膵臓がん細胞の細胞死を誘導する新たな化合物「GT-7」を発見

2022/03/03

文:がん+編集部

 膵臓がん細胞の細胞死を誘導する新たな化合物「ACAGT-007a(GT-7)」が発見されました。従来の抗がん剤とは異なる作用による治療法の確立が期待されます。

「GT-7+AKT阻害薬」併用、膵臓がんの新たな治療法として期待

 近畿大学は2022年2月17日、特定の遺伝子変異のある膵臓がん細胞の増殖を強力に抑制し、細胞死を誘導する化合物「GT-7」を発見したことを発表しました。同大学薬学部分子医療・ゲノム創薬学研究室の杉浦 麗子教授らの研究グループによるものです。

 90%以上の膵臓がんでは、KRAS遺伝子の変異により、細胞増殖を促進させるERKとAKTという2つの酵素の働きが異常に活発になり、がん細胞の増殖が抑制できなくなると考えられています。これまでの抗がん剤は、ERKがかかわるシグナル伝達を阻害することでがん細胞の増殖を抑制するものが中心でしたが、膵臓がんに対する治療効果は十分でないため、新たな治療薬の開発が望まれていました。

 研究グループは、特定の遺伝子変異のある膵臓がん細胞で、ERKとAKTが異常に活性化していることに着目。今回、ERKが異常活性化しているメラノーマのがん細胞に対し細胞死を誘導する化合物GT-7が、膵臓がんにも効果を示すかどうかを検証しました。その結果、GT-7がERKの異常活性化をさらに促進することで、膵臓がん細胞の増殖を強力に抑制し、細胞死を誘導することを明らかにしました。さらに、GT-7の細胞死誘導効果は、膵臓がん細胞のAKTの働きを阻害する薬物と併用することで、顕著に増強されることも明らかになりました。