尿検査で、膀胱がんを診断する新たな検査法を確立
2022/07/28
文:がん+編集部
尿検査で、膀胱がんを診断する新たな検査法が確立されました。負担の少ない検査で、膀胱がんの早期診断が期待されます。
膀胱がんの診断時や経過観察時に繰り返し行われる膀胱鏡検査を減らせる可能性
近畿大学は2022年7月8日、膀胱がん患者さんの尿中に分泌される細胞外小胞(エクソソーム)の膜タンパク「EphA2」を測定することで膀胱がんを診断する、新たな検査法を確立したことを発表しました。同大学医学部泌尿器科学教室の藤田和利准教授らと大阪大学大学院医学系研究科、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所などとの共同研究によるものです。
膀胱がんの診断では、膀胱鏡による検査が行われますが、患者さんの身体的な負担や費用が高く、スクリーニング検査には適していません。また、尿中にこぼれ落ちたがん細胞を調べる尿細胞診も一般的な診断法として行われますが、正しく診断される確率は30%と低く、がんの見逃しが問題となっています。そのため、患者さんの負担が少なく、かつ高精度に診断できる膀胱がんの検査法の開発が望まれていました。
エクソソームは、あらゆる細胞が体液中に分泌する細胞外小胞の一種で、細胞同士の情報伝達に用いられます。エクソソームには分泌元の細胞由来の分子が含まれるため、がん由来のエクソソームを研究することで、がんの診断や治療効果判定に利用できると近年期待されています。
そこで研究グループは、膀胱がんが尿中に分泌するエクソソームという物質に着目し、膀胱がん患者さんと非膀胱がん患者さんの尿中エクソソームのタンパク質について、網羅的に解析することで、膀胱がん患者さんの尿中に「EphA2」というタンパク質が増加していることを発見しました。また、尿からエクソソームを回収し、尿中エクソソームの表面にあるEphA2を簡便に測定する検査法の確立にも成功しました。
本研究結果により、膀胱がんの診断時や経過観察時に繰り返し行われる膀胱鏡検査を減らし、患者さんの身体的、経済的負担を軽減することができることが期待されます。現在、同大学病院で、本検査法の臨床応用を目指し、臨床試験の準備が進められています。