リムパーザ、BRCA遺伝子変異陽性の転移性膵臓がんの治療薬として欧州で承認

2020/08/20

文:がん+編集部

 オラパリブ(製品名:リムパーザ)が、BRCA遺伝子変異陽性の転移性膵臓がんの治療薬として欧州で承認されました。

POLO試験では、無増悪生存期間をプラセボ群より約2倍延長

 英アストラゼネカ社と米メルク社は7月8日、オラパリブが、BRCA遺伝子変異陽性の転移性膵臓がんの患者さんの治療薬として、欧州医薬品庁から承認されたことを発表しました。適応は、「初回化学療法において、少なくとも16週間の白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法で病勢進行が認められなかった生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性の転移性膵腺がん患者さんに対するオラパリブ単剤維持療法」で、今回の承認は、第3相POLO試験の結果に基づくものです。

 POLO試験は、維持療法としてオラパリブ単剤300mgを1日2回投与するグループとプラセボを投与するグループを比較した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設共同第3相試験です。白金製剤ベースの一次化学療法で病勢進行が認められなかったBRCA遺伝子変異陽性の膵臓がんの患者さん154人を3:2の割合で無作為化し、病勢進行が認められるまで投与しました。主要評価項目は、無増悪生存期間、副次評価項目は全生存期間、二次進行または死亡までの期間、客観的奏効率、および健康関連のQOLでした。

 解析の結果、無増悪生存期間の中央値はオラパリブ7.4か月、プラセボ3.8か月で、約2倍延長しました。安全性と忍容性はこれまでの試験と概ね一致していました。

 POLO試験の治験共同責任医師で、シカゴ医科大学教授であるHedy L.Kindler氏は次のように述べています。

 「今回の承認により、転移性膵臓がんの発生率が最も高い地域である欧州において、本疾患を有する患者さんに対するバイオマーカー主導による治療の新たな時代への道が開かれました。これからは、忍容性が良好な標的治療オプションとして、臨床医はリムパーザを生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性転移性膵がんの患者さんに投与できるようになります」