がん患者さんの人生最終段階の療養生活、実態調査の結果を発表
2022/04/14
文:がん+編集部
5万人の遺族を対象に行った、がん患者さんの人生の最終段階の療養生活の実態調査の結果が発表されました。遺族の視点では、医療者はがん患者さんの苦痛症状によく対応していたが苦痛症状の緩和は、改善の余地があることが明らかになりました。
症状の重さ、日常生活動作・認知機能の低下の有無など、患者さんの状況で最期の療養場所を選択
国立がん研究センターは2022年3月25日、がん患者さんの人生の最終段階で利用した医療や療養生活の実態を明らかにするため、2019年と2020年に約110,000人のがん患者さんの遺族を対象とした全国調査の結果を集計し、報告書をウェブサイトで公開したことを発表しました。
今回の調査は、がん患者さんの人生の最終段階における療養生活の全体像の把握、痛みなどの苦痛に対する医療者の対応に関する検討、一般病院とがん診療連携拠点病院の療養生活の実態把握が目的で行われました。
2017年と2018年の人口動態調査の死亡票情報をもとに、がん患者さんの遺族を対象に、2019年1月~3月と2020年3月~5月に郵送によるアンケート調査を実施。アンケートの内容は、遺族からみた「死亡場所で受けた医療の構造・プロセス」「死亡前1か月間の患者さんの療養生活の質」「最後の療養場所の希望や医療に関する話し合い」「家族の介護負担」などが含まれていました。有効回答数は5万4,167人でした。
主な調査の結果は、以下の通りです。
1 患者さん・遺族の背景の全体像
死亡時の年齢は80歳以上の割合が50.2%で、半数以上。
がんと診断されてから亡くなるまでの期間は1年以内と回答した割合は52.6%。
死亡前1か月間で日常生活動作に何らの介助が必要だったと回答した割合は78.4%。
患者さんが認知症を併存していたと回答した割合は13.3%。
調査に回答したがん患者遺族全体では、年齢は60~70代の割合が57.1%と最も高く、続柄は、配偶者が44.1%、子が39.7%。
2 死亡場所で患者さんが受けた医療の構造・プロセス
医療者は患者さんのつらい症状にすみやかに対応していたと回答した割合は82.4%。
患者さんの不安や心配をやわらげるように、医師、看護師、介護職員は努めていたと回答した割合は82.2%。
3 死亡前1か月間の患者さんの療養生活の質
痛みが少なく過ごせたと回答した割合は47.2%、からだの苦痛が少なく過ごせたと回答した割合は41.5%。
4 全体・死亡場所別:死亡前1週間の患者さんの苦痛症状
死亡前に強い痛みを感じていたと回答した割合は28.7%。
痛みの理由として最も多かったのは、「痛みに対して医療者は何らかの対処をしたが、不十分であったから」が28.4%。
5 最期の療養場所の希望や医療に関する話し合い
患者さんと医師の間で最期の療養場所に関する話し合いがあったと回答した割合は35.7%。
患者さんと医師の間で心肺停止時の蘇生処置の実施について話し合いがあったと回答した割合は35.1%。
6 一般病院・がん診療連携拠点病院別 患者さんの背景
死亡時の年齢は、80歳以上の割合は一般病院57.8%、がん診療連携拠点病院32.7%。
一般病院では、死亡前1か月間で日常生活動作に何らの介助が必要だったと回答した割合は77.4%、患者さんが認知症を併存していたと回答した割合は16.1%。
7 一般病院・がん診療連携拠点病院別 死亡場所で患者さんが受けた医療の構造・プロセス
医療者は患者さんのつらい症状にすみやかに対応していたと回答した割合は一般病院80.5%、がん診療連携拠点病院81.7%。
8 一般病院・がん診療連携拠点病院別:死亡前1か月間の患者さんの療養生活の質
死亡前1か月間の患者さんの療養生活の質について、痛みが少なく過ごせたと回答した割合は一般病院45.4%、がん診療連携拠点病院40.1%。
からだの苦痛が少なく過ごせたと回答した割合は一般病院40.5%、がん診療連携拠点病院33.9%。
望んだ場所で過ごせたと回答した割合は一般病院39.1%、がん診療連携拠点病院44.7%。
今回の調査から、がん患者さんの人生の最終段階では、症状の重さや、日常生活動作・認知機能の低下の有無など、患者さんの状況によって、患者さん・家族が最期の療養場所を選択していたことが示唆されました。