がん悪液質、複合免疫療法に悪影響の可能性

2021/10/05

文:がん+編集部

 がんに伴う体重減少や食欲不振を特徴とする「がん悪液質」が複合免疫療法の治療に悪影響を与える可能性があることが明らかになりました。

がん悪液質治療が、複合免疫療法の治療効果を高める可能性を考え臨床研究中

 京都府立医科大学は9月9日、がん悪液質と複合免疫療法の治療効果に関する論文が、科学雑誌「OncoImmunology」に掲載されたことを発表しました。同大大学院医学研究科 呼吸器内科学の内野順治客員講師、髙山浩一教授らの研究グループによるものです。

 がん悪液質になると、通常の栄養療法では完全に回復することができず、進行性の機能障害に陥るだけでなく、化学療法の効果の減弱、副作用による中止や中断が増加、生存期間にも影響を及ぼすといわれています。がん悪液質は、がんと診断されたとき30~40%の患者さんに、治療経過を通して60~80%の患者さんに認められます。

 がん悪液質が、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を減弱させることは、過去の研究で明らかにされています。しかし、細胞傷害性抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法(複合免疫療法)に対する、がん悪液質が及ぼす影響は明らかになっていませんでした。

 研究グループは、国内12施設で複合免疫療法を受けた非小細胞肺が患者さん196人を、がん悪液質グループと非がん悪液質グループに分けて比較検討しました。その結果、がん悪液質グループの特徴として、腫瘍内のPD-L1が高発現している患者さんが多く認められました。また、がん悪液質グループは、非がん悪液質グループと比較して無増悪生存期間が有意に短くなっていました。全生存期間も、がん悪液質グループは非がん悪液質グループと比較して短い傾向でした。

 さらに、腫瘍内PD-L1発現の程度より、50%未満を低発現、50%以上を高発現として2つのグループに分け、がん悪液質の有無で比較しました。低発現のグループで、がん悪液質グループは非がん悪液質グループと比較して、無増悪生存期間、全生存期間ともに有意に不良でした。一方、高発現のグループでは、がん悪液質グループと非がん悪液質グループ間で、無増悪生存期間と全生存期間の有意差は認められませんでした。

 研究グループは今後の展開と社会へのアピールポイントとして、次のように述べています。

 「本研究でがん悪液質が、進行期非小細胞肺がん患者さんの複合免疫療法への治療効果に悪影響を及ぼす可能性が示されました。特に腫瘍内PD-L1発現が低い (