きさのリンパ節を有するモデルマウスを使用した実験では、リンパ節への薬剤投与が容易に実施できることが確認されました。また、転移リンパ節に高浸透圧・高粘度カルボプラチンを10 µL/minで2回注入することで、薬剤の保持と腫瘍増殖の抑制が確認されました。
この手法を用いることで必要な投与回数を最小限に抑えることが可能となり、身体的負担の軽減と高い安全性を兼ね備えた低侵襲がん治療の実現が期待されます。
転移性ホルモン感受性前立腺がん対象、イクスタンジを評価したARCHES試験の追跡結果発表
アステラス製薬株式会社は2025年5月23日、ARCHES試験の長期追跡調査の結果を発表しました。
ARCHES試験は、転移性ホルモン感受性前立腺がん患者さん1,150人を対象に、「エンザルタミド(製品名:イクスタンジ)+アンドロゲン除去療法」と「プラセボ+アンドロゲン除去療法」を比較した第3相試験です。
61.4か月(中央値)の追跡調査の結果、「エンザルタミド+アンドロゲン除去療法」は「プラセボ+アンドロゲン除去療法」と比較して統計学的有意に全生存期間を延長し、死亡リスクが30%減少しました。5年生存率は、それぞれ66%と53%でした。