「HR+/HER2-乳がんの術後薬物療法の新しい選択肢とは」メディアセミナー開催

2022/02/03

文:がん+編集部

 アベマシクリブ(製品名:ベージニオ)が、「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後補助療法」として承認。メディアセミナーが開催されました。

「ベージニオ+内分泌療法」、HR+/HER2-再発高リスク乳がんの新たな術後補助療法として期待

 アベマシクリブは、2021年12月24日に、「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳癌における術後薬物療法」として新たに承認されました。アベマシクリブの追加承認を受け、日本イーライリリーは2022年1月21日、「HR+/HER2乳がんの術後薬物療法の新しい選択肢とは」と題したメディアセミナーを開催。がん研有明病院副院長 乳腺センター長の大野真司先生を座長に、同病院乳腺センター乳腺内科副部長の原文堅先生による講演が行われました。

 まず、乳がんの特徴や新たな治療法の可能性に関して、大野先生が解説されました。

 「乳がんは、45~65歳がピークのため、他のがんより生活への影響が大きい世代の患者さんが多くいます。薬物療法の進歩により、10年無再発生存率が30%~75%へ改善しましたが、リンパ節転移が4個以上あるような患者さんでは、まだ再発することが多く予後不良です。今回、アベマシクリブが承認されたことで、ホルモン療法と抗がん剤だけでは救えなかった患者さんを救う治療選択ができました」

 次に原先生は、「乳がんの術後薬物療法におけるCDK(Cyclin-Dependent Kinase)及び6阻害剤の位置づけについて」と題し、アベマシクリブを評価した臨床試験の結果をふまえ、再発高リスクの乳がん患者さんに対する術後治療と課題に関して、解説されました。

 「ホルモン受容体陽性乳がんはもっとも多いサブタイプで、術後5年を過ぎても再発リスクが持続します。特に再発高リスクの乳がん患者さんに対する治療はまだ不十分でした。今回、内分泌療法にCDK4/6阻害薬を追加した併用療法を、再発高リスクの術後治療として評価したmonarchE試験で、有効性と安全性が示されました。有害事象の増加やコストなど課題も多くあります。また、アベマシクリブによる治療後に再発した場合、最適な治療については臨床試験で検討されていないため今後の課題となります」

 アベマシクリブは、2018年9月に、「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」の効能・効果で承認されています。今回、術術後薬物療法として追加承認されたことで、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の再発高リスクの乳がん患者さんの新たな治療選択の1つとして期待されます。