新型コロナ禍で、各種がんの診断数・切除数が大幅に減少
2022/03/18
文:がん+編集部
新型コロナ禍で、各種がんの診断数切除数が大幅に減少していることが、院内がん登録データの解析で判明。がん診断が、適切にできていない可能性が示唆されます。
新型コロナ禍の影響で、10がん種合計で2万8,817人が、がん切除の機会を失ったと推定
横浜市立大学は2022年3月2日、新型コロナウイルス感染症パンデミックにより、がんの診断患者数や切除患者数が大幅に減少していることをデータ解析により確認したことを発表しました。同大学附属病院 化学療法センター 堀田信之センター長らの研究グループによるものです。
研究グループは、全国のがん患者さんの7割をカバーする院内がん登録データを解析。診断数の多い10種のがんを解析対象とした結果、2016~2019年度の患者数から推定される2020年度の予想値と比べ、食道がん(9.2%)、胃がん(12.0%)、結腸がん(8.3%)、直腸がん(8.6%)、非小細胞肺がん(7.7%)、乳がん(8.1%)、前立腺がん(11.5%)、子宮頸がん(8.4%)の8がん種において診断患者数の大幅な減少が確認されました。
また、進行がんより早期がんで診断数の減少割合が多い傾向が認められました。切除患者数が減少も、食道がん(12.6%)、胃がん(14.1%)、結腸がん(9.2%)、直腸がん(9.3%)、非小細胞肺がん(10.9%)、乳がん(10.9%)、前立腺がん(12.1%)、子宮頸がん(12.0%)で確認されました。
このことから、新型コロナ禍の影響により10がん種合計で2万8,817人が、がん切除の機会を失ったと推定されました。2020年度の新型コロナウイルス感染症を直接原因とする死亡数は3,492人で、その8倍のがん患者さんが切除治療の機会を失ったことを示唆しています。
研究グループは今後の展開として、次のように述べています。
「診断患者数・切除患者数の減少は新型コロナ禍による医療機関へのアクセス悪化、健康診断中止、受診控えに起因すると考えられます。低用量胸部CT(肺がん)、便潜血(大腸がん)、パップテスト(子宮頸がん)、マンモグラフィー(乳がん)等のマススクリーニングは死亡リスクを減少させることが以前から知られています。感染対策がなされていることが前提ではありますが、本研究が健康診断実施・受診の促進に繋がれば良いと考えます」