【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年5月7日)

2025/05/07

文:がん+編集部

HER2陽性乳がん対象、1次治療としてエンハーツを評価したDESTINY-Breast09試験の中間解析結果を発表

 第一三共株式会社は2025年4月21日、DESTINY-Breast09試験の中間解析結果を発表しました。

 DESTINY-Breast09試験は、HER2陽性の進行性または転移性乳がん患者さん1,157人を対象に、1次治療としてトラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)または「トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ」併用療法と「タキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ」併用療法(THP療法)を比較した第3相臨床試験です。

 中間解析の結果、「トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ」併用療法はTHP療法と比較して、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無増悪生存期間の改善を示しました。全生存期間については、初期の改善傾向が認められたものの、中間解析時点では十分なフォローアップ期間に達していなかったため、引き続き評価が継続されます。

乳がんの増殖や転移に関わる新たなメカニズムを発見

 広島大学は2025年4月23日、乳がん増悪化の新規メカニズムを発見したことを発表しました。

 研究グループは、既に乳がん細胞の増殖や遊走に関わることが知られていた神経ペプチド受容体「VIPR2」が乳がん細胞内で二量体化(2つの同じ分子が結びついて1つのまとまりになる)することを新たに明らかにし、この二量体化が、がんの増殖や転移の要因であることを突き止めました。また、二量体化に必要な領域を同定し、この領域をがん細胞に過剰発現させることで競合的に二量体化を阻害できることを確認。さらに、マウスを用いた動物実験で、二量体化したVIPR2が乳がんの増悪化に関与していることを明らかにしました。これらのことから、VIPR2の二量体化を防ぐことで乳がんの進行を止める新薬の開発が期待されます。

大腸がんの内視鏡手術「ESD」、年齢別の安全性が明らかに

 横浜市立大学は2025年4月25日、日本全国のDPC(診断群分類)データを用いて大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の安全性を年齢別に評価した結果を発表しました。DPCデータとは、全国の病院から収集される入院患者の診療情報データベースです。

 大腸ESDは、早期大腸がんに対して根治的切除を可能とする内視鏡治療として広く普及していますが、高度な技術を要し、術後出血や穿孔などの有害事象のリスクも伴います。研究グループは2012年~2023年の全国DPCデータから60歳以上の大腸ESD約14万例を対象に解析しました。

 その結果、全有害事象(院内死亡・穿孔・外科手術介入・誤嚥性肺炎・術後出血・血栓塞栓症)は年齢とともに増加し、60~64歳の5.3%に対し、90歳以上では9.2%となりました。特に術後出血リスクが高齢者で高く、抗凝固薬使用およびBMI≥30が主なリスク因子となっていることが判明しました。

 今回の調査結果により、これまでデータが不足していた超高齢者への術前説明を、科学的根拠に基づいて行うことが可能となります。