光免疫抗体を用いて標的を狙い打つ、がんなど多様な疾患を克服するための光免疫療法の戦略手法を確立
2023/12/15
文:がん+編集部
光免疫抗体を用いることで、生物種や薬剤耐性に関係なくさまざまな標的を選んで破壊、除去できる光免疫治療戦略の基準となる手法が確立されました。
既存の治療法では制御が困難だった「がん・多剤耐性・新興病原体」などに対する新たな治療法への展開に期待
東京慈恵会医科大学は2023年11月6日、生物種や薬剤耐性などに関係なく標的を自由に設定し選択的に除去できる、光免疫療法の戦略手法を確立したことを発表しました。同大学消化器・肝臓内科の光永眞人講師、総合医科学研究センターの岩瀬忠行教授、横浜市立大学の梁明秀連携大学院客員教授、宮川敬客員准教授、米国国立がん研究所の小林久隆主任研究員らの研究グループによるものです。
多くの抗がん剤は、がん細胞を効果的に排除する一方で、正常細胞にも障害を与えてしまいます。また、細菌、真菌(カビ)、ウイルスは、いずれも目に見えない微生物ですが、異なる構造や性質を持っているため、それぞれに対する薬剤を開発する必要があります。また、抗菌剤は、病原細菌だけでなく、いわゆる善玉菌にも作用して腸内細菌のバランスを乱してしまうことも問題となっています。
光免疫療法はウイルス・細菌・細胞といった標的に光免疫抗体を結合させ光を当てることで標的のみを破壊・除去できますが、この研究で確立された手法では、標的に結合する抗体と近赤外光に反応するプローブが結合した光免疫抗体を用いることで、より多種多様な細胞や微生物を光免疫療法の対象とすることができます。新型コロナウイルスの細胞への感染防止や、常在細菌に影響を与えずに多剤耐性黄色ブドウ球菌を除去できる作用が示されています。
既存の治療法では制御が困難だったがんや多剤耐性・新興病原体などに対する新たな治療法への展開や試料中の特定の細胞や病原体のみを除去するバイオツールとしての活用などが期待されます。