がんウイルス療法、悪性黒色腫対象の医師主導治験を開始

2019/09/20

文:がん+編集部

 悪性黒色腫に対する、第3世代のがんウイルス療法の医師主導治験が開始されます。

T-hIL12、最新式第3世代のがん治療用ヘルペスウイルス

 信州大学医学部附属病院は8月27日、がんに対する免疫を強力に引き起こす機能を付加した第3世代のがん治療用ヘルペスウイルス「T-hIL12」の、悪性黒色腫に対する医師主導治験を開始することを発表しました。同病院皮膚科の奥山隆平教授と東京大学医科学研究所付属病院脳腫瘍外科の藤堂具紀教授らの研究グループが臨床開発しているがんウイルス療法です。

 今回開始された医師主導治験は、悪性黒色腫患者さんを対象にT-hIL12の安全性と有効性を評価する第1および第2相臨床試験です。本臨床試験は、信州大と東大の2施設で実施予定、参加希望の患者さんの募集が8月27日から始まっています。

 がんウイルス療法は、がん細胞に感染させたウイルスが増殖することにより、がん細胞を直接破壊する治療法です。正常細胞では増殖せず、がん細胞だけで増殖するように、遺伝子工学技術を使って設計されたウイルスが使われます。

 東大の藤堂教授らは、口唇ヘルペスウイルスの3つのウイルス遺伝子を人工的に改変した、第3世代のがん治療用ヘルペスウイルス「G47δ」を2009年から臨床応用を進めており、悪性脳腫瘍の一種である膠芽腫を対象とした医師主導試験で高い治療効果を確認しています。

 今回臨床試験で使用されるT-hIL12は、G47δをベースに免疫を強力に刺激する因子であるインターロイキン12の遺伝子を組み込んだ、最新の第3世代がん治療用ヘルペスウイルスです。研究グループは、G47δの実用化を見据え、さまざまな機能を付加した次世代抗がんウイルスの開発を進めており、今回のT-hIL12の治験もその臨床応用の第1弾として開始されます。