進行卵巣がんの維持療法としてリムパーザと「リムパーザ+ベバシズマブ」を評価した2つの第3相試験の最新結果を発表
2022/10/18
文:がん+編集部
進行卵巣がんの初回化学療法後の維持療法を対象とした2つの第3相試験で、オラパリブ(製品名:リムパーザ)と「オラパリブ+ベバシズマブ」併用療法が、臨床的に意義のある生存期間の延長が認められました。
リムパーザと「リムパーザ+ベバシズマブ」、進行卵巣がんの維持療法として臨床的に意義のある生存期間を延長示す
アストラゼネカと米メルク社は2022年9月9日、PAOLA-1試験とSOLO-1試験の長期追跡結果を発表しました。
PAOLA-1試験は、ステージ3~4の高異型度漿液性または類内膜卵巣がん、卵管がん、腹膜がんと新たに診断された患者さんを対象にした第3相試験です。白金製剤ベースの化学療法とベバシズマブとの併用療法による初回治療により完全または部分奏効を示した患者さんに対し、初回治療後の維持療法として「オラパリブ+ベバシズマブ」併用療法と、ベバシズマブ単剤療法を比較して有効性と安全性が評価されました。主要評価項目は無増悪生存期間、主な副次的評価項目は2次進行もしくは死亡までの期間、全生存期間などでした。
全生存期間の最新解析の結果、「オラパリブ+ベバシズマブ」併用療法56.5か月、ベバシズマブ単剤療法51.6か月で、統計学的な有意差は認められませんでした。相同組換え修復欠損(HRD)陽性の患者さんを対象とした解析では、「オラパリブ+ベバシズマブ」併用療法はベバシズマブ単剤療法と比較して、死亡リスクを38%減少させ臨床的に意義のある全生存期間の延長が示されました。また、5年時点で無増悪を維持した患者さんの割合は、「オラパリブ+ベバシズマブ」併用療法46.1%、ベバシズマブ単剤療法19.2%でした。安全性と忍容性プロファイルは、過去の臨床試験で観察されたものと一貫しており、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。
SOLO-1試験は、新たに診断されたBRCA遺伝子陽性の進行卵巣がん患者さん391人を対象に、白金製剤を含む化学療法後の単剤維持療法として、オラパリブとプラセボと比較した第3相試験です。主要評価項目は無増悪生存期間、主な副次的評価項目は2次進行もしくは死亡までの期間、全生存期間などでした。
最新の解析結果では、オラパリブはプラセボと比較して死亡リスクを45%減少させ、臨床的に意義のある全生存期間の延長が示されましたが、統計学的な有意差は認められませんでした。7年時点での生存率はオラパリブ67%、プラセボ47%でした。また、最初の後治療開始または死亡に至るまでの期間の中央値は、オラパリブ64か月、プラセボ15.1か月でした。安全性と忍容性プロファイルは、過去の臨床試験で観察されたものと一貫しており、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。
GINECOグループの会長であり、PAOLA-1試験の治験責任医師であるIsabelle Ray-Coquard氏は、次のように述べています。
「HRD陽性の進行卵巣がんと診断された女性にとって、生存期間の延長を目的とした初回維持療法となる標的治療は重要です。指標となる5年追跡に基づくこれらの最新結果から、ベバシズマブ単剤療法と比較してリムパーザとベバシズマブとの併用療法によりHRD陽性の患者さんの死亡リスクが38%減少することが示されており、この併用療法の臨床的に意義のある長期生存のベネフィットをさらに強調しています。今回確認された追加データは、この併用療法によって患者さんが家族をはじめとする大切な人たちとより長い時間を過ごすことができる可能性を示しており、医師および患者さん双方にとって有望なニュースと言えます。また、卵巣がん患者さんの治療方針決定における個別化医療という治療アプローチの一環として、バイオマーカー検査が重要であることも強調しています」
Women and Infants HospitalのProgram in Women’s Oncologyのディレクターであり、SOLO-1試験の治験責任医師であるPaul DiSilvestro氏は、次のように述べています。
「今回発表されたSOLO-1試験の長期結果から、リムパーザが初回維持療法として全生存期間の臨床的に意義のある延長を7年以上維持し続けることが示されました。初回維持療法の設定が、患者さんの生存に大きな影響を与える可能性があるため、進行卵巣がんと新たに診断された患者さんの長期生存を達成することはきわめて重要です」