がん診療の状況をまとめた「院内がん登録2021年全国集計」が発表
2023/03/02
文:がん+編集部
がん診療連携拠点病院など計870施設の院内がん登録実施施設における、2021年のがん診療の状況をまとめた「院内がん登録2021年全国集計」が発表されました。
院内がん登録数は2020年減少、2021年は2018~2019年平均登録数と同程度
国立がん研究センターは2023年2月14日、院内がん登録実施施設、計870施設より、2021年1月1日~12月31日の1年間にがんと診断または治療された患者さんの院内がん登録データを収集し集計、報告書にまとめウェブサイトで公表したことを発表しました。
主な集計結果は、以下の通りです。
登録数の推移
2009年~2021年までの院内がん登録数の推移を5部位(胃、大腸、肝臓、肺、前立腺または乳房)男女別にみると、2021年症例は男女ともに肝臓がんはほぼ横ばいであるのに対し、男性では前立腺がん、女性では乳がんが増加傾向でした。
部位ごとの比較
部位ごとに、男女比、年齢分布、UICC TNM分類ステージ別登録数の割合、UICC TNM分類ステージ別治療方法の割合とその経年傾向などを集計し分析した結果、ほとんどの部位で2020年よりも登録数は増えていましたが、2019年と比較して極端な増加はみられませんでした。
2021年症例と2018~2019年2か年平均登録数との比較
2020年症例は96.1%と登録数の減少がみられましたが、2021年症例は101.1%と2か年平均登録数と同程度でした。
診断月別の登録数
診断月別の登録数を見ると、2020年4月~5月、2020年7月~8月、2021年5月と7月に登録数が減少していました。初回の緊急事態宣言は登録数の減少と関係が予測されますが、その後は必ずしも緊急事態宣言の発出中に登録数が減少してはいませんでした。また、新型コロナウイルスの新規患者数増加と新規がん登録数減少は同時期に生じているようにもみえますが、2021年8月以降にそのような減少は認められませんでした。新規がん登録数の減少は単一の原因ではなく、その時期によって様々な原因が複合し影響していたと考えらます。
検診発見例と非検診発見例月別登録数の推移
全がんの自施設初回治療開始例を対象として、発見経緯別に検診発見例と非検診発見例月別登録数の推移を2018年~2021年診断例について集計。2018~2019年2か年平均登録数と比較して、検診発見例では2020年は117,714件で86.7%(18,003件減)、2021年は133,404件で98.7%(1,713件減)でした。一方、非検診発見例では2020 年は675,040件で97.8%(15,248件減)、2021年は704,277件で102.0%(13,989件増)でした。
治療月別治療方法登録数の推移
治療月別治療方法登録数の推移を2019年の年間登録数と比較すると、2021年診断例通年では、外科的・鏡視下治療は411,225件で97.9%(8,729件減)、内視鏡的治療は122,355件で97.4%(3,209 件減)、放射線治療は96,639件で101.7%(1,621件増)、化学療法は255,492件で101.1% (2,800 件増)、内分泌療法は85,341件で102.3% (1,892件増)でした。